「再現しやすくてうまい」が全て 料理研究家リュウジさんが語る2025年とバズの法則

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明るいキッチンを背景に、エプロン姿のリュウジさんが立っている。右手の人差し指を上に立て、何かを説明するポーズだ。エプロンには「バズレシピ」と書かれ、左下に「LINEヤフー ストーリー」の文字が表示されている

みなさんは、今年、どんな料理が印象に残っていますか?

物価高に加えて、米不足による備蓄米の注目など、変化の多かった2025年の食事情。そんな中で、「2026年はどんな食トレンドが来るのか?」と気になる方もいるかもしれません。
しかし、レシピ動画で絶大な人気を誇る料理研究家・リュウジさんの答えは、「食にトレンドなんてないんですよ」というもの。バズる料理に必要なのは奇抜さや最新ワードではなく、「誰もが手軽に再現できて、ちゃんとうまいこと」だと語ります。
今回、2025年の食を振り返りつつ、変わりゆく時代のなかでも変わらない強さを持つレシピの条件と、その裏にあるユーザーファーストの哲学をうかがいました。

白い背景の前で撮影されたリュウジさんのバストショット。短めの黒髪で、落ち着いた表情をしている。黒い服にエプロンの肩ひもが見え、正面をまっすぐ見つめる構図である
料理研究家・リュウジさん
YouTube登録者数500万人超え。「リュウジ式至高のレシピ 人生でいちばん美味しい!基本の料理100」シリーズ(ライツ社)や「バズレシピ」シリーズ(扶桑社)など著書多数。「偉大なるチキン野郎―伝説の鶏レシピ108」(扶桑社ムック)も好評発売中。
YouTube:料理研究家リュウジのバズレシピ
公式サイト:https://bazurecipe.com
公式X:https://x.com/ore825

2025年の食といえば「米」が主役の一年だった

――2025年を振り返って、食やレシピの話題で特に印象的だったことはなんですか?

今年は、やっぱり「お米」でしょうね。前年の収穫量の減少をはじめ、さまざまな事情が重なった影響で、スーパーや量販店などから米が品薄状態になりました。その対策として政府が「備蓄米」を放出したこともあり、メディアでも大きく取り上げられましたね。
僕も備蓄米をテーマに何度か動画を企画しましたが、社会的関心が非常に高く、毎回、大きな反響がありました。
その一方で、「味の問題じゃない」などと、意図とは異なる批判をされたこともあって...。その様子がスポーツ紙などに取り上げられ、Yahoo!ニュースで配信されたこともありました。

――リュウジさんはインフルエンサーとして、一つひとつの発言が注目されていて、ニュースで見かけることもよくありました。

僕は料理研究家として、農家さんが丹精込めて作ったお米が、時間がたつとどう変化するのかを知りたいみなさんのために、実直に伝えたかっただけなんです。

日本の米が本当に不足していたので、アメリカのカルロース米などとも食べ比べましたが、実際、備蓄米の方がずっとおいしいと感じました。新米と食べ比べても、違いがわからない人もいると思います。
ただ、僕個人としてはやはり時間がたっている分、炊き上がってみると「新米と比べて水分量が少ないな」、「熟成香みたいなものがするな」と感じました。これは完全に好みの問題で、粒だちがよい備蓄米の方が好きと感じる人もいるのではないでしょうか。
水分量が気になる場合は、チャーハンや焼き飯との相性がいいですね。

店舗のカウンターに座り、身振りを交えながら話しているリュウジさんの様子。黒い服にカーキ色のエプロンを着用している。背景にはポスターや調理家電が並び、対談や取材の場面であることが伝わる

――確かに、Yahoo!検索データ(※1)を見ても、2025年は4月から7月にかけて「米」や「備蓄米」の検索が大きく上昇しました。リュウジさんといえば、「至高の白米」という炊き方を紹介されていますね。あらためて、教えてください。

はい、備蓄米に関わらず、白米を手軽にもっとおいしく炊き上げるためのひと工夫です。
まず、流水ですすいで水につけて洗います。そうしたら、「浸水」ですね。お米をといだら30分から60分ほど水に浸けて、僕は冷蔵庫に入れます。
それから、炊く前に、米2合に対してうま味調味料である味の素を3振り。さらに日本酒(清酒)を小さじ2杯半加えます。炊き上がったらすぐに混ぜて完成です。
備蓄米は先ほどお伝えしたとおり、香りがやや足りないと感じることがありますが、お米が原料の日本酒を加えることで、ぐっと良い香りになります。ただ、小さいなお子さんなどがいて気になる方はおすすめしません。

――やってみますね。2025年というと、物価の高騰が続いていて、食材でも影響を受けています。価格が安定しているものでおすすめの食材はありませんか?

