「手の中の銀行」が台湾で生まれた理由 台湾No.1インターネット専業銀行 LINE Bank Taiwanの挑戦と成長

リーダーズ
モリスとファンが、LINE Bankのロゴが掲げられた白い縦縞の背景の前で、大きなクマのキャラクターの像を挟んで立っている写真。中央には、白いシャツに緑のネクタイ、青いパンツを着用したクマのキャラクターが黒い台座の上に立っている。背景上部には「LINE Bank」のロゴが表示され、左下には「LINEヤフーストーリー」という文字が重ねて表示されている。

台湾では、LINEはコミュニケーション手段にとどまらず、情報収集やビジネスなど、日常生活で幅広く利用されています。こうした生活インフラの上に誕生したのが、スマートフォンだけで口座開設からローン、決済、投資、外国為替、保険まで、各種金融サービスを完結できるインターネット専業銀行「LINE Bank Taiwan」です。
今回は、「LINE Bank Taiwan」会長ファンと CEOのモリスに、設立の背景、成長の要因、組織文化、そして今後の展望などを聞きました。

ファン・インジュンの写真
In Joon Hwang/黄仁埈(ファン・インジュン)
LINE Bank Taiwan会長/LINEヤフー上級執行役員CGIO/LINE Financial CEO/Z Venture Capital Managing Partner兼CEO
2008年NHN(現NAVER)入社。2021年Aホールディングス取締役。2021年LINE Bank Taiwan会長。2023年LINE Financial代表取締役、LINEヤフー上級執行役員CGIO。2024年からZ Venture CapitalでCEO、2025年からManaging Partner兼CEOを務めている。LINE FinancialのCEOとして、LINEのグローバル・フィンテック事業全体を統括。
モリス・ファンの写真
Morris Huang(モリス・ファン)
LINE Bank Taiwan CEO
「LINE Bank Taiwan」開業立ち上げの準備を主導、2021年のサービスローンチから直近3カ月連続で月次黒字を達成するまでの成長をけん引。台湾の銀行業界で、国内外トップクラスの金融機関において30年以上にわたる豊富な経験を持ち、デジタルバンキング、リテールバンキング、ウェルスマネジメントの領域に精通したエキスパート。

「LINE」×「使いやすさ」×「スピード」で台湾No.1のインターネット専業銀行誕生

――まず、「LINE Bank Taiwan」について教えてください。

ファン:
「LINE Bank Taiwan」は、2021年4月に台湾でサービスを開始したインターネット専業銀行です。預金や送金、個人ローンといった基本的な銀行機能に加え、LINEと連携した口座や外貨両替、国内外送金、デビットカード・クレジットカード、投資信託・ETF・米国株取引、さらには旅行保険・自動車保険などまで、幅広い金融サービスを提供しています。とりわけ、設立から5年未満の2025年12月に黒字化となり、2026年2月時点で3カ月連続の月次黒字を達成しています。

最大の特徴は、これらほぼすべてのサービスをLINEアプリの中で完結できることです。普段使っているLINEアプリから、口座開設、残高照会、送金、米ドルの売買、保険加入などの手続きを直接行うことができ、別アプリのインストールも窓口への来店も必要ありません。

加えて、サービスは24時間365日いつでも利用可能です。たとえば個人ローンなら、申請から審査、融資実行までが完全に自動化されており、ユーザーは「Easy Loan」プロセスを通じて申し込むことで、深夜でも通常45分ほどで資金を受け取ることができます。送金であれば、3~5秒程度で完了するスピード感も大きな魅力です。

「LINE Bank Taiwan Services」と大きく書かれた青い背景のバナー。左上には「Banking in Your Hand.」とその下に中国語で「新一代的全民銀行」と記載があり、白い台の上に立体的な「LINE Bank」のロゴが配置されている。右側には複数のサービス紹介画像が格子状に並んでいる。「LINE Bank app」と書かれた枠には、スマートフォンを操作する手元の写真がある。

――「LINE Bank Taiwan」はどのような背景からスタートしたのですか?

