「LINEがなければ国が止まる」─タイで国民的インフラとなったLINEの戦略と未来

リーダーズ
ネイトさん(左)とエイさん(右)が並んで正面を向いている写真

2011年の登場以来、LINEはタイの生活に欠かせないライフプラットフォームへと成長しました。現在では国民の約8割が利用し、「LINEが止まれば国が止まる」とさえ言われています。この記事では、タイにおけるLINEの歩み、人を軸とした成長戦略、独自のカルチャー、そしてAI時代に向けた未来への挑戦をご紹介します。

ネイトさんの写真
Norasit Sitivechvichit(ネイト)
LINE Thailand CEO
2017年LINE Thailand入社。長年の経験で培ったプラットフォームビジネスの知見を活かし、事業を次の成長フェーズへ導く。現在はCCSO(Chief Content & Services Officer)代行も兼任し、LINE TODAYやLINE VOOMなど主要サービスの戦略を統括する。
エイさんの写真
Nicharass Archyasithiwat(エイ)
LINE Thailand CMO(Chief Marketing Officer)
2019年LINE Thailand入社。ブランド、マーケティング、コーポレートコミュニケーション戦略を統括し、変化の激しい市場での革新とブランド価値向上を推進。25年以上の経験を活かし、持続的な成長を支えるブランド構築に注力する。

タイに根づくLINEの歩みと支持の理由

――まず、タイにおけるLINEの歩みを教えてください。

ネイト:
LINEは2011年にタイでサービスを開始しました。当時はオンライン化が進み始めた時期で、急速に普及しました。今では約5,400万人、国民の8割が利用するライフプラットフォームです。学生にはLINEスタンプやLINEオープンチャット、社会人にはLINE TODAY、子どもにはLINE GAMEやWEBTOONと幅広い世代に浸透。さらに約600万のLINE公式アカウントが企業や行政に活用されています。こうしてLINEは、暮らしからビジネスまでを支える存在となっています。

――タイ国民の約8割が利用するまでに支持された理由は何でしょうか?

ネイト:
便利さだけでなく、タイの文化や生活習慣に寄り添ったサービスを展開してきているからです。LINEスタンプではLINE FRIENDSキャラクターに加え、タイ人クリエイターの作品が人気ですし、WEBTOONでもタイ人作家のマンガは国内外で支持を集めています。タイ独自の文化に根ざしたユニークなサービスには、LINE Horoの「お祈り・お供え(願掛け/お礼参り)のオンライン代行」や「寄付(Donation)」、LINE TODAYが公式パートナーを務めるタイの宝くじ抽せんなどがあります。

元々、LINE TODAYはタイでNo.1のニュースまとめサイトですが、特に毎月1日と16日にある宝くじの抽せん日には、国全体がLINE TODAYのライブ配信を見て盛り上がりを見せます。このようにタイ独自の文化を尊重し、LINEの体験に取り入れていることが支持を得ているのだと私は考えています。

左からLINE Horoの願掛けサービスと寄付サービス、タイ人クリエーターによるLINEスタンプ、LINE TODAYのサービス画面

黒いスーツを着たネイトさんが、インタビュアーに語り掛けている様子です

「人」を軸にした成長戦略と共創の取り組み

――LINE Thailandの成長戦略における柱について教えてください。

ネイト:
LINE Thailandの成長戦略は「人」を中心に据えています。その実践の柱は3つです。

  • ユーザーファースト:
    • 市場を深く理解し、LINE公式アカウントやOA Plusなど主要プラットフォームで、タイのニーズに最適化したソリューションを提供しています。
  • 外部パートナーとの共創コミュニティ:
    • デベロッパーやスタートアップ、テックコミュニティ、広告代理店と強固に連携し、LINEのテクノロジーを広く、シームレスに展開しています。
  • 人材育成:
    • LINEらしい価値観のもとで、情熱ある人材を採用、育成し、少数精鋭で成果を出す体制を磨いています。

――外部パートナーとの共創のために取り組んでいるプログラムを教えてください。

ネイト:
オープンプラットフォーム戦略を重視し、APIを公開して毎年更新しています。さらに、近年はLINEミニアプリを拡充し、エバンジェリストを中心にコミュニティを成長させています。また、「LINE Developer Community」ではLINE DevConやHackathon、Meetupといったプログラムを開催し、多くの外部パートナーと新しい価値を創造しています。

ネイトさんは、真剣な表情をしています

人と、タイの文化を活かした職場と組織づくり

――人を重視する考え方は、どのように職場づくりに反映されていますか?

