偽造品撲滅へ。Yahoo!オークションが切り拓く、リユース市場の新たなスタンダード

サービス
白い壁を背景に「LINEヤフー」というロゴが掲げられているオフィス空間で、林がカメラの方を向いて立っている。黒のジャケットの下に白いインナーを着用し、黒縁の眼鏡をかけている。

ネットでブランド品などを買うとき、「これ、本物かな?」と不安になった経験ってありませんか?
そんなユーザーの不安を払拭するため、Yahoo!オークションは11月19日、フリマアプリ「スニーカーダンク(スニダン)」を運営する株式会社SODAと提携し、真贋(しんがん)鑑定サービスをスタートしました。対象はファッションやアクセサリー、時計などで、鑑定料は無料。安心して取引できる環境づくりへ向けた新たな取り組みについて、責任者に聞きました。

林の写真
林 啓太(はやし けいた)
LINEヤフー株式会社 執行役員 コマースドメイン リユースSBUリード
2005年、オークションサービスのエンジニアとしてヤフー入社。その後ソーシャル系サービスに従事した後、同開発部長に就任。2012年、ヤフーと提携したカカオジャパンにサービスマネージャーとして参画した後、2017年よりヤフオク!ユニットマネージャー、2021年よりヤフオク統括本部長、2022年ヤフー株式会社執行役員を歴任し、2023年10月より現職。

目指す世界の実現のために

――今回、鑑定サービスを始めた背景を教えてください。

オンラインのリユース市場は年々拡大しており、2024年には全体で約3.3兆円の規模となりました。その約6割がオンライン取引で、さらにそのうちの約7割はC to C(個人間取引)が占めています。そのC to C取引が増えていることを背景に、年々偽造品が増加してきているのです。市場の広がりを歓迎する一方で、健全な取引環境を維持していくことが課題となっています。
そうした中、Yahoo!オークションは日本最大級のインターネットオークションサイトとして偽造品の流通を防ぎ、安心して取引できる環境を整える責任があると考えています。これまでもさまざまな対策を行ってきましたが、より強化すべく今回のサービスを始めることにしました。

オンラインCtoC市場の成長を示した図。上部に「オンラインCtoC市場の成長」「リユース市場のうちオンライン取引が過半数を占め、そのうち約7割がCtoC取引」という見出しと説明文が配置されている。

――どんなものが鑑定の対象になりますか?

ファッションやアクセサリーなどのブランド品の場合は入札開始価格が5万円以上、トレーディングカードの場合は2万円以上のものが対象(※1)です。偽物を販売する犯罪は、効率よく稼ぐために高額な商品をターゲットにしています。ですから、私たちが優先して力入れるべきところもやはり高額商品ということになります。

※1:入札開始価格が2万円以上のトレーディングカード(シングルカード)、5万円以上のトレーディングカード(ボックス、パック)、5万円以上のファッション・アクセサリー・時計かつ、対象ブランド(257ブランド)の商品

――今回、フリマアプリ「スニダン」を運営するSODA社をパートナーに迎えました。その理由について教えてください。

最大の理由は、スニダンが積み上げてきた鑑定のノウハウと実績です。今回のサービスでは、落札後に出品者が商品をスニダンへ送付し、同社が真贋鑑定を行ったうえで、問題がなければ落札者へ発送します。鑑定は取引の中間に入るので、精度もスピードも妥協できません。

取引の流れを3つのステップで示した図。全体はピンク色の背景で囲まれており、上部に「取引の流れ」「鑑定利用にかかる追加費用はなく、入金もよりスピーディに。出品者・落札者双方にとってスムーズな取引を実現」という説明文が記載されている。

実は、当初は鑑定作業の内製化も含めて検討していました。ただ、真贋鑑定には膨大なデータとノウハウが必要で、一朝一夕に高いレベルに到達できるものではありません。
扱える商品数や鑑定の精度も考えると、実績のあるプレイヤーとパートナーシップを組むことが、目指す世界を実現するための最適解だとの結論に至りました。

99.97% ―高水準の鑑定精度

――このサービスの実現にはスニダンのノウハウが欠かせなかったわけですね。

はい。偽造品は年々巧妙化していますが、スニダンは目視だけでなく、X線・赤外線・UVライト・マイクロスコープなどの最新技術を組み合わせ、内部構造や縫製、印刷の細部まで徹底的に鑑定しています。こうした多角的な検査により、業界でも最高水準の精度を実現しています。

さらに、真贋を見極める際は本物と比べることが重要です。偽物だけを見てこれは偽物だと判定するのはすごく難しい。
スニダンは鑑定拠点「スニダンベース」に本物の商品を多数保有しており、これも鑑定精度の高さを支えている要因の一つです。実際、2025年1月~6月の半年間における鑑定精度は99.97%(※2)という数字を記録していました。それがスニダンと組んだ理由です。

※2:半年間の真贋鑑定において誤りが発生した件数を基に算出

偽造技術の巧妙化を説明する比較イラスト。上部に「偽造技術の巧妙化」「偽造技術の巧妙化により、正規品との判別が困難な商品も」という見出しと説明文が配置されている。

――リユース市場の中では、スニダンとは競合する間柄ですよね? スニダンにとって、自らの強みを他社のサービスに切り売りするメリットはあるのでしょうか?