ファン:
LINEが掲げた「Life on LINE」は、コミュニケーションだけでなく、ショッピング、ニュース、エンタメ、決済まで、日常のあらゆる行動をLINE上でサポートし、生活のインフラになるという世界観です。その中でもユーザーの生活に最も深く関わる重要な領域が「金融」でした。

台湾はLINEにとって特に重要な市場で、人口2,300万人のうち約2,200万人がLINEを利用しています。すでに生活インフラとなっているLINEの中で銀行サービスを提供できれば、より安全で便利な金融体験を届けられるのではないかーーそう考えたことが、大きな出発点となりました。

ちょうどその頃、台湾政府が2019年にインターネット銀行のライセンス発行を開始し、中国や米国ではフィンテックが急成長していました。こうした追い風を受け、私たちは台湾でのインターネット銀行ライセンスの取得に挑戦しました。
その結果、ライセンスを取得し、2021年4月に「LINE Bank Taiwan」として開業することができました。

私たちが目指しているのは、LINEの多様なエコシステムを活かし、さまざまな金融サービスをワンストップで提供し、「LINE Bank Taiwan」がユーザーにとってのメイン口座となることです。
「LINEがつながる場所には常に金融サービスがある」そんな世界を実現し、「Banking in your hand(手の中の銀行)」を体現する存在を目指しています。

LINE Bankのロゴと「Banking in Your Hand.」の文字が大きく表示された緑色の背景パネルの前で、複数の登壇者が横一列に並び、親指を立てるポーズをしている写真。中央にはスーツやジャケット姿の男女が並び、前方には青く発光する装飾が施されたステージ台が設置されている。ステージ中央にはLINE Bankのロゴと中国語で「正式開行」と表示されている。

2021年4月の開業時のイベントの様子。銀行のユニフォームを着用したブラウンとコニーもお祝いに駆け付けました

――ユーザーについて教えてください。

モリス:
「LINE Bank Taiwan」は、2021年4月の開業から5年未満となる2026年2月時点で、利用者数が220万人を突破しました。
「LINEの中に銀行がある」というユニークなビジネスモデルは、金融を自然と日常に溶け込ませ、多くの台湾ユーザーに支持され、台湾の20~40代のうち、4人に1人が利用する銀行となり、現在では台湾でNo.1のインターネット専業銀行に成長しています。

また、「Global Top 100 Digital Banks 」への4年連続選出「Fintech Innovators Asia」選出など、国際的にも高く評価されています。

棚の上に複数の賞状やトロフィーが並べられている写真。

「LINE Bank Taiwan」はこれまで数々のアワードを受賞し、オフィスには盾やトロフィーなどが飾られています

――台湾において、「LINE Bank Taiwan」がNo.1インターネット専業銀行に成長できた要因は何だと思いますか?

ファン:
大きな要因は、LINEという生活インフラの上で、ワンクリックで銀行サービスにアクセスでき、口座開設やローン申込、預金などまで一気通貫で完結できる「シームレスで簡単な体験」を提供できたことです。

加えて、日常的にLINEを利用するユーザーに対し、LINEサービスを通じて直接かつ効率的にリーチできたことも大きな強みでした。そうした環境を活かし、利便性と革新性を兼ね備えた金融サービスをスピーディーに提供し続けてきたことが、No.1インターネット専業銀行へと成長できた理由だと考えています。

モリス:
私たちは、強固な顧客基盤がなければこのビジネスの成功は難しいと理解していました。そこで、サービス開始当初からLINEユーザーへの積極的なアプローチを行い、顧客獲得に注力しました。 その結果、サービス開始からわずか1年で110万人のユーザーを獲得することができました。

――「LINE Bank Taiwan」のさらなる成長に向けて、特に注力している取り組みは何ですか?

