なぜカフェだと集中できるの? コクヨと考える、集中できる環境のつくり方

コーポレート
吉羽さんと金子さんの写真。木製の段状のベンチに腰掛けており、背後には観葉植物と淡い色の壁面がある。写真左下には「LINEヤフーストーリー」という文字が表示されている。

なぜかカフェでは集中できる。そんな経験はありませんか?
周囲はざわざわしているのに、なぜか仕事や勉強がはかどる。反対に、静かな場所にいても集中できないこともある...。

実は、「集中できる環境」に正解はありません。人によって心地よい環境は異なり、その日の気分や仕事内容によっても変わります。
大切なのは、一つの場所で頑張り続けることではありません。自分に合った環境を見つけ、集中とリラックスを上手に切り替えること。それが、パフォーマンスを高めるコツなのかもしれません。
今回は、赤坂オフィスの設計に携わったコクヨのお二人に、集中するためのコツ、パフォーマンスを高めるオフィスの使い方などをうかがいました。

吉羽さんの写真
吉羽 拓也(よしば たくや)さん
コクヨ株式会社 ワークプレイス事業本部
オフィスや共創空間の設計・デザインを担当。働く人の行動やコミュニケーションを起点とした空間設計に携わる。
金子さんの写真
金子 眞央(かねこ まお)さん
コクヨ株式会社 ワークプレイス事業本部
ワークプレイス領域において、オフィス構築・プロジェクト推進に携わる。

カフェで集中できるのはなぜ? 「集中できる環境」は人によって違う

――ざわざわしているカフェの方が集中できることもあるのが以前から不思議でした。なぜ、カフェで集中できるのでしょうか...?

吉羽さんの写真

たとえば、近くで1人や2人が話していると、その会話の意味が気になってしまいますよね。
でも、カフェのようにたくさんの人が話している場所だと、それは「会話」ではなく「環境音」として認識されます。「にぎわい」の一部になるため、意外と気にならなくなるんです。

吉羽さんのバストショット。黒の半袖シャツを着用し、やや長めの黒髪を分けたヘアスタイルで、口元にひげをたくわえている。両手を組むように前に出しながら話している様子
金子さんの写真

実際、海外の研究では、コーヒーショップ程度の環境音がある方が、創造性を必要とする課題では高いパフォーマンスを発揮するという結果(※)もあります。

また、カフェで周りにいるのは知らない人なので、突然話しかけられることがありませんよね。
オフィスだと、どうしても知っている言葉や会話が耳に入ってきますし、突然話しかけられることもあると思います。でも、カフェではそれが起きにくい。そういった安心感も集中しやすさにつながっているのかもしれません。

※2012年にJournal of Consumer Researchに掲載された研究による

金子さんのバストショット。横向きに座り、両手を前に出してノートパソコンを操作しながら話している様子

――なるほど...静かな場所だからといって集中できるわけではないんですね。

吉羽さんの写真

そうですね。むしろ、「集中できる環境」に正解はないと思っています。

少し雑音がある場所や人通りの多い場所の方が集中できる人もいれば、図書館のような静かな環境でないと集中できない人もいます。

だから私たちは、「集中=これ」と決めつけないようにしています。オフィスづくりでも、一つのタイプの集中空間だけを用意してしまうと、うまく機能しないことが多いからです。そのため、さまざまなタイプの集中空間をグラデーションのように配置することを意識しています。

――では、自分に合う環境を試して見つけることが大切、ということでしょうか?

吉羽さんの写真

そう思います。たとえば、LINEヤフーの赤坂オフィス20階には、大きなテーブルで作業できるエリアもあれば、植物に囲まれながら集中できる席もあります。

実は「緑視率」といって、視界の10~15%程度に緑が入ると、ストレス軽減やパフォーマンス向上につながるという研究結果があります。そのため、植物を取り入れた空間を設計することもあります。

オフィスのラウンジスペースの写真である。丸い白いテーブルと木製の椅子が規則的に並び、奥には木製の段状カウンター席が設けられている。カウンターや空間の中央には多くの観葉植物が配置され、緑がアクセントになっている
オフィス内のワークスペースの写真である。手前には大きな木製テーブルと黒いキャスター付きチェアが配置され、奥には長いプランターに多種多様な観葉植物が植えられている

20階の植物に囲まれた作業スペース

吉羽さんの写真

一方で、「STUDY ROOM」のように視界や音を遮断して集中できるスペースもあります。

オフィス内の通路とワークスペースの写真である。左側には背の高いパーティションで区切られたデスクが並び、奥には窓際にデスクとチェアが配置されている

20階のSTUDY ROOM

吉羽さんの写真

大切なのは、「どこが正解か」ではなく、自分に合った集中環境を見つけること。
赤坂オフィスにはさまざまな選択肢があるので、まずは試してみてほしいですね。

吉羽さんのバストショットである。黒の半袖シャツを着用し、やや長めの黒髪を分けたヘアスタイルで、口元にひげをたくわえている。ノートパソコンの前に座り、両手を上げて空間を示すような仕草をしながら話している様子

――集中できる場所を見つけたら、同じ場所で作業し続けた方がいいのでしょうか。それとも場所を変えながら働いた方がいいのでしょうか?

