タイのデジタルライフを豊かにするLINE Thailandの新戦略 「LINE CONFERENCE THAILAND 2025」レポート

リーダーズ
LINE Conference Thailand 2025のイベントでの6人の登壇者の集合写真。背景には「LCT25」と書かれています。

これまでLINEヤフーストーリーでは、台湾で多くのユーザーに利用されているLINEの利用状況や人気サービスを紹介してきました。 実は、LINEは東南アジアのタイでも同様に多くのユーザーに利用されていることを知っていますか? 2024年12月時点で、タイ人口約6,605万人のうち、5,400万人がLINEを利用しており、日常生活に欠かせない存在となっています。

3月4日にタイのバンコクで開催された「LINE CONFERENCE THAILAND 2025」では、LINEのタイ現地法人であるLINE Company (Thailand) Limited (以下、LINE Thailand)が新たなサービスや事業戦略を発表しました。本記事では、LINE Thailandのリーダーたちが語ったサービスの詳細と今後のビジョン、また最高執行責任者からの今回のカンファレンスの意義と今後の展望をお届けします。

LINE Thailandについて

LINE Thailandは、2014年5月に設立されたLINEヤフーの子会社で、タイ市場に特化した事業を展開しています。コミュニケーション、コンテンツ、ライフスタイル、ビジネスソリューション、コマース、Fintechの6つの主要な領域を軸に、多様なサービスを提供しています。たとえば、日本でも人気の「LINEスタンプ」や「オープンチャット」、ニュース配信サービスの「LINE TODAY」、そしてタイ独自の着信音サービス「LINE MELODY」などがあります。

さらに、フードデリバリーや食料品配達、タクシー配車などを提供する「LINE MAN」(※1)、インターネット銀行サービス「LINE BK」(※2)などのサービスを提供し、ユーザーの生活を幅広くサポートしています。法人向けには、企業と顧客の効果的なコミュニケーションをサポートする「LINE公式アカウント」や「LINE広告」を提供しています。

※1 LINE Man Corporation PTE.LTDがサービス提供
※2 Kasikorn LINE Company Limitedがサービス提供

LINE Thailand の事業概要の画像

LINE CONFERENCE THAILAND 2025 レポート

2025年中のリリースを目指す3つの新サービス

ここからは、LINE CONFERENCE THAILAND 2025で発表された内容をお届けします。 今回のカンファレンスのメイントピックは、LINE Thailandが2025年中のローンチを目指している3つの新サービスです。

1) LINE PREMIUM

まず、「LINE PREMIUM」について、LINE Thailand最高執行責任者(COO=Chief Operating Officer)のNorasit Sitivechvichitが発表しました。

LINE Premiumのプレゼンテーションの様子を示しており、月額169バーツで提供されるサービスを紹介しています。

LINE Thailand 最高執行責任者(COO)Norasit Sitivechvichit

Norasit:
LINE PREMIUMは、LINEアプリで提供されるサブスクリプションサービスです。月額169バーツ(※3)で、会員は以下の機能を利用できます。

  • アプリアイコンのカスタマイズ:好みに応じてLINEのアプリアイコンを変更可能
  • フォントの変更:LINEアプリで会員限定フォントを使用可能
  • 複数プロフィールの作成:プライベートと仕事用など、用途に応じたプロフィール写真や名前を設定可能
  • メッセージバックアップ機能:最大100GBのストレージにメッセージ、写真、ファイル、動画を無期限で保存可能

さらに、LINE PREMIUMの会員は、タイの主要ECサービス「LINE SHOPPING」や、フードデリバリーや食料品配達、タクシー配車を提供するオンデマンドサービス「LINE MAN」の特典も利用できます。LINE PREMIUMを通じて、ユーザーにさらなる利便性と楽しさを提供したいと考えています。

※3 約750 円(2025年3月17日基準)

2) LINE GIFT

次に紹介されたのは、「LINE GIFT」です。LINE GIFT責任者のJirat Watanakarinから発表がありました。

LINE Giftのプレゼンテーションで、50以上の主要ブランドがLINEでの電子ギフトに参加することが紹介されています。背景には参加ブランドのロゴが並んでいます。