確かにスニダンはフリマアプリですから、カテゴリーによっては競合となります。でも世の中から偽造品を撲滅し、市場を健全に保ちたいという思いは同じです。だからこそ、このパートナーシップが実現できたのだと思います。
市場の健全化によってC to C取引に対する安心感が広がれば、市場規模が拡大して分け合うパイも大きくなります。たとえ競合だとしても、志が同じであれば手を組むほうが合理的ではないでしょうか。

――鑑定サービスの実現にあたって苦労した点はありますか?

これまでは出品者と落札者が直接取引をするモデルでしたが、間に鑑定というプロセスを挟むので、取引のフローが一つ増えることになります。
物流の面でも出品者からスニダン、スニダンから落札者と単純に倍になるため、ビジネスとしてここをどう成立させるかは、重要なポイントでした。

――コストもかかりそうですね。

そうですね。鑑定サービスは今のところ無料で提供していますので、当社にとってそのコスト負担は小さくありません。ただし、これまでユーザーが不安で買えなかったものが「鑑定付きなら買おう」となれば、当然落札率や取引数が伸びます。
私たちは落札額に応じた手数料をいただいていますので、ユーザーと当社の双方にメリットがあると考えています。

さらに、偽物が落札者に届いてしまった場合、これまではサポート対応のコストを当社が負担していました。鑑定によって偽造品の流通が未然に防げれば、こうしたコストの削減にもつながりますし、トラブルの介入にかかる人的リソースも軽減されると見込んでいます。

林の写真。会議室のテーブルに座り、ノートパソコンを前にして話している様子である。黒のジャケットに白いインナーを着用し、黒縁の眼鏡をかけている。少し前のめりの姿勢で両手を使って説明するような仕草をしている。

―サービス開始から1カ月ほど経ちましたが、ユーザーの反応はどうですか?

ありがたいことに今回の鑑定サービス開始後から、対象カテゴリーへの出品数が大きく増加しました。特にトレーディングカードの出品は、過去比較で約2.6倍 (※3)に増加しています。

※3:サービス開始後11/24(月)~12/4(日)の平均出品数とサービス開始前の曜日合わせ平均出品数を比較した数値

鑑定は手段の一つ

――鑑定サービスに関して、今後の展望を教えてください。

今回はまず、偽造品が出回りやすいカテゴリーからスタートしましたが、今後は対象を徐々に広げていきたいと考えています。たとえばプラモデルやフィギュア、ギターなど、コレクターが多く、偽物も多いジャンルは可能性があります。

もちろん、オペレーションが取引量に耐えられるか、鑑定精度を維持できるかなどの検証が必要ですが、そうした課題をクリアしながら拡大を検討していきます。ゆくゆくはカテゴリーの拡大だけでなく、定額取引の「Yahoo!フリマ」への展開も視野に入れています。

――鑑定サービスに限らず、安全な取引環境づくりのための次の一手があれば教えてください。

すでに出品物のパトロールに関してはAIを活用していますが、今後は当事者間でのコミュニケーションにおけるトラブルも、AIで何らかの特徴を捉えてアラートを出せるかもしれません。
人によるパトロールは個人情報の壁もあって難しい部分もあるのですが、AIで検知できれば一気に機動力が上がります。

売る人も買う人も、リユースサービスを利用する人は増えており、過去になかったようなさまざまな問題が生じています。出品者が商品説明と異なる商品を送る行為だけでなく、購⼊者が偽物にすり替えて返品する⾏為など、不正⼿⼝の多様化も課題となっています。
また、偽造品の精度も上がっていますし、買い占めによる高額転売のような社会問題も後を絶ちません。

今回の鑑定サービスはあくまでもリユース市場の健全性を守る手段の一つです。これからも一つ一つの課題に真摯(しんし)に向き合い、ユーザーに安心して使ってもらえるサービスへと磨き込んでいきたいと思います。

取材日:2025年11月27日
文:LINEヤフー社内広報編集部 写真:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです

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