社員が設計に入ると、オフィスはどう変わる? LINEヤフー赤坂オフィスのつくり方

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オフィス空間の中央に設けられた大きな植栽スペースの前で、佐藤(男性)が座っている。背景には多種多様な観葉植物やサボテンが配置され、間接照明で縁取られた壁面と、天井にむき出しのダクトや照明器具が並ぶモダンなオフィス内装が広がっている。

みなさんは、「出社って、正直ちょっと面倒だな...」と感じたことはありませんか?
自宅やサテライトオフィスなどでのリモートワークが普及し、今「オフィスの価値」が改めて問われています。

2026年4月、LINEヤフーは赤坂に新オフィスをオープンしました。
この設計を担ったのは、外部パートナーだけではありません。社員も自ら図面を引き、素材を選び、議論を重ねながら空間をつくり上げました。

「どうしたら自然に人が出会い、気持ちよく働けるか」

その問いに向き合ったプロセスは、LINEヤフーのものづくりの考え方そのものでもあります。空間デザインを担当した佐藤晋平に、オフィスづくりの裏側を聞きました。

佐藤の写真
佐藤 晋平(さとう しんぺい)
隈研吾建築都市設計事務所にて国内外の建築の設計業務に従事し、2016年旧LINEに入社。LINEの新宿ミライナオフィス、四谷オフィスなど歴代オフィスの設計やイベント会場のデザインを手がけている。

「出社したほうが楽」なオフィスとは

――「LINEヤフーらしさ」を、赤坂オフィスでどう実現していったのでしょうか?

LINEヤフーになってから初めてしっかり拠点をつくるプロジェクトだったので、「LINEヤフーらしさ」はかなり意識しました。

オフィスは、ただ働く場所というだけではなく、会社の文化や風土を体現している場所でもあるので、まずはLINEとヤフーの今までのオフィスのいいところを取り入れたい、という思いがありました。

ヤフーのオフィスは、フリーアドレスもそうですが、コミュニケーションの取り方も含めて選択肢が多く、自由度が高い印象がありました。
一方で、LINEのオフィスは「ここは仕事をする場所」「ここは雑談する場所」といったように機能ごとに分かれていて、直感的で分かりやすいレイアウトに特徴がありました。

それぞれの良さを活かしながら、もう少し細かく選べる余地をつくりたい。そう考えて設計を進めました。

佐藤のバストショットです。机に向かって体をやや横向きにしながら、両手を前に広げて身振りを交えて話している様子

――オフィスを使う「ユーザー」は社員ですが、その視点で大切にした考え方は何ですか?

プロジェクトの初期に、事業部のメンバーに集まってもらってワークショップをしたんですが、そのときに出てきた言葉がすごく印象的でした。
「出社したほうが楽に働けるオフィスがいいよね」っていう話になったんです。

出社って、どうしても少しネガティブなイメージがあると思うんですけど...。それでも「オフィスに来たほうが楽だよね」と思える環境がつくれたらいいなと。
生活の一部がここで完結して、コミュニケーションもしやすくて、家以上に快適に過ごせる。
そんなオフィスを目指したいと考えていました。

――「出社したほうが楽」という考え方を、もう少し詳しく教えてください。

出社したときに、「オフィスに行ってよかったな」と思える体験があるかどうか。
たとえば、思わず写真を撮りたくなるとか、人に話したくなるとか...。
そうした「出社したけど結構よかったよ」という小さなポジティブな体験が積み重なっていくことで、「なんだかんだで出社したほうが楽だよね」という感情に変わっていってくれる気がするんです。

コミュニケーションがしやすい、おしゃれ、ご飯がおいしい――。
「住めば都」を最短距離で先回りしていくためには、そういった小さな発見や体験の積み重ねが、出社に対する感情を変えていけると考えていました。

佐藤が体をやや前に傾けながら両手を前方に突き出し、何かを握るような仕草をして説明している様子

社員を「ユーザー」として考えたオフィス設計

――今回、限られた工期の中で意思決定を重ねていく必要があったと思います。どのような基準で判断していたのでしょうか。

一番は、とにかく「ユーザーのことを考える」ということですね。

たとえば、外部の設計会社から出てきたレイアウト案の中で、ラウンジ席や窓際のカウンター席のような執務デスクではない席も「座席」としてカウントするという提案がありました。
7,000席を確保する必要がある中で、そういう選択肢もありますよね、という提案でした。

いくつか提案を受ける中で、社内でも「確かに座席数が多いからしょうがないのかな。それもありかもなぁ。」というような空気も少し出ていたと思います。
でも自分だったら嫌なんですよね。「席が埋まってるから今日はあっちで作業して」って言われて執務チェアじゃない席に座るのは...。だから、そこは譲れないと思いました。