金子さんの写真

それは、仕事内容によると思います。たとえば「今日中に資料を完成させたい」といった作業なら、一人で集中できる場所にこもるのも良いと思います。

ただ、集中にもいろいろな形があります
一人で黙々と進める集中もあれば、チームで集まって議論しながら一気にアイデアを出し切る集中もあります。近くにいる同僚に相談しながら進めた方が効率的な仕事もありますよね。

だから、「集中=一人でブースにこもること」とは限らないと思っています。
ブースで集中した結果、個人の作業は進んだけど、チーム全体としては違う方向に進んでいた、ということもあるかもしれません。大切なのは、その時の仕事に合った環境を選ぶことだと思います。

たとえば、チームで働くために出社しながら、「ここから2時間だけは集中したい」という時にブースを使う。そんな使い方ができると理想的なのでは、と思っています。

金子さんのバストショット。淡いグレーの長袖ブラウスを着用し、あごのラインでそろえた黒髪のボブヘアで、横向きに座って話している様子

集中とリラックスは車の両輪 赤坂オフィスの「集中のグラデーション」とは

――ここまでお話をうかがっていると、「集中すること」だけを考えても駄目な気がしてきました...。

吉羽さんの写真

そうですね。実は、集中だけではうまくいかないことが多いんです。

集中とリラックスは、車の両輪のようなものです。どちらか一方だけでは成り立ちません。 集中したら、その分どこかでリラックスする。そうした切り替えがあって初めて、良いパフォーマンスを維持できると思います。

――集中するためにはリラックスすることも大事なんですね。

吉羽さんの写真

そうなんです。赤坂オフィスでは、集中とリラックスの空間をあえて近くに配置しています。
たとえば20階には集中して作業できるSTUDY ROOMがありますが、そのすぐ近くにはPOOL LOUNGEやカフェのように過ごせるフリースペースがあります。

あえて離すのではなく、すぐに行き来できる距離にすることで、「集中する」→「リラックスする」→「また集中する」というサイクルを自然につくれるようにしています。

――集中とリラックスを行き来する、という考え方は、赤坂オフィス全体の設計にも反映されているのでしょうか?

金子さんの写真

そうですね。特に20階は、その考え方を象徴するフロアになっていると思います。
イベントスペースやウェルビーイング機能、集中スペースなどを集約しながら、「こう使わなければいけない」という用途を決めすぎない、余白のあるフロアにしたいと考えました。

たとえば、イベントに参加したあとに少し休憩したり、カフェスペースで気分転換したあとにSTUDY ROOMで集中したり。仕事の内容やその日の気分に合わせて自由に使える場所を目指しています。

特に意識したのは、にぎやかな場所から静かな場所へ、少しずつ環境が変わっていくことです。イベントエリアからカフェ、POOL LOUNGE、そして集中スペースへと進むにつれて、自然と気持ちが切り替わるようなゾーニングを考えました。

「今日はここで集中しよう」と決めるというよりも、「今の気分だったらここかな」と選んでもらうのがいいと思います。

――赤坂オフィスでは、なぜこの「集中のグラデーション」という考え方を採用したのでしょうか。

吉羽さんの写真

LINEヤフーさんには、エンジニア、営業、企画、デザイナーなど、本当にさまざまな職種の方がいます。それぞれ仕事内容も違えば、集中しやすい環境も違います。
だからこそ、「この環境が正解です」と決めず、一人ひとりが自分に合った場所を選べることを大切にしました。

誰か一人に合わせるのではなく、多様な働き方を受け止められるオフィスにする。その考え方が、この「集中のグラデーション」につながっています。

吉羽さんと金子さんの写真

今日からできる「集中と切り替え」のコツ

――では、お二人が集中するために工夫していることを教えてください。

金子さんの写真

私は、集中したい仕事をできるだけ午前中に終えるようにしています。たとえば、企画を考えるとか、デザインをまとめるとか、「今日はこれを進めたい」という仕事ですね。
午後に回すこともできるんですが、ご飯を食べると眠くなりますし、細かいメールや打ち合わせが入ってくると、思った以上に時間が取れなくなってしまうんですよね...。

まず午前中に着手してみて、どのくらい時間がかかりそうか把握しておくだけでも安心できますし、気持ち的にも楽になります。
優先度の高い仕事は午前中、細かい作業は午後、というふうに分けることが多いですね。

