グループCEO連載 ZVCファンのグローバル戦略「アジア発、未来を動かす投資」

リーダーズ
ソファに座った男性、ファンCEOが笑顔でこちらを向いている。短いグレーの髪と丸い眼鏡をかけ、紺色のジャケットを羽織っている。背景の大きな窓越しにビルが見え、画面左下に白字で「LINEヤフー ストーリー」と表示されている。

国内外100社以上、メディアからコマース、金融まで多岐にわたる事業ポートフォリオがあり、さまざまなシナジーを生み出すLINEヤフーグループ。当連載では、各社CEOのキャリアや、ビジョンなどに迫ります。

シリーズ4回目は、LINEヤフーのコーポレートベンチャーキャピタルであるZ Venture Capital(ZVC)のファン・インジュンCEOです。世界が注目する投資家「Global Venturing Powerlist 2025」に選出されたファンは、LINEヤフーのCGIO(最高グローバル投資責任者)も務め、グループ全体のグローバル戦略のキーパーソンでもあります。
アジア、そして、世界の投資マーケットの最前線で事業を見続けてきたファンが語る「未来を動かす投資」とは?

ファンCEOのバストショットで、正面から穏やかな表情をしている。短いグレーの髪に丸い眼鏡をかけ、濃紺のジャケットを着ている。背景には緑がぼんやりと映っており、柔らかい自然光が当たっている
In Joon Hwang/黄仁埈(ファン・インジュン)
Z Venture Capital Managing Partner兼CEO/LINEヤフー上級執行役員CGIO
サムスン電子、クレディ・スイスなどを経て、2008年NHN(現NAVER)入社。2021年Aホールディングス取締役。2023年LINE Financial代表取締役。LINEヤフー上級執行役員CGIO。2024年からZ Venture Capital でCEO、2025年からManaging Partner兼CEOを務めている。

未知への挑戦こそ、最大の成長につながる

――ファンさんはソウル大学経済学部を経て、ニューヨーク大学院でMBA取得。いわゆるエリートコースを歩んできた印象ですが、どんな子ども時代を過ごされたのでしょうか。

子どもの頃から歴史が大好きでした。もっと深く勉強したいという気持ちが強かったのですが、大学進学では経済学部を選びました。
それでも、歴史への興味は続いていて旅行しながらお城や史跡を巡るのが好きです。
よく歴史に関する読書もします。日本の歴史では、特に戦国時代の末期から安土桃山時代にかけての変化が大きな時代に惹かれますね。

――サムスン電子やクレディ・スイスといった大企業を経て、当時ベンチャーだったNAVERに転職されたきっかけを教えてください。

当時は、インターネットが人々の生活に広がり始めた頃でした。証券会社にいた私に、ユーザーとして利用していたNAVERからCFO(最高財務責任者)のオファーがありました。
まだ、IT企業はビジネスの主流ではなかったため、周囲からは「安定した金融のポジションを捨てて?」という声もありました。ですが、「よくわからない分野だからおもしろそうだ」「未知の領域に挑戦したい」と決断しました。
私にはすでに転職経験が何度かあり、基準はいつも「何か新しい挑戦ができるか」「自分自身、成長できるかどうか」だったのです。

――ITのNAVER入社以降は、同じグループでキャリアを重ねています。何かターニングポイントはありましたか?

そうですね。NAVERではCFOとして多くのスタートアップ投資を経験し、その流れでLINEでもCFOを務めました。上場やヤフーとの経営統合などを経て、現在のZVCやLINEヤフーのポジションにつながっています。
規模も文化も異なる会社同士の統合は大変で、大きな挑戦でしたが、これまでの経験を生かして貢献できた部分もあり、誇りに感じています。
実は、NAVERのCFOを辞めて、子会社であるLINEのCFOとして日本に来たとき、日本語もほとんど話せませんでした。それでも、未知の環境に飛び込んで挑戦することが、自分を一番成長させると信じて、自ら手をあげました。

――投資のプロとして、おもしろさややりがいについて教えてください。

NAVERもヤフーも、最初は小さなベンチャーからスタートした会社です。今、アメリカを見ていても、ITのメインストリームは次々と変わっていますよね。
そんな変化を先読みしながら、良い会社や起業家を発掘して投資し、成長を支援することは、とてもやりがいのある仕事です。
そういったスタートアップの起業家を資金面だけではなく、LINEヤフーグループの強みを生かして支える。それこそが、私たちの使命だと思っています。

横向きに座るファンCEOが話しているような表情をしている。紺色のジャケットと黒いポロシャツを着ており、後ろにはクッションが並ぶ。大きな窓から外の建物が見え、室内の明るさが印象的である。

アジアとアメリカを結ぶ「ゲートウェイ」としてのZVC

――ZVCのCEOに就任された経緯を教えてください。

ZVCはLINE VenturesとYJキャピタルが統合してできた会社です。当初は堀さん(前CEO)と二人三脚で運営し、私は会長として主にグローバル投資を担当していました。その後、堀さんが退任することになり、経営陣の要請もあって、私がCEOに就任することになりました。

――ファンさんは他の企業の重要な役職も兼務しながら、世界を飛び回っている印象です。国をまたぐ拠点での展開、リーダーシップをとる上で意識されていることはありますか?