LINE GIFT責任者 Jirat Watanakarin

Jirat:
LINE GIFTは、LINEを通じて友だちに手軽にギフトを贈ることができるデジタルギフトサービスです。このサービスでは、LINEのトーク内で直接、友だちに人気ブランドのデジタルクーポンや商品を簡単にプレゼントできます。相手の住所がわからなくても、受け取る側が自分で住所を入力するため、安心してギフトを贈ることができます。また、以下の機能を提供予定です。

  • 商品のカスタマイズ:受け取る相手が好みに応じて商品の色やサイズを選択
  • ほしいものリストの設定:自分が欲しいものをリスト化し、友だちと共有
  • スケジュール機能:誕生日や記念日など特別な日に贈り物を忘れないよう、事前にクーポンの送信日時の設定が可能

現在、50 以上のブランドと提携しており、今後も提携ブランドを拡大していく予定です。LINE GIFTを通じて、より手軽に心のこもったギフトを贈り合えるようになることを目指しています。

3)LINE HEALTH

最後に紹介するのは「LINE HEALTH」です。最高執行責任者のNorasit Sitivechvichitから発表がありました。

LINE Premiumのプレゼンテーションの様子を示しており、月額169バーツで提供されるサービスを紹介しています。

LINE Thailand 最高執行責任者(COO)Norasit Sitivechvichit

Norasit:
LINE HEALTHは、タイ全土のユーザーに向けたオンライン診療プラットフォームで、包括的なデジタルヘルスケアサービスの提供を目指しています。このサービスは、オンラインで患者と医療サービス事業者をつなぐことで、病院へのアクセスが難しい方々の悩みを解決します。たとえば、「病院から遠くに住んでいる」「病院に行く時間がない」といった状況をサポートし、迅速に医療サービスを受けられる環境を提供します。

現在、このサービスは試験的に提供されており、ユーザーはLINE HEALTHのLINE公式アカウントを友だち追加するだけで利用できます。LINE公式アカウントのトークから簡単に診察の予約ができ、診察のリマインドも受け取れます。診察までの待ち時間は10分以下で、バンコク市内では当日中に薬の配送も可能です。

LINE HEALTHは、医療と専門ヘルスケアサービスを提供する「Health At Work」とタイの大手医療保険各社をシームレスに統合し、ワンストップでの医療ソリューションを実現します。また、認定精神科医や心理学者とユーザーをつなぐオンラインメンタルヘルス相談サービス「OOCA」も利用可能です。さらに、ユーザーに最新の健康情報も提供します。

今後は、健康関連商品を扱う「Health Shop」の導入を計画しており、タイの国家保健安全保障局(公的な保健サービスの管理と提供を担当する政府機関)など他のサービス事業者と連携することで、ネットワークをさらに拡大していく予定です。LINE HEALTHを通じて、タイの医療アクセスをより便利でスムーズなものにしていきたいと思っています。

Health At Work創始者のKanapon PhumratprapinとOOCAを提供するTelemedicaのCEO Kanapassorn Suriyasangpetchの写真

Health At Work創始者Kanapon Phumratprapin(左)とOOCAを提供するTelemedica CEO Kanapassorn Suriyasangpetch(右)

「IPX」と「LINE WEBTOON」の事業戦略

続いて、LINEヤフーグループの知的財産(IP)ビジネスを担うIPX(旧LINE FRIENDS)とLINE WEBTOONのタイ市場における戦略について発表がありました。

IPX

IPXは、「LINE FRIENDS」や「BT21」といった人気キャラクターを開発し、これらを活用したさまざまな商品や体験を提供しています。LINE FRIENDS(IPX)SEA責任者のJinmanus Dulyasakchaiが、IPXのこれまでの成功と今後の取り組みについて語りました。

Jinmanus Dulyasakchaiが登壇する様子

LINE FRIENDS(IPX)SEA責任者 Jinmanus Dulyasakchai

Jinmamus:
これまで、IPXはユーザーに人気のキャラクター「LINE FRIENDS」を通じて、ミレニアル世代やZ世代のファンを獲得してきました。1,300以上のパートナーと協力し、世界中のブランドとともに製品開発やマーケティング活動を展開しており、世界中に9,000万人以上のファンがいます。