吉羽さんの写真

私は、まずまとまった時間を確保することを意識しています。朝か夜かはあまり関係なくて、「この3時間は集中する」と決めて予定をブロックするんです。
その間は、できるだけ外からの情報を遮断します。カレンダーに予定を入れて連絡を受けないようにしたり、メールやスマートフォンを見ないようにしたり。そういう環境を意識的につくっています。

もう一つ意識しているのが、思考作業と単純作業を分けることです。
たとえば、企画を考えたりアイデアを整理したりする仕事と、メール対応や事務作業のような仕事を、同じ時間の中でやらないようにしています。両方を一緒に進めると頭の切り替えが増えてしまい、どうしても効率が落ちてしまうんです。

なので、「まず1時間は思考作業」「次の1時間は単純作業」というように分けて取り組むようにしています。なかなか理想通りにはいきませんが、うまくできた時は驚くほど早く進みます。

吉羽さんのバストショット。両手を前に出して広げるような仕草をしながら笑顔で話している様子

「集中できた! と感じるのは、アウトプットの密度が高い時。たとえば、いつもより早く終わったとか、たくさん作業できたということもあるかもしれませんが、それ以上に、『ちゃんと考え切れた』という感覚が大きいです。たとえるなら、生焼けではなく、しっかり火が通った状態。うまく集中できた時は、アウトプットの完成度そのものが違う気がします」

――ちなみに、「集中」というと、長時間机に向かい続けるイメージがありますが...。

吉羽さんの写真

実は、ずっと同じ場所にいることが正解とは限りません。集中するためには、場所を変えることも大事だと思っています。

オフィスで仕事をする日なら、フロアを移動したり、違うエリアに行ったり。物理的に環境を変えることで、気持ちも切り替わるんです。
ずっと同じ場所で集中とリラックスの両方を行うのは意外と難しいので、「移動すること」は大事だと思います。

金子さんの写真

私も、オフィスで仕事する日はよくコンビニに行きます(笑)。
集中していると、だんだん何に悩んでいるのか分からなくなったり、疲れてマイナス思考になったりすることがあるんですよね。そんな時は「ちょっと飲み物を買いに行こう」と席を立ちます。

少し歩いて戻ってくるだけで、「あれ、意外と大した問題じゃなかったかも」と思えることもあります。
45~50分集中して、10分休憩するという、ポモドーロ・テクニックのサイクルを意識しているので、むしろこまめに休憩を取っています。

金子さんのバストショット。正面やや横向きに座り、穏やかな表情で話している様子
吉羽さんの写真

それこそ、「集中」と「リラックス」の関係は、サウナと水風呂のようなものかもしれません。
集中したら、一度リラックスする。そしてまた集中する。そういうサイクルがあった方が、結果的にパフォーマンスは上がると思います。

――少しリラックスして「整う」ことで、また集中できるということですね。

吉羽さんの写真

はい(笑)。実は、雑談やランチもしやすいCONNECT STREETも同じ考え方で設計しています。
棚の手前側はコミュニケーションエリア、奥側は執務エリア。同じフロアの中でも、役割がまったく違うんです。

仕事をしていた人が、CONNECT STREETへ出て誰かと話したり、違う作業をしたりする。
その小さな切り替えが、結果的にパフォーマンスにつながるのではないかと思っています。

オフィスフロアの写真である。中央に通路があり、その両側に長いデスクが並び、各席にはモニターと黒いオフィスチェアが整然と配置されている

執務エリア

オフィス内の共有スペースの写真である。左側には木製の棚と赤い円形テーブル、白い椅子が並び、各テーブルにはモニターが設置されている。右側には長いソファと木製テーブルが配置され、壁には「CONNECT STREET」と大きく黒字で書かれている

CONNECT STREET(コミュニケーションエリア)

――ということは、CONNECT STREETはあえて少し「集中しにくく」している部分もありますか?

吉羽さんの写真

そうですね。CONNECT STREETは棚の間に入り込める小さなスペースや、2~3人で使うことを想定したブースがあります。でも実は、あそこで長時間仕事をしてほしいわけではないんです。

私たちが意識したのは、あの場所でコミュニケーションが自然に生まれること。
「ちょっと話そうよ」「少し相談してもいい?」
そんな会話が始まるきっかけになるような空間を目指しました。

オフィス内の共有ラウンジスペースの写真である。左側にはベージュ色のソファと丸いローテーブル、小さな椅子や円形のスツールが配置されている。右側の壁一面には木製の棚と個別ブースが並び、黄色のベンチシートとテーブルが設けられている

――ちなみに...月曜日の朝のように「どうも集中できない...!」という日は、どんな場所からスタートするのがおすすめですか?