先日、ZVCはサンフランシスコに新しいオフィスをオープンし、開所式に出席しました。アメリカとアジアのスタートアップエコシステムを結ぶ「ゲートウェイ」として機能させたいと考えています。

ZVCは日本(東京)、韓国(ソウル)、米国(サンフランシスコ)に拠点を持ち、地域ごとの強みを生かしながらも「One Team」として連携しています。
組織は大きくありませんが、だからこそ一人ひとりがオーナーシップを持ち、お互いに視点を共有しながら、議論を重ねて投資を決めています。
最終的な責任を持つのは私ですが、モチベーションの高いメンバーが集まっていますから、なるべくメンバーの自主性を尊重し、サポート役に徹することを意識しています。

――日本の投資マーケットは特殊だという話も聞きます。他国と比べて、マーケットの傾向はどのように違うのでしょうか?

日本は事業会社によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が多く、子会社という形でベンチャーキャピタルが作られているケースが多いです。そして、全体的にリスクテイクに対して保守的で、シリーズB以降、つまり、ビジネスモデルの検証がある程度終わった、さらなる事業拡大フェーズに投資する傾向が強いです。
一方、アメリカや韓国は、独立系VCが多く、アーリーステージの投資にも積極的です。

われわれZVCはCVCでありながら、全体の約半分をシード(初期の資金調達段階)ステージやシリーズA(事業をスケールさせる段階)に投資しています。リスクを取って挑戦する起業家を支援することこそが、私たちの存在意義だと考えています。

――印象に残っている投資案件はありますか?

いくつもありますので選ぶのが大変ですが、たとえば日本の「ウタイテ」は、顔出しのタレント(3次元)と、VTuberといったアニメテイストのIP(2次元)の双方を取り入れた2.5次元のIPを切り拓いたユニークな企業です。最初は正直、理解が追いつきませんでしたが、代表やチームの情熱に触れ、成長を信じてこれまでに4回投資しました。
また、韓国のスタートアップで日本にも進出している「Wrtn Technologies(リートンテクノロジーズ)」は生成AIサービスを手がける企業で、創業者に会った瞬間、「この人はやり抜く」と感じました。
特にスタートアップの場合、最終的に企業を成長させるのは経営者の資質だと考えています。同じビジネスモデルでも、成功する会社と、そうでない会社の差は大きい。「あともう一歩、緻密にしっかりやり抜く力」が大きな差を生み出すのです。
ですから、経営者に直接会って話すことはとても重要です。担当者に任せることもありますが、私も直接会って意思決定することもあります。そういう時は、どんなビジネスモデルよりも、リーダーの覚悟と実行力を見極めるようにしています。

ウタイテ

Wrtn Technologies

ファンCEOの横顔のクローズアップで、丸眼鏡と短いグレーの髪が見える。口元は軽く笑っているように見える。背景は白く明るい室内で、柔らかくぼけたクッションが映っている。

「Powerlist 2025」が示す、グローバルCVCの新たなモデル

――今年、世界のコーポレート・ベンチャーキャピタル業界において、最も影響力のある100人のプロフェッショナルを選出するリスト「Global Venturing Powerlist 2025」に選ばれました。どのように受け止めていますか?

正直、私も驚きましたが、300億円規模のZVC2号ファンドを立ち上げ、IT・AI分野はもちろん、宇宙、ロボティックス分野に積極的な投資活動を進めている点、国をまたいでの連携が評価されたのだと思います。
私たちはCVCでありながら、独立系VCに匹敵するプロフェッショナリズムとスピード感を重視しています。アーリーステージのスタートアップにも積極的に投資しながら、LINEヤフーグループとの連携も常に模索しています。その結果、スタートアップからの注目も大きく、オファーも増えています。

――積極的な投資スタンスに加えて、日本発のZVCならではの強み、存在意義はどこにあると考えていますか?

アメリカのスタートアップからは、ある程度成功したタイミングで、「アジアに行くなら、まずは日本から進出したい」と言われます。これはアジアでも同様で、自国で成功したスタートアップは日本のマーケットに進出したがる。だからこそ、ZVCが日本を軸にアジア・アメリカをつなぐハブになる意義は大きいと感じています。
私たちはその実現のためのグローバルネットワークや多様な事業シナジーなど、他にはないユニークな強みを持っていますので、「Powerlist 2025」に選ばれたのはそういった要因も大きいと思います。

――AIや宇宙、ロボティクスなど、ZVCが注力する分野が今後どう社会を変えていくと考えていますか。10年後、どうなっているでしょうか?

10年と言わず、おそらく5年以内に私たちの生活が劇