卵やキャベツ、小麦なんかも値段がかなり上がりましたよね。そういう物価高の影響で、安くてうまい系のレシピがよりウケた印象です。
おすすめ食材で言うと、価格が手頃な即席麺なんかいいんじゃないですか。特に、僕は即席棒状めんの「マルタイラーメン」が好きですね。僕が「本家も認めたマルタイラーメンの一番うめえ食べ方がうめえ」を紹介していますので、よかったら見てください。

あと、「うまかっちゃん」もいいですね。こちらも全5種類を食べ比べた動画「うまかっちゃん、マジかよ」がかなりバズったのでぜひ。

――2025年に配信した動画で、バズったコンテンツでは、どんなものがありましたか?

たとえば、今年は、サンマが大漁だったので安かったですよね。「ガチでフライパンで焼くサンマが一番旨い。」という動画はかなり再生数が伸びました。そういう旬のネタは積極的に取り入れるようにしています。

それから、「ネットでありえない唐揚げの作り方がバズっていたので晒します」という動画もかなりバズりました。これはTikTokで流行っていた「油に小麦粉を直接入れて揚げると薄衣の唐揚げができる」という作り方の検証をしたものでした。僕も最初見て「トリッキーすぎるだろ」と、ビックリしました。
失敗している人もいましたが、僕が油の量や味付けなど、いろいろと計算してやったところ、カリカリッとおいしく揚がりました。で、「これは片栗粉でやってもいけるな」と思って試したら、それまたかなりいい感じになりました。

基本的にレシピや調味料のトレンドなんてない

――2026年にこういうトレンドが来そうだなと感じるものはあるでしょうか?

うーん、正直言って、ないですね。基本的に食にトレンドはないんですよ。
僕が作った動画は、何年も前に公開したものがいまだによく見られ続けています。

――確かに、ここ一年間のYahoo!検索のデータ(※2)をのぞいてみると、リュウジさんが2020年にYouTubeで公開された「無限キャベツ」「豚汁」「カレー」「チャーハン」「ハンバーグ」「麻婆豆腐」、2022年公開の「納豆パスタ」「レタスチャーハン」、2023年公開の「納豆チャーハン」「キャベツ鍋」などがよく検索されていました。

ずっと、そういう傾向です。
物価高で「節約系」とか、SNSが浸透して「映える系」とか、そういう傾向はここ数年で出てきた流れではありますが、基本は変わってないです。
昔からウケるものは、今もウケる。特別なトレンドがあるわけじゃなくて、根本的には「簡単で、おいしい」が一番強いですね。

横向きの構図で、リュウジさんが話を聞くような表情をしている。黒髪を耳にかけ、カーキ色のエプロンを着ている。背景には掲示物や調理器具があり、室内でのインタビュー風景である

――リュウジさんがプロデュースした新商品が続々発売されて、売れています。最近も「リュウジ 鍋スープ」でYahoo!検索するユーザーが増えていました(※3)。調味料も含めて、あまりトレンドは意識しないのでしょうか?

「至高のキムチ鍋スープ」と、「至高の鶏山椒鍋スープ」ですね。どちらも奇をてらった食材も調味料も使っていません。王道の組み合わせで十分おいしくなるので、トレンドなんて関係ありません。
商品開発の際は、長く愛されるように、飽きがこないことと、みんなが好きだと感じやすい味を大事にしています。

――なるほど、新商品の開発でもトレンドは特にないのですね。

はい。ただ、商品はせっかく購入してもらうものなので、動画で紹介するレシピとは逆で、自宅では揃えるのが大変な調味料をたくさん使うことが多いですね。「大変な部分はこっちでやりますよ」と。
鍋スープもそうですが、使ってもらえたら、みなさんの手間を大幅に減らせます。難しくなくて、老若男女、自宅で誰でも作れる、という普遍性や再現性がポイントなんです。
作り方は雑でもよくて、とにかく、簡単でウマいレシピがバズるんですよ。

Yahoo!ショッピング認定グルメで大切にしたのはユーザーに刺さる「ガチレビュー」

――2025年はリュウジさんが実際にお取り寄せ商品をレビューする、Yahoo!ショッピングの「認定グルメ」企画も話題になりました。1回目に登場した「骨取りトロさば」「天空のチーズケーキ」、2回目の「縞ホッケ 一夜干し」「ピリ辛高菜炒め」は10倍以上(企画開始前との比較)の売上を記録するなど、取り上げた商品の売上効果もすごかったです。