ネイト:
私たちの最大の資産は人材です。だからこそ、働きやすい環境に力を入れています。オフィスはバンコク中心部にあり、全国からアクセスしやすい立地です。さらにワークライフバランスや、ハイブリッド勤務をいち早く導入し、ウェルビーイングを重視した制度や、親しみやすいオフィスの雰囲気を優先する整備をしてきました。これらの取り組みが「働きたい会社ランキング」でも高く評価されています。さらに、このカルチャーは新しいサービス創出の基盤となっています。社員とユーザーの声から生まれたフードデリバリーサービス「LINE MAN」はその代表例であり、このスピード感と「スタートアップ魂」が原動力となっています。

LINEのオフィスラウンジ。明るく開放的でキャラクター装飾がある空間

――オフィスの特徴的なカルチャーについて教えてください。

ネイト:
日本から受け継いだ「ユーザーファースト」の考え方やスタートアップ精神に加え、私たちはタイの独自文化も大切にしています。タイでは同僚を「ピー(兄・姉)」と呼ぶ習慣があり、LINE Thailandでも年齢に関係なく才能ある人材を「ピー」として尊重しています。役職に関係なく、声が全員に届くフラットなカルチャーこそ、成果を生む組織の土台になっています。

――CEOとして、社員との距離感で心がけていることはありますか?

ネイト:
現場に足を運び、社員と同じ席に座って彼らの話を聞くことを心がけています。これによって、小さな課題が見えてきて、時には議論や改善につながることもあります。普段あまり私と話す機会がない社員も、私が隣に座ると安心して悩みや課題を打ち明けてくれることもあります。ちょっとした空き時間には彼らの席に行って「調子はどう?」「今何に取り組んでいるの?」と声をかけます。そういったやり取りが、私を元気にしてくれます。社員にとって楽しいかどうかはわかりませんが(笑)。

ネイトさんが笑顔で話している様子。LINEキャラクターの人形とカップがある。

未来への挑戦:ヒューマニゼーションとAI

――LINEがタイ社会で果たす役割について教えてください。

ネイト:
最大の強みは、人々の生活に深く根づいていることです。仕事や家族間のコミュニケーションに欠かせないもので、「LINEが止まれば国が止まる」とさえ言われるほどです。世代間のつながりを支え、シニアが古い友人と再会できる場ともなっています。この深い関わりこそが、その成長の基盤となっています。

――LINE Thailandの「ヒューマニゼーション戦略」とは何ですか?

エイ:
「人を理解するデジタルプラットフォーム」を目指し、「人間味」を戦略の中心に据えています。人々の声に耳を傾けるだけでなく、その背景にある課題やニーズを深く理解し、CSR活動などを通じて社会へと還元しています。また、人々の生活をより豊かにするため、便利で使いやすい技術の開発にも力を注いでいます。

エイさんが笑顔で話している様子。LINEキャラクターの人形が後ろにある。

――若い世代のLINE利用には、どのような特徴がありますか?

エイ:
利用のスタイルは世代によって異なりますが、特に若年層のユーザーは、複数のサービスを使い分けています。先述のLINE Horoは信仰熱心なタイの若者に支持されており、大学ではLINEオープンチャットが新入生の交流の場として親しまれています。さらにK-POPやJ-POPファン層にとっても、非常に人気のある空間となっています。

――今後の展望について聞かせてください。

ネイト:
私たちは、タイから新しい価値を生み出す挑戦を続けながら、世界的にイノベーションを追求したいと考えています。やはり直近のテーマはAIです。タイの人々はテクノロジーを恐れず楽しみながら活用しており、画像生成やキャラクター制作などがSNSで広がっています。この文化は私たちの取り組みと非常に相性が良いです。今後は、AIをプロダクトや業務に応用し、さらに大きな価値を生み出していきたいと思っています。また、優れた人材をベースに、AIを味方にして、より強い組織を作っていきます。

エイ:
LINEは、今やタイでナンバーワンのコミュニケーションアプリで、人々の日常に欠かせない存在となっています。まるで空気のように自然に使われるアプリであるからこそ、朝目覚めた瞬間からユーザーにとって心地よく、役立つ存在であり続けたいと考えています。人々がLINEを通じてデジタルライフを楽しむことで、日常生活をより豊かで幸せなものにする、そういった関係を築き続けていきたいです。

明るい室内でエイさんが穏やかな笑顔で話している様子

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取材日:2025年8月28日
文:LINEヤフー社内広報編集部 写真:山崎 拓也
※本記事の内容は取材日時点のものです

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