ファン:
特に注力している領域は大きく2つあります。 1つ目は、売上の大部分を占めるローン関連サービスの拡大です。ローンやデポジットサービスをより便利に、より迅速に提供できるようサービスの磨きこみを進めています。

2つ目は、預金やローン以外のさまざまな領域、たとえば保険、証券、投資信託、株式市場、ETF投資、外貨送金、為替サービスなどで、より良いサービスを継続的に提供し続けることです。

モリス:
「LINE Bank Taiwan」の存在をさらに広く浸透させることにも注力しています。現在220万人のユーザーに利用いただいていますが、まだ大きな伸びしろがあると考えています。
ブランド認知を高め、サービスやプロダクトについてより多くの方に理解していただくことで、インターネット専業銀行に不安を感じる方にも安心して利用してもらえる存在を目指しています。

眼鏡をかけたファンが、室内のシンプルな背景の前で机に向かって座っている写真。男性はネイビーのジャケットに白い「LINE Bank」と書かれたTシャツを着用しており、両手を軽く組んで机の上に置いている。短く整えられたグレーがかった髪型で、穏やかな表情を浮かべている。

LINE Bank Taiwan 会長 ファン・インジュン

銀行は「足を運ぶ場所」から「手元で完結する存在」へ―ユーザーが自由に選べるお金との距離感

――「LINE Bank Taiwan」が登場して、ユーザーのお金との距離感や生活はどのように変わりましたか?

モリス:
「LINE Bank Taiwan」が登場する以前も、台湾の伝統的な銀行ではインターネットバンキングを提供していましたが、実態としては対面サービスの補完で、「銀行は足を運ぶ場所」という感覚が根強く残っていました。

この概念を大きく変えたのが「LINE Bank Taiwan」です。実店舗が一つもない遠隔地の町や離島においても、LINE Bank は多くの人に利用されています。複雑な金融サービスをLINE上でシンプルに提供することで、ユーザーは、必要な金融サービスをいつでもどこでも利用できるようになり、金融包摂の理念を体現しています。これにより手続きにかかる時間が大幅に短縮され、日常の時間をより有効に使えるようになったことは大きな変化です。

このように、「LINE Bank Taiwan」は金融サービスを「手間と制約の多いもの」から「いつでも自分のペースで使えるもの」へと転換し、誰もが必要な金融サービスにアクセスできるという考え方を体現し、ユーザーの生活に寄り添う存在へ進化し続けています。

――AIも積極的に活用されているそうですね。具体的にどのような使い方をしていますか?

モリス:
現在、AIを主に2つの領域で活用しています。
1つ目は不正検知です。AIが1分ごとに不審口座の予測リストをモニタリングし、管理しています。リスクを事前に察知することで、ユーザーの資産保護に役立っています。

2つ目はコールセンターでのカスタマーサポートです。AIによる自動応対により、ユーザーからの問い合わせへの回答時間は平均8秒に短縮されました。これによって、サービス提供の効率が向上し、ユーザー満足度の向上にもつながっています。さらに、コールセンター業務の研修時間を50%以上削減することに成功しています。

AI 活用はユーザーからも高く評価されており、今後もコスト削減と新たな収益機会の創出に向けて、積極的に活用を拡大していく方針です。
具体的には、生成AIの活用領域を融資審査にも広げ、より精度の高い判断を行える仕組みを検討しています。
将来的には、AIエージェントをモバイルバンキングに導入し、ユーザーが自分の目的に合わせてサービスを直感的に使える「自律型の金融体験」の実現も目指しています。

眼鏡をかけたモリスのバストショット写真。男性はグレーがかった髪をセンターで分け、整えられた白いあごひげをたくわえている。ネイビーのジャケットに黒いインナーを合わせ、穏やかな微笑みを浮かべている。

LINE Bank Taiwan CEO モリス・ファン

「手の中の銀行」を実現するために―小さなチームで早く大きく動く組織

ところで、「LINE Bank Taiwan」ではどのような組織・文化が根付いているのですか?

ファン:
「LINE Bank Taiwan」は、伝統的な銀行とは異なり、階層をできるだけ少なくしたフラットな組織構造を採用しています。領域ごとの専門組織が対等に連携しながら業務を進めている点が特徴です。

モリス:
私たちは、組織を必要以上に大きくせず、スリムで明確なコミュニケーションチャネルを持つことを大切にしています。

たとえば、会議では「誰でも遠慮なく意見を言ってほしい」と常に伝えています。社員一人ひとりの意思決定が、組織全体の意思決定につながると考えているためです。
また、常にユーザーフォーカスで考える姿勢も欠かせません。一人ひとりが自主性を持ち、少人数の専門チームとしてフラットに動き、スピード感を持って取り組むことを重視しています。

――会長、CEOとして大事にしていることはありますか?

ファン:
市場の変化やユーザーニーズに敏感であることを重視しています。私たちは常にその点について議論し、どのようにサービスへ反映しユーザーニーズに応えられるか、新しい価値を提供できるかを考え続けています。

モリス:
CEOとしては、ユーザーの反応やサービスへの評価を常に注視し、データドリブンで意思決定することを大切にしています。

社員には「ユーザーとつながること」「マーケットとつながること」「競合に敏感であること」を繰り返し伝えています。自分たちの立ち位置を常に把握し、ユーザーの感覚を捉え続けることで、改善点や新しいサービスの検討につなげていくことが重要だと考えています。
さらに、イノベーションを追求できる環境づくりも欠かせません。ユーザーへの強いコミットメントと迅速な行動を組み合わせることで、変化の激しい環境でも持続的な成長が可能になります。 この組織文化は今後も大切に守り、発展させたいと考えています。

ミッション:Universal, Efficient, and Close to Daily Life
誰にでも、効率的で、生活に寄り添う金融サービスを
ビジョン: To Become the Customer's "Primary Account"
お客様にとってのメイン口座へ
バリュー:Fast and Friendly Banking Services
スピーディーでフレンドリーな銀行サービス

モリスとファンが、白い縦縞の壁を背景に左右に離れて立っている写真。壁の上部中央には「Banking in Your Hand」という文字が大きく掲げられている。

レジリエントを基盤にした次の成長ステージへ

――今後「LINE Bank Taiwan」が目指す姿を教えてください。

モリス:
長期的には、サービスの「レジリエンス(回復力・強靭性)」を高め、持続可能なサービス運営を実現することを最も重視しています。一方で、短期的な目標は財務基盤をさらに強固にすることです。

現在、収益性は着実に向上しており、ユーザーからも多くのポジティブな反応をいただいています。また、安心してサービスをご利用いただけていると感じています。
こうした短期・長期の双方を強化しながら、新しい世代のユーザーが抱えるデジタル金融ニーズに、これまで以上に応えていきたいと考えています。

――「LINE Financial」のCEOとして、ファンさんはいかがですか?

ファン:
まずは「LINE Bank Taiwan」を含む各子会社が黒字基盤を築き、自立的に成長できる体制を整えることを最優先にしています。同時に、各市場で圧倒的なNo.1を目指すことも重要です。

「LINE Bank Taiwan」はすでに台湾のインターネット専業銀行でNo.1の地位を確立しましたが、大手メガバンクとの競争は続いています。これからも持続的な成長を追求していきます。
台湾やタイでは、銀行・決済(Pay)・ローンサービスなど多様な金融事業を展開しており、各国でサービスの進化や事業拡張の可能性を常に探っています。また、他国での新たな事業機会についても検討しています。Hana BankとLINEの協業による「LINE Bank by Hana Bank」も、インドネシアで運営されています。

さらに、伝統的な金融にとどまらず、Web3(ブロックチェーン技術を活用した分散型のサービス)やステーブルコイン(価格が安定するよう設計されたデジタル通貨)といった新しい金融領域にも注目しています。AIとデータの活用を一層進め、LINEエコシステムとの連携を深めることで、ユーザーにさらなる価値の提供を目指していきます。

多くの男女が室内に集まり、カメラを見上げるようにして立っている集合写真。参加者はLINE Bankのロゴ入りボードや、キャラクターが描かれたパネル、スローガンが書かれたサインボードを手にしている。「Banking in Your Hand」「Yes, we did it!」「LINE Bank」などの英語のほか、中国語で書かれたメッセージも掲げられている。

「LINE Bank Taiwan」のメンバー

「LINE Bank Taiwan」のオフィス紹介ビデオです。ファンさんとモリスさんのインタビュー、オフィスや社員の様子を、ぜひご覧ください。

取材日:2025年11月18日・2026年3月10日
文:LINEヤフー社内広報編集部 撮影:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです

「LINEヤフー ストーリー」のロゴ
LINEヤフーストーリーについて
みなさんの日常を、もっと便利でワクワクするものに。
コーポレートブログ「LINEヤフーストーリー」では、「WOW」や「!」を生み出すためのたくさんの挑戦と、その背景にある想いを届けていきます。
Page top