BT21は、K-POPアーティストのBTSとコラボレーションから生まれ、非常に成功を収めたキャラクターブランドです。他にも、「zeroni(ZEROBASEONE)」、「bunini(NewJeans)」、「(G)I-DLE minini((G)I-DLE)」など、他のK-POPアーティストやエンターテインメント会社と協力しキャラクターの開発を続けています。

(G)I-DLE mininiとzeroniの画像

今年、IPXはタイ市場での影響力をさらに強化することを目指していきます。そのため、「Love The Earth」という新しいキャンペーンを導入し、人々により持続可能な生活を促すとともに、K-POPアーティストとのコラボレーションや新しいIPキャラクターの創出を通じて、より多くのファンを獲得していく予定です。

LINE WEBTOON

LINE WEBTOONは、多様な言語と文化に対応したコンテンツを提供する、世界中で利用されているウェブトゥーンプラットフォームです。 Southeast Asia WEBTOON責任者のKim Doyoungが、タイ市場における戦略を発表しました。

Kim Doyoungが登壇する様子

Southeast Asia WEBTOON責任者 Kim Doyoung

Doyoung:
LINE WEBTOONは、タイのクリエイターを積極的に支援し、ビジネスの「フライホイール効果」を推進していきます。フライホイールとは、成功事例を生み出しその勢いでさらに多くの成功を引き寄せる戦略です。
LINE WEBTOON THAILANDは、10年以上にわたりタイのオリジナルコンテンツを開発してきましたが、今後もユーザー数と収益の両面での成長を目指します。

今年は特に、52の新しいタイのオリジナル作品を増やし、タイのクリエイターの作品を多様な形でIPビジネスに拡大していきます。これにより、強力なウェブトゥーンエコシステムを構築し、持続可能なビジネスの循環を生み出していきます。 また、人気コンテンツをさらに展開したいクリエイターに対しても、パートナーと共にポップアップイベントや書籍化の機会を提供していく予定です。

開発者向けの新サービスとサポートプログラム

カンファレンスの最後には、開発者向けの新しい取り組みが発表されました。まず、LINE Thailand CPO(Chief Product Officer)のWeera Kasetsin が、新しい技術サービスについて発表しました。

 Weera Kasetsinが登壇する様子

LINE Thailand CPO Weera Kasetsin

Weera:
LINE Thailand は、タイの開発者や企業がより簡単にサービスを作成できるよう、新たな技術サービスと計画を発表します。これにより、LINEを利用する5,400万人のユーザーに、より便利で豊かなデジタル体験を提供していきたいと思っています。

1)LINE MINI APP

「LINE MINI APP」は、LINE上で独自のアプリを作成できるプラットフォームです。このプラットフォームを利用することで、ネイティブアプリ開発に伴う膨大な時間と開発リソースを大幅に軽減できます。 ユーザーはLINEアプリがあれば、他のアプリをダウンロードしたりログインしたりする必要がないため、企業はスムーズに自社のサービスを提供できます。また、「LINE MINIAPP Playground」を使えば、開発前にアイデアを試し、試行錯誤をしながら実現可能性を探ることができます。

2)LINE OAPLUS プラットフォーム

LINE Thailandは、「タイの人々に開かれたプラットフォームを提供する」というビジョンを掲げ、さらにサービスを拡大していきます。現在、外部の開発者がLINE上で新しいサービスやソリューションを構築できる「LINE OAPLUSプラットフォーム」のリリース準備を進めています。これにより、開発にかかるコストや時間の削減、企業や外部開発者がより効率的に動けるようになることを目的としています。また、このプラットフォームのリリース後は、ここから生まれたサービスを集めるマーケットプレイスも発展させていく予定です。

3)LINE BOT MARKETPLACE

ユーザーの多様なニーズに応えるLINE BOTサービス「LINE BOT MARKETPLACE」の開発を計画しています。スケジュール管理や仕事情報の要約、タスク管理の簡素化など、さまざまな機能を持つボットなどが含まれる予定です。 開発者は、このマーケットプレイスでボットプロジェクトを開発・発表し、グループチャットで仕事やライフスタイルを改善できるツールを求めるユーザーにリーチしやすくなります。