佐藤が机に向かってややうつむき、右手であごに手を当てながら物思いにふけるような表情をしている

「合併後初のオフィスづくりで、初めて組むチームと連携する中、意思決定の方向性を固めることに、最初苦労しました。その中でデザイン部門の代表として参加していた自分の役割は、デザイン責任者として『言うべきことをちゃんと言うこと』だと思っていて。正直、僕はそんなに立場が強いわけではないんですが(笑)、プロの設計者としてあえて少し強めに前に出ることも意識していました」

――確かに、それでは落ち着いて働ける環境とは言えないですよね。

ですよね。そして僕は疑り深い性格でして、自分で試してみないと納得できないんです。なので自分で、ああでもない、こうでもない、と言いながら図面を描いていきました。

僕もユーザーの一人でもあるので、実際に働いているシーンを想像しながら図面を描くのですが、そうすると、
「この通路幅を50mmずつ縮めていったら(7,000席が)ギリギリ入るな」
「実際に測ってみてもまぁ広くはないけど狭くもないからいけるか」
「将来的な増席や会議室増設を考えたら、ここが打ち合わせスペースの方がいいよな」
「導線やサインのわかりやすさを考えたら、直感的でシンプルなレイアウトの方がいいか」
「でも会議室まで遠いのは嫌だから、近くでも打ち合わせができる場所がほしいな」
といった感じで、オフィスに対する解像度がかなり上がっていったんです。

――かなり細かく図面を描いたんですね。

はい。時には3Dでイメージを作ってこちらから提案することもありました。この時、決定事項として提案・フィードバックするのではなくて、あくまで議論の材料として提案していくことがポイントです。
「これ、どう思いますか?」と逆にこちらから提案してみて、社内メンバーからも、外部の設計会社の方からも、正直にコメントしてもらうことで、提案と共にプロジェクトチームとしても、どんどんブラッシュアップされていったと思います。

そうやって動いていると、「こいつが一番考えてるしな」 「あいつが言うならまぁ信じてみるか」という空気に自然となっていった気がしています。
ミリ単位で調整しながらギリギリを攻めた結果、執務エリアの席は無事に確保できました!

――そこまでして「ギリギリ」を攻めたのはなぜですか?

LINEヤフーの社員は、この数年で自宅の作業環境をかなり整えている人も多いと思うんです。だからこそ、それを上回る環境をオフィスでも用意したい。
しっかり作業できるデスクと、それ以外の選択肢も含めて、どんな職種の人にも対応できる「最大公約数」の設計が必要だと考えました。

広々としたオフィスフロアの全景写真。左右に長いデスクが整然と並び、それぞれの席にモニターとキーボード、黒いオフィスチェアが配置されている 天井に配管やダクトがむき出しになった広い室内空間の写真。中央には可動式のホワイトボードが複数台並び、その周囲に白いテーブルと椅子が整然と配置されている

――職種によって働き方も違うと思いますが、特にどの層を重視したのでしょうか。開発やデザイナーのように集中したい人と、営業や企画のように会話しながら進める人とで、ニーズも違いますよね。

そこはもう「全員」ですね。

デザイナー、営業といった職種の違いでつい考えがちですが、実際には同じ職種でもいろんなタイプの人がいます。僕みたいにおしゃべりなデザイナーもいれば、寡黙に作業したいデザイナーもいる。

そうなると、一人ひとりに合わせて最適化するのは難しい。だから、誰にでもフラットなプラットフォームをつくることを目指しました。

たとえば集中しやすい仕切りのある上下昇降のデスクやコミュニケーションしやすいフラットなデスク、窓際の打ち合わせスペース、CONNECT STREETのような雑談やランチもしやすいラウンジ的な場所など、いくつかの選択肢を用意して、その中から自分に合った環境を選んでもらう。
そうやって選択肢を増やすことで、結果的にいろんな人にフィットするオフィスにしたいと考えました。

佐藤が机に向かって体をやや横に向け、落ち着いた表情で相手の話を聞いている様子

「仲のいい友達の部屋」のように使ってほしい

――集中とコミュニケーションを両立できる工夫を教えてください。

どれだけオフィスにいる時間を豊かにできるかが、結果的にパフォーマンスに影響してくると思います。

そのために、「FIELD 20」というイベントや懇親会ができるような余白空間を設けたり、「STUDY ROOM」という一人で集中できる静かなエリアを設けたり、「POOL LOUNGE」のように休める場所も用意しました。
たとえばランチ後に15分、20分しっかり休むことで、その後の集中力は大きく変わる。これまで家でできていたことを、オフィスでも自然にできるようにしたいと考えました。

天井に配管やダクトがむき出しになった広い多目的スペースの写真。中央から手前にかけて白い四角テーブルと椅子が整然と並び、奥の壁面中央には大きな黒いディスプレイが設置されている。左奥の壁には「FIELD 20」という文字が表示されている オフィス内の共有スペースを正面から捉えた写真。手前には木目調の大きなテーブルが左右に配置され、それぞれに黒いオフィスチェアが並んでいる。中央奥には長方形の大きな植栽スペースが設けられ、さまざまな観葉植物が豊かに茂っている

――このオフィスを、社員にどのように使ってほしいですか?

