2026年8月28日、LINEヤフーはAIエージェントの新たなプロトタイプ8種を報道関係者向けに公開。会場では、カレンダーやトーク、スクリーンショットなど、日ごろ使うスマートフォンの機能とつながる体験が紹介されました。
「Agent i」が目指す「毎日のそばに、だれでも使えるAI」の現在地と、これからをご紹介します。
LINEヤフーは、2026年4月に「毎日のそばに、だれでも使えるAIを。」というコンセプトのもと、AIエージェントの新ブランド「Agent i」をスタートしました。目指すのは、ただ質問に答えるだけではなく、ユーザーの意図に応じて必要な情報を集め、複雑なタスクを管理・実行する存在です。
体験会に登壇した、LINEヤフー上級執行役員 AI Agent統括SBUリードの葭沢光伸は、「Agent i」が目指す姿をこう説明しました。
葭沢は、「答えるAIではなくて動くAIにしていきたい。AIに相談するだけではなくて、AIがそれを代わりに受け取って実行していく。そのようなエージェントを、パートナーに育てていきたいと思っています」と語りました。
葭沢 光伸(LINEヤフー 上級執行役員 AI Agent統括SBUリード)
「Agent i」に相談すると、その内容に応じて複数の領域エージェントがつながり、最適な情報や行動を提案します。
その特徴のひとつが、LINEヤフーが長年蓄積してきたデータを活用できることです。たとえば、すでに提供している「クルマ選び」では、希望に合った車種を提案するだけでなく、車種やグレードごとの価格・スペック、オーナーの傾向などの情報も活用して、ユーザーの車選びをサポートします。
データを活用することで、AIと何度もやりとりを重ねなくても、ユーザーの希望に沿った提案につなげられると葭沢は話しました。
こうした独自データの活用に加え、「Agent i」には、プロンプトを意識せず直感的に使えること、複雑なタスクを管理・代行できることという特徴があります。この3つが、「Agent i」の大きな柱です。
4月時点で7領域だった領域エージェントは、約4カ月で累計27領域へ拡大。1日あたりの延べ利用者数は1,200万DAUに達しました。今後は2026年10月までに累計40エージェントに拡大し、同月には「Agent i」の単独アプリもリリースする予定です。
秋以降は、「タスク機能」の本格的な拡充を目指しています。これは、ユーザーとの会話から「何をしてほしいのか」を理解し、ユーザーに代わってタスクを実行していく機能です。
葭沢は「領域エージェントの質や量を大きく向上させていくことが、ユーザー体験向上のポイント」と、今後の方向性を説明しました。
領域エージェントが増えることで、「Agent i」がサポートできる日常の場面も広がっていきます。
今回の体験会では、その未来を具体的にイメージできる8種類のプロトタイプが公開されました。どれも、生活の中で発生する細かな行動に着目したものです。
カレンダー
ポスターや予約画面のスクリーンショットをAIが解析し、カレンダーに登録されていない予定を見つけ、登録を提案します。
トーク/アルバム動画
LINEのトークやアルバムから、誰とどんな時間を過ごしてきたのかという文脈を読み取り、思い出を振り返るショート動画を作成します。
WEB操作ガイド
やりたいことを一言入力すると、画面のどこをタップすればよいかを順番に示すエージェント。AIが操作を代行するのではなく、ユーザー自身が操作を完了できるようサポートします。
スクショ管理
保存したまま埋もれがちな画像・スクリーンショットを整理し、必要なときに関連情報を届けます。
目覚まし
カレンダーの予定に合わせて起床時刻を調整するだけでなく、ニュースや株価の確認、忘れ物や服薬のリマインドまで、一人ひとりの朝のルーティンをサポートします。
ショート動画作成
写真や動画を選んで一言入力するだけで、台本、テロップ、BGM、ナレーションを含む動画を生成します。
情報自動追跡
登録したテーマに沿って、AIが過去の経緯から現在までを整理し、最新情報を知らせます。
ペットライフ
ペットの健康記録をもとに、健康に関する相談に答えるほか、おでかけや買い物も提案します。写真を使ったLINEスタンプや思い出アルバムの作成も予定されています。
8つに共通するのは、AIがすべてを代わりに行うのではなく、ユーザーの手元にある情報や日々の行動をもとに、次の一歩を踏み出しやすく支援してくれる点です。忙しい朝、たまったスクリーンショット、誰かとの思い出。日常のさまざまな場面で、AIが次の行動をサポートしてくれるようになるかもしれません。
8種のプロトタイプは、2026年度中から順次提供される予定です。
慎ジュンホ(LINEヤフー CPO)
領域エージェントの拡大の裏側では、プロダクトの「つくり方」も大きく変わっています。
LINEヤフー CPO(Chief Product Officer/最高プロダクト責任者)の慎ジュンホは、AI駆動型の開発体制について「期待以上にAI駆動型の効果を感じています」と話しました。
今回発表された8つのプロトタイプも、全社公募による「AI Agent Prototyping タスクフォース」から生まれました。自ら手を挙げたメンバーが参加し、AI駆動型の開発体制で短いサイクルを回しながら形にしてきました。
その結果、プロトタイプの開発期間は従来の3カ月以上から平均約1.5カ月へ短縮され、開発スピードは2倍以上になっています。
プロダクトの「つくり方」は具体的にどう変わったのでしょうか。
従来は、企画、デザイン、開発が職種ごとに分かれ、それぞれの工程をリレーするように進めていました。一方、AI駆動型では、企画・デザイン・開発のメンバーが一つの少数精鋭チームとなり、AIとともにプロトタイプをつくります。それを社内で試し、フィードバックを受けて修正するサイクルを1日に何度も繰り返します。
慎は「試行錯誤のスピードが何十倍、何百倍になっています」と、その変化を語りました。
こうした体制を全社に広げるため、9月1日から「Agent i 全社横断タスクフォース」が本格稼働します。タスクフォース長には慎が就任。天気やトレンドを扱う「情報収集WG」、イベントやおトク情報を扱う「おでかけWG」など、約20のワーキンググループを設置し、各領域の知見を生かしながら開発を進めます。目指すのは現在の10倍の規模でAIエージェントを量産できる体制です。
慎は「10倍は当たり前で、それ以上のスピードでそれ以上の数のエージェントがつくれる」と、今後の展望を語りました。
こうした組織や開発体制の変化は、ユーザーの声をすばやく取り込み、より良いプロダクトやユーザー体験につなげるための挑戦でもあります。
今回の体験会で紹介されたプロトタイプは、いずれもまだ開発の途中にあります。それでも、AIが人々の日常をどうサポートするのか、具体的に想像させるものでした。慎は、会場で得られた率直な意見もすぐに反映できる体制だと話します。
「答えるAI」から「動くAI」へ。調べる、比べる、覚えておく、といった日々の行動の負担を少しずつ減らし、その先の体験へつなげていく。
LINEヤフーは、ユーザーの毎日に根ざした接点を生かしながら、「毎日のそばに、だれでも使えるAI」を目指します。今回の8つのプロトタイプは、その未来に向けた新たな一歩です。
取材日:2026年8月28日
編集:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです。プロトタイプの名称・仕様・提供時期は変更となる場合があります。