続いて、事業開発マネージャーのKhanet Kjsaereborerugから、開発者支援プログラム「LINE DEVELPER PARTNER」について発表がありました。

Weera Kasetsinが登壇する様子

LINE Thailand事業開発マネージャーKhanet Kjsaereborerug

Khanet:
「LINE DEVELOPER PARTNER」プログラムは、タイの開発者のスキル向上を目的とした取り組みで、5月から正式に開始予定です。このプログラムに参加する企業や団体は、さまざまなメリットを受けられます。

まず、LINE Thailandから最新の技術や開発手法などの専門的知識を学び、開発者のスキルをさらに高めることができます。また、効果的なマーケティング戦略のサポートを受けることで、開発した製品やサービスを市場で成功させるための知識とスキルを身につけることができます。さらに、ビジネスパートナーとの共同プロジェクトに参加する機会もあり、ネットワークを広げながら実践的な経験を積むことができます。

このプログラムを通じて、タイの開発者たちはLINEのプラットフォームを最大限に活用し、より革新的で競争力のあるソリューションを生み出すためのサポートを受けられます。これにより、タイのテクノロジー産業の発展に貢献することを目指しています。

※3月4日のカンファレンスの内容を編集しています。

LINE Thailand COOインタビュー

カンファレンスを終えたLINE Thailand最高執行役員のNorasitに、今回のカンファレンスの意義や今後の展望について話を聞きました。

Norasitの写真
Norasit Sitivechvichit

LINE Thailand 最高執行責任者(COO)

2017年LINE Thailand入社。COOとして、ビジネスオペレーションの管理や事業のイノベーションを指導・支援し、LINEアプリ上のサービス開発と強化を行う。

――今回のカンファレンスに対するパートナーやメディアからの反応はいかがでしたか?

Norasitの写真

今回のカンファレンスには、1,000人を超えるパートナーやメディア関係者が参加してくださり、LINE Thailandのビジネスの認知と影響力を高めるとても良い機会になったと感じています。今年は新しいコーポレートミッション『「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。』を掲げており、その実現に向けた具体的なメッセージを伝えることができました。

発表したサービスやソリューションには多くのパートナーが興味を示してくださり、今後のパートナーシップに向けた具体的な話し合いが早速始まっています。特に、新たなサービス「LINE PREMIUM」「LINE GIFT」「LINE HEALTH」は、LINEユーザーの日常のコミュニケーションや生活に直接影響を与えるサービスのため、多くのメディアから大きな期待を寄せられています。

これらのサービスは、ユーザーの生活をより豊かで便利にすることを目指しており、私たちの新しいミッションに合致しています。パートナーやユーザーの皆さんの期待に応えるため、しっかりと準備を進め革新を続けていきたいと思っています。

――今回発表した新サービスや戦略を通して、タイのユーザーや社会にどのような価値を提供していきたいですか?

Norasitの写真

LINEはタイでメッセージアプリとしてスタートしましたが、今では日常のデジタル体験を向上させる「ライフプラットフォーム」へと進化しています。タイの人々がデジタルを中心としたライフスタイルを積極的に取り入れる中、私たちLINE Thailandの目標は、これまでのサービスを超える新たな価値を提供することです。

今回発表した新サービスや戦略は、ユーザーの利便性やコミュニケーションを向上させ、日常生活で直面するさまざまな課題を解決する力を持っています。たとえば、LINE PREMIUMはユーザー体験を個々に合わせて充実させ、LINE GIFTは人と人とのつながりをより強固にします。また、LINE HEALTHは、健康管理をより身近で手軽なものにできます。

これらのサービスを通じて、私たちはユーザーの生活をさらに豊かで充実したものにし、タイでのLINEプラットフォームエコシステムをより強力で持続可能なものにしていきたいと考えています。

LINE Conference Thailand 2025のイベントでの6人の登壇者の集合写真。背景には「LCT25」と書かれています。

今後、LINEヤフーストーリーでは、タイでのLINEの利用状況や人気のLINEサービスについて紹介していく予定です。どうぞお楽しみに!

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