「仲のいい友達の部屋」くらいの距離感で使ってもらえたらうれしいなと思っています。勝手に漫画を読んだり、ベッドに寝転んだりはするけど、お母さんに怒られるから壁を汚したりはしない、みたいな。
そのくらいの感覚でシェルフも自由に使っていいですし、まずは気軽に試してほしいですね。

――そういえば、シェルフにフィギュアを置いているフロアもありました(笑)

いいと思います。実際、フロアごとに使い方も違っていて、「ここすごく使いこなしてるな!」と思うこともあります。

まずはやってみて、その中でルールが自然とできていくものだと思うので。社員のみんなに、どんどん使いながら関わってもらうことが大事かなと。

また今回、オフィス内のサインもすべて自分たちで設計しています。
約7,000人が使うことを考えると、ほぼ公共施設に近いくらいの規模なんですよね。ただ、オフィスは公共施設ではないので、丁寧にしすぎても違和感になってしまいます。そのバランスを考えながら、「必要な人にだけ自然と目に入る」サインにしています。

友達の家にトイレのサインがないのと一緒で、何度か使えば慣れる、という感覚も大事にしています。シンプルなレイアウトにしていることもあり、結果としてどのフロアに行っても直感的に動ける空間になっていると思います。

――フロアごとに4色に分かれていますが、コンセプトはありますか?

これはよく聞かれる質問で、実は僕の中ではそれぞれしっかりコンセプトがあるのですが、あえて誰にも言っていません(笑)
設計者がもっともらしい答えを出してしまうよりも、ユーザーが感じたことが正解になったらいいなと思ったからです。大体、「雰囲気の違いを作りたかったんです」とふわっと答えています。
たとえば、ホテルのラウンジっぽいとか、バーのような空間とか。そんな風に人それぞれが自由に感じ取れる違いを出したいなと。

オフィス内の共有スペースを斜めから捉えた写真。左側にはベージュ色のソファと丸いローテーブル、小さな椅子やスツールが配置されている オフィス内の共有スペースを奥行き方向に捉えた写真。右側の白い壁には「CONNECT STREET」という黒い文字が大きく表示され、その下にベージュ色のソファと木製テーブル、モニターが設置されている。左側には木目調の棚が連なり、赤い円形テーブルと白い椅子、モニター付きの席が並んでいる

そのために、シェルフや床、家具の色や種類を変えて、4種類の空間をつくっています。サインや照明の色も含めて、すべてトータルで設計しています。

使う人が「ここは北欧っぽいね」とか「和の雰囲気があるね」などと感じてくれる方がいいと思って。あえて一つの意味に固定しないことで、いろんな捉え方ができる空間にしています。
最初は、LINEやヤフーを連想させる色を使う案もあったんですが、「空間としてどう感じるか」を優先しました。

オフィス内の共有スペースを斜め方向から捉えた写真。手前には丸いテーブルと青い椅子が配置され、左側には木目調の仕切りとカウンター席が並んでいる。奥には大きなハイテーブルとスツールが設置され、その背後の棚には白い収納ボックスが整然と収められている 木目調の大きな棚壁を正面から捉えたオフィス空間の写真。壁一面に四角いオープン棚が規則的に配置され、中央には通路として開口部が設けられている。その奥には白いデスクと黒いオフィスチェアが整然と並ぶ執務スペースが見える

赤坂オフィスの推しスポットは?

――では最後に、佐藤さんの「推しスポット」を教えてください。

14階の「RECEPTION」と、20階の「POOL LOUNGE」、それから13階の「Dining」ですね。

――それぞれ、どんなところがお気に入りですか?