吉羽さんの写真

僕だったら、まずカフェスペースに行きますね。いきなり集中しようとするよりも、少し人の気配がある場所の方が入りやすいと思います。

たとえば、朝はカフェスペースでメールを処理したり、軽い作業をしたりする。そこから少しずつ調子を上げていって、お昼を食べた後に集中エリアへ移動する。そんな流れもいいのではと思います。

金子さんの写真

特に月曜の朝は、まだエンジンがかかりきっていないことも多いので、まずはコーヒーを飲みながら軽く仕事を始めるくらいでいいと思います。

無理に集中しようとするのではなく、少しずつスイッチを入れていくイメージですね。
慣れてきたら自席や集中スペースに移る。そういう使い方もおすすめです。

金子さんと吉羽さんの写真

――オフィスでは場所を変えやすいですが、自宅では難しいこともありそうです。自宅で集中したい時はどうすればいいのでしょうか?

金子さんの写真

私は、在宅の日は意識的に家事を挟んだりします。仕事が終わってからまとめてやるのではなく、洗濯物を取り込む、買い物に行くなどをあえて途中で入れて、一度リセットする感覚です。オフィスでコンビニへ行くのと同じですね。

また、音でいうと私は無音が苦手なので、一定のリズムが続く音を流しています。
好きな音楽だとそちらに意識が向いてしまうので、テクノ系の音楽や環境音などを流すことが多いですね。

吉羽さんの写真

雨音やたき火の音を流すのもおすすめです。カフェの雑踏音を流している人もいますよね。

ただ、自宅の良さは集中よりもリフレッシュにあるかもしれません。すぐそばに好きなモノがある方が多いと思うので、好きな本を読んだり、庭仕事をしたり、料理の下ごしらえをしたりちょっとした気分転換がすぐできる。それは心にも良い影響があると思います。

「集中と切り替え」のコツまとめ

時間を設計する
・集中したい仕事は午前中に取り組む
・予定をブロックするなどしてまとまった時間を確保する
・集中する時間はメールやスマートフォンを見ない
・思考作業と単純作業を分ける
・月曜の朝はまず軽い作業から始める

意識的にリセットする
・45~50分集中したら、10分休憩する
・行き詰まったら席を立ち、場所を変えてみる

環境を整える
・視界に植物を置く
・雨音や環境音など、自分に合う音を見つける

在宅勤務の日におすすめ ・あえて家事などを挟んで気持ちをリセットする
・好きな本や趣味など、短時間で気分転換できるものを用意する

――最後に、赤坂オフィスの「推しスポット」を教えてください。

金子さんの写真

私の推しは、やっぱりPOOL LOUNGEです。多くのオフィスでは、休憩スペースにも打ち合わせや作業など、いろいろな役割が求められます。
でも、POOL LOUNGEはあえて電源もなく、視界もある程度遮られていて、機能を「休むこと」に絞って、集中とリラックスを切り替えるための場所として設計しました。

オフィス内のリラックススペースの写真である。中央には円形の大きなプランターが設置され、多種多様な観葉植物が植えられている。その周囲を囲むように円形のベンチシートが配置され、外側には床にクッションがいくつも置かれている

POOL LOUNGE

吉羽さんの写真

私が好きなのは、先ほどもお話したCONNECT STREETの「100メートルの棚」ですね。
私は勝手に「魔法の棚」と呼んでいるんですが(笑)、たとえるならサンゴ礁みたいなものです。クマノミもいれば、カニもエビもいる。いろいろな生き物を受け入れるサンゴ礁のように、いろいろな働き方やコミュニケーションを受け入れてくれる場所です。

もう一つは、13階のDiningにある、窓際の大きなテーブルです。
カーテンで仕切ることもできるので、新入社員の歓迎会やチームのランチミーティングなど、いろいろな形で使いこなしていただけたらうれしいですね。

会議室の写真である。中央に白い長方形のテーブルが置かれ、その両側に木製の椅子が整然と並んでいる。奥には大きな窓があり、白いカーテン越しに自然光が差し込んでいる

13階のDining

吉羽さんと金子さんの写真。木製の段状ベンチに座り、話している。背後には観葉植物が配置され、明るくあたたかみのある共有スペースでの対話の様子

金子さん「赤坂オフィスでは、仕事の内容やその日の気分に合わせて場所を選べるようになっています。実際、ここまで多様な場所が用意されているオフィスは珍しいと思います」
吉羽さん「ランチミーティングをしたり、チームで集まったり。リアルな場だからこそ生まれるコミュニケーションを大切にしたい、という思いも込めています。正直、設計に関わった立場からすると、少しうらやましいくらいです(笑)。社員の皆さんにこのオフィスを使い倒してほしいですね」

関連リンク

取材日:2026年6月1日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです

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