正直、依頼主のYahoo!ショッピングがたとえ満足してくれたとしても、自分の中ではコンテンツの作り方に納得していなくて、後悔がありますね。もっとユーザーニーズを満たせたし、結果を出せたと思いますから。
たとえば2回目の動画では、紹介する商品のトップバッターが1万円を超える「ズワイガニ」なんです。絵的には強いかもしれませんが、高単価な分、僕のフォロワー層のニーズとも少しズレていました。そこで離脱してしまった人もいるはず。
トップバッターをうまい上にお得で大容量の「ピリ辛高菜炒め」にしておいた方が良かった。そうすれば、全体のPVが伸びて、もっと売上が上がったんじゃないかなと思いますよ。これは予測できたことなので、かなり悔しいです。

「ヤフーショッピング 認定グルメ」と書かれたバナー。エプロン姿のリュウジさんが腕を組んで立ち、料理やスイーツがテーブルに並ぶ。「審査員代表は料理研究家リュウジ」「第2回 ヤフショ社員がガチプレゼンしてみた編」「全部、至高 取ったるで! 社員」といった文字が配置されている。全体に高級感と食欲をそそる雰囲気

特設ページ

――作って出して終わりではなく、振り返りがすごいですね。忖度なしのガチレビューで厳しい評価を受けてしまったメニューもありました。それがタイトルにもなっていましたが...。

やっぱり、ユーザーの心に響くかどうかがすべてなんですよ。プロモーションのうまさじゃなく、良いものがユーザーの心に響けば売れる。これは毎回、実感しています。
なので、たとえ企業案件でも、おいしくないものは「まずい」と言います。そうじゃないと、ユーザーの信頼を裏切ってしまいますから。

腕を組み、少し考え込むような表情をしたリュウジさんの上半身が写っている。胸元には小型マイクが付いている。背後には調味料や家電が置かれ、撮影中の一場面であることがわかる

忖度なしのガチレビューで、険しい表情を浮かべることもあったリュウジさん

――1回目、2回目と見せ方も変わっていますが、次もさらにブラッシュアップされていく話をうかがいました。

何度も言いますが結果がすべてなんです。良いか悪いかはすぐ数字に出てくる。それを分析して、ユーザー視点で改善してくのは当然のことです。
3回目も楽しみにしていてください。もしダメなものが出てきたら、また遠慮なく酷評しますけどね(笑)。

コンテンツを作る上で大切なことは「すべてはユーザーのために」

――企業とのコラボレーションもよくされていますが、コンテンツを作る上で、一番大事にしていることは何ですか?

ユーザーが喜ぶかどうか。それだけですね。 企業がどう思うかなんて、正直、どうでもいいのです。ユーザーが満足して、買ってくれて、反響があるか。それが結果として、企業の売上にもつながるし、自分にも返ってくるわけなので。
他のYouTuberの動画を見て、「プロモーションに偏りすぎているな」「ファン頼みになっているな」と感じることもあります。僕はそういうのはやりたくない。
やっぱり、顧客志向100%でやる、それがすべてだと思っています。シンプルにユーザー視点に振り切ることが成功の最短ルートじゃないですか。

――ユーザーが知りたがっているものを提供すれば結果はついてくるということですね?

そうですね、僕の動画は基本的にHowToなんです。YouTubeのHowToはライブラリになりますから、公開から何年たってもずっと見られ続けるわけです。だから、「ユーザーが何を知りたいと思っているか、何を求めているか」。ブレずに、そこにしっかり応えていきたい。いろんなタイプのYouTuberがいて、動画の作り方もさまざまですが、僕はこの基本を変えたくない。
間違ったものを売ろうとしても響かないし、誰も幸せにもならない。中途半端なことをしても、誰の心にも残らないんですよ。

カウンターに両腕を置き、笑顔で話しているリュウジさんの様子。黒い服とエプロン姿で、リラックスした雰囲気がある。背景にはポスターが貼られ、和やかな対話の場面が写っている

――今後、ユーザーのニーズに応える先に、実現したいことはありますか?

ずっと思っているのはもっと料理をする人を増やしたいということですね。まだまだ、料理が苦手な人、楽しさを知らない人が多いなと感じています。
そういう人にこそ、好きになってもらいたい。簡単でうまいレシピで、まずは料理沼に引きずり込んで、どんどん面白さにハマってほしいんです。
僕は本当に料理が好きなので、その楽しさをもっと多くの人と共有したい。
そのために、これからもコンテンツを作り続けていきたいと思っています。

記事内に登場した「Yahoo!検索」データについて
※1:「米」「備蓄米」の検索データ(集計期間:2025年1月1日〜2025年11月9日)
※2:「リュウジ」と一緒に検索されたキーワードのデータ(集計期間:2024年11月4日〜2025年11月9日)
※3:「レシピ・料理」ジャンルで急上昇したキーワードの検索データ(集計期間:2025年9月4日〜2025年11月9日)

取材日:2025年11月18日
文:LINEヤフーストーリー編集部
記事中の所属・肩書きなどは取材日時点のものです。

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