まず、14階のRECEPTIONは素材にかなりこだわっています。
木目調や石目調といったフェイクではなく、木は木、植栽も本物を使っていて、時間がたつほど価値が出るような空間を目指しました。照明の当て方も工夫していて、陰影がきれいに見えるようにしています。

奇をてらうのではなく、ユーザーにとって本質的にいいものをつくる。そんなLINEヤフーらしい考え方が表れている場所だと思っています。

天井にダクトや配管がむき出しになった広いエントランス空間の写真。中央には大きな植栽スペースが設けられ、さまざまな観葉植物やサボテンが立体的に配置されている 広いオフィスエントランス空間を斜め方向から捉えた写真。左側には木製フレームのソファやテーブルが整然と並ぶラウンジスペースがあり、観葉植物やフロアランプが配置されている 夜景を望むオフィスラウンジ空間の写真。手前には大きな木製の長テーブルが配置され、その上に左右対称に白いシェードのテーブルランプが置かれている

POOL LOUNGEは個人的にもかなりこだわった場所ですね。
実際に案内すると、みんな「いいじゃん」ってそこで立ち止まります。こういう空間は必要だなと感じています。

佐藤がベージュ色のクッションフロアの上にあぐらをかいて座り、両手を軽く組んでリラックスした表情を浮かべている。背後には円形の大きな植栽スペースがあり、中央に背の高い観葉植物やサボテンが茂っている
円形の大きな植栽スペースを中央に配置したオフィス内のリラックスエリアの写真。中央の円形プランターには背の高い観葉植物やサボテンを含む多様なグリーンが密に植えられている

「ここは静かに休んでほしい場所なので、あえて照明を上から当てずに、下から当てて植物の影が天井に出るようにしています。少し暗めにして、落ち着ける空間にしています。」

13階のDiningはランチだけでなくディナー利用もできます。ホテルのような空間で、食事も含めて心地よく過ごせる場所になっています。

オフィス内のダイニングエリアを斜め方向から捉えた写真。左側にはレンガ調のカウンターがあり、その上に白く発光する「Dining」という文字サインが設置されている ダイニングエリアを斜め方向から捉えた写真。右側には長い木製のハイテーブルが伸び、その中央に赤いフレーム状の照明と装飾用の小石が敷かれた帯状スペースが設けられている
ダイニングエリアの一角に立つ佐藤の全身ショット。黒いTシャツと黒いショートパンツを着用し、白いスニーカーを履いている。赤いフレームの柱にもたれかかり、腕を組んでリラックスした姿勢で立っている。

木や土壁やファブリックなど、柔らかさの感じられる自然素材を多用した落ち着いた空間。「13階は飲食するフロアなので植栽ではなく砂利を用いて枯山水のような自然が感じられる空間にしています」

――このオフィスについて、他にも伝えておきたいことがあれば教えてください。

2つあって、ひとつは細かい話なんですが、オフィスの中に「62度」の角度(※)をいろいろなところに取り入れています。
これはLINEヤフーのロゴにもある角度で、コンセプトの「Stay Closer, Go Further(両者の結束によって革新を生み出しながらユーザーに寄り添い続ける)」ともつながっているので、見つけてもらえたらうれしいです。

※LINEヤフーのロゴに使われている「62度」の角度。社内では「イノベーションエッジ」と呼ばれています。
「ユーザーに寄り添いながら革新を生む」LINEヤフーの新ロゴに込められた思い

佐藤が白い壁の前に設置されたグレーの案内サインボードの横に立ち、両手でボードを指差しながら笑顔を向けている

ここの角度も62度

天井を見上げた構図の写真。むき出しのダクトや配管が走るインダストリアルな天井に、細長い板状の照明器具が複数本、斜めに配置されている。

RECEPTIONエリアの照明の角度も62度

オフィスエントランスの一角を低い位置から捉えた写真。手前には黒い丸いスツールが一直線に並び、奥へと続いている

ソファーの角度も...62度

もうひとつは、20階のFIELD 20ですね。
イベントができたり、作業スペースとして使えたり、さらに身体をリフレッシュできるWELLNESS CORNERや、大きなモニターを2つ設けたTHEATER ROOMもあって、執務フロア以外の働き方を支える場所になっています。ここは赤坂オフィスの大きな特徴の一つだと思っています。

明るいオフィス内の通路を奥行き方向に捉えた写真。中央には金属プレート状の床材が一直線に伸び、左右にはコンクリート調の床が広がっている L字型に配置されたグレーのソファが壁沿いに並び、白やブラウンのクッションが置かれている。中央には木製のローテーブルや丸いスツール、小さなサイドテーブルが配置され、その下には明るい色のラグが敷かれている。左側には大型のテレビモニターと黒い収納キャビネットが設置されている

来社されるゲストにはもちろんですが、出社する社員のみんなにも「オフィスで過ごす時間も楽しい」と思ってほしいですし、居心地のいい場所や過ごし方をそれぞれ見つけてもらえたらいいなと思っています。

佐藤が机に向かって体をやや横に向け、両腕をテーブルに置きながら明るい笑顔を浮かべている

関連リンク

取材日:2026年4月27日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです

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