「AIを使いこなす会社では終わらない」 LINEヤフーが目指すAIネイティブ組織とは?

リーダーズ
オフィス空間で腕を組み、正面を向いて立つ米田の写真。ネイビーのジャケットに黒のインナーを合わせ、短く整えた黒髪で穏やかに微笑んでいる。背後には明るい照明とカラフルな装飾が見える。

AIテックカンパニーの実現を目指すLINEヤフーでは生成AIの全社導入が進み、約1万人の社員のほぼ100%が日常的に生成AIを活用するフェーズに入りました。

「ただ、それは、あくまで最初の一歩に過ぎない」
生成AI戦略を統括する執行役員の米田は、そのずっと先の未来を見据えています。

これから求められるのは、AIを「使う人」ではなく、AI時代に最適化された業務プロセスを自ら設計し、実行できる「AIネイティブ人材」。そんな人材をどのように育てようとしているのでしょうか。
生成AI戦略の現在地と、目指す組織の姿について聞きました。

米田の顔のクローズアップ写真。短い黒髪を横分けに整え、落ち着いた表情で正面を見つめている。ネイビーのジャケットと黒のシャツを着用し、背景は柔らかくぼけた室内空間である
米田吉宏(よねだ よしひろ)
LINEヤフー執行役員 経営戦略CBU CBUリード
電通にて広告・マーケティング業務に従事した後、ボストンコンサルティンググループにて、テクノロジー領域を中心とした事業戦略立案・実行を担当。ユナイテッド執行役員などを経て、2023年LINEヤフー(旧ヤフー)に入社。2025年より、全社の経営戦略、生成AI戦略の責任者。

AI活用100%は、まだスタートラインにしかすぎない

――LINEヤフーは生成AIの登場以降、スピード感を持って取り組みを進め、社員の活用が100%になりました。現在の進捗と手応えをどのように捉えていますか?

私個人としては、3年後、5年後を見据えると、今はようやく一歩目を踏み出した段階で、一つの「通過点」だと感じています。
国内企業の中では導入が早いと言われることもありますが、そうした評価に手応えを感じているわけではありません。
誰もがAIを触るようになったこと自体は意味がありますが、それではまだ「AIを前提とした業務プロセス」にはなっていません。現状では、これまで続けてきた業務の一部にAIを導入しているだけ。さらに進化させるには、社員一人ひとりが、自分の業務全体を再設計する必要があります。

AIはあくまで手段です。本質的な最終目的はユーザーへの提供価値を最大化し、その結果として利益や成長を生み出すこと。そのためにも、プロダクトやオペレーションを次のフェーズに移行させなければなりません。

――2025年7月にLINEヤフーは「生成AI活用の義務化」をスタートしました。あえて、「義務」という形を取った背景とは? この先、どんな状態が理想ですか?

義務化は「火をつける」きっかけとして有効でした。生成AIを「使う・使わないを考える」段階を超えて、早期に「使う」フェーズに入るためです。
最終的には、社員一人ひとりが自律的に業務をAI化し、進化させる力を持つ必要があります。
私が考える「AIネイティブ」とは、AIが当たり前にある時代に、最適化された業務プロセスを自ら構築できる人のことです。

――「AI最適な業務プロセス」への移行において、難しさを感じている点や、何か意識している指標はあるでしょうか?

業務プロセス自体を変えることは、AI以外の知見やスキルも必要です。
今の仕事を棚卸しした上で、「AIがどこまで担えるのか」を考え、設計し直す力が求められる。構造化、オペレーション設計、変革推進、テクノロジー理解というスキルも身につけていく必要があります。

最終的に目指しているのは、一人当たりの利益や売上が大きく改善している姿。
そのためには、結果として「付加価値の高い業務」に割く時間を増やし、生産性を高めることが大事だと思っています。「戦略がどれだけ早く深まったか」「不要な業務の時間をどれだけ減らせたか」「本質的なプロダクト改善に投入する時間がどれだけ増え、効率が高まったか」といった変化を重視したいと思います。

窓際の席で身を乗り出しながら話す米田の写真。ネイビーのジャケット姿で、真剣な表情を浮かべ横を向いている。背後には大きな窓があり、都市の景色が淡く広がっている

業務自体を再定義。「使いこなす人」を育てる組織へ

――「AIネイティブ」を育てるために、どのような施策を行っているのでしょうか?

私が所管する組織だけでなく、CTO管掌や人事部門とも連携し、コミュニケーション、環境・ツール整備、研修・教育、報奨・アワード制度など、包括的に取り組んでいます。
まず、コミュニケーションについては、トップの出澤も「ここでブレイクスルーするか、ダウンするかの分岐点だ」という強い危機感を何度も社内外で伝えてきました。そのためにAI活用の重要性も説明しています。
同時に、AIに関する変化を生み出した人を表彰する取り組みも進めています。
たとえば、優れたGems(カスタムAI)を作成した社員や、成功事例を生み出した社員に対しては表彰していますし、そのノウハウを全社で共有するアワード制度を実施しています。これにより、汎用性の高いAIの発明、個人の工夫や挑戦が組織全体の力として蓄積される状態を目指しています。

また、AIを前提に業務プロセスを再設計するためには、誰もが当たり前に使える共通基盤が欠かせません。全社で2025年6月からChatGPT Enterpriseを導入し、2026年1月からはGWS(Google Workspace)も導入しています。さらに、さまざまなAIに関する自社ツールや環境も拡充しています。

これらの生成AIを社員がさらに使いこなすために、2週間かけて集中的に実施した研修プログラムが「Generative AI Festival Week(生成AI祭り)」です。
LINEヤフーの社員を中心に、Google、OpenAIの専門家も講師を務める全社向けセミナーを実施しました。これは単なるツールの使い方を学ぶ場ではありません。「自分の業務プロセスをどう変革できるか」「どこまで成果につなげられるか」。自分の仕事そのものを見直し、変革する視点を持つことに重点を置いた内容にしました。

――これまでカレンダーやオンライン会議、共有フォルダなど、用途ごとに使い分けていたツールが、基本的にGWSへ一本化されました。その狙いとは?

CIOが検討をリードしている領域ですが、私としては、AI時代においては、分断されたデータ環境では意思決定速度が上がらないと考えています。統合されていなければ、AIのフルポテンシャルを活用することはできません。その点、GWSは、メールやカレンダーからドキュメント、データ格納フォルダまで一体で扱える環境が整っている。さらに、‎Geminiをはじめとした業務プロセス設計やエージェント開発のための仕組みも非常に充実しています。

業務をAI時代仕様に進化させるには、社員一人ひとりが自律的に業務プロセスをAI化していくことが欠かせません。コーポレート組織がツールや制度を提供し、必要に応じて半ば強制的に業務構造を進化させることも重要です。この両輪を今後もしっかりと進めていきたいと思います。

GWSやGeminiといった共通基盤の活用は、そうした考え方を前提に設計したものです。働き方そのものが自然と変わっていく環境を用意することで、業務の進化を後押ししていきたいですね。

ソファに腰掛け、両手を組みながら話す米田の写真。ネイビージャケットと黒のインナーを着用し、落ち着いた表情で前方を見ている。背後には大きな窓と明るいオフィス空間が広がる

「全社AI戦略」と組織変革のアプローチ

――AI戦略と連携するような形で、社内体制も大きく変化してきましたね。

はい。2023年当初、生成AI推進に必要な戦略企画、パートナーシップ、利活用推進、ガバナンスを生成AI統括という組織が集約して保持していました。これは勃興期のスピード感ある推進を重要視したからです。2025年10月より、旧生成AI統括の機能は経営戦略部門に統合しました。これは、経営戦略のど真ん中にAI化が据えられている中で、経営企画組織と連動して推進を加速させるためです。今後も他のコーポーレート組織とも協議しながら、推進加速のために順次組織を見直していきます。

――社員一人ひとりが自律的に変わっていくのを待つだけでなく、会社側からの仕掛けも重要になるということですね。

あくまでサービスおよび業務全体がAI化されていくことが大事です。それを実現するために、コーポレート組織による後押しも必要です。たとえば、先ほどお伝えした通り、これまで使っていたツールを廃止し、多くのグループウェア関連データはGWSへ統合されました。利用環境自体が移行すれば、当初は一定の負担を強いるかもしれませんが、より洗練された環境に必然的に移行することになります。

室内で身振りを交えながら話す米田の横顔写真。ネイビーのジャケットを着て前傾姿勢で手を差し出し、いきいきとした表情で会話している。背後には観葉植物と壁面が見える

経営者としての危機感と、LINEヤフーで働く面白さ

――強い危機感を感じますが、ここまでAI化を急ぐ背景には、どんなものがありますか?

私たちは全体で見れば利益は伸びていますが、検索やディスプレイ広告をはじめ、あらゆる領域で、事業環境が大きく変わりつつあります。生成AIの登場によって、これまで当たり前だった検索体験そのものが今後、大きく変わる可能性もあります。

私たちはこれまでインターネット市場の伸びとともに成長してきましたが、これからは簡単ではないはずです。環境の変化に取り残されてしまうわけにはいかないという危機感を強く持っています。

――そのような環境下で、今LINEヤフーでAIに取り組むことの「面白さ」は何でしょうか。

多くの企業では、AI活用というと社内の「業務効率化」に目が向きがちだと思います。しかし、私たちが向き合っているのは、それだけではありません。

1億人以上のユーザーに使っていただいているサービス自体をAIによって進化させていく。つまり、世の中の人の体験そのものを変えて価値を生み出すというダイナミックな挑戦ができる点です。

社内の業務プロセスをAIで最適化し、そこで得た知見やスピード感を、ユーザー向けのサービスにそのまま還元し、提供価値を高めていく。
この「中の変革」と「外への価値提供」が直結しているのが、他社にはないLINEヤフーならではの面白さだと思います。

――最後に、これからのLINEヤフーを担う人材に期待することをお聞かせください。

AIを使って業務やサービスを非連続に進化させられる人です。AIを使えばすべてが解決するわけではありません。目指す姿に対してAIが本当に必要なパーツなのかを冷静に見定めた上で、自律的に変革していってほしいです。みなさんと一緒に、AIネイティブな組織を作っていきたいです。

取材日:2026年2月3日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:芹澤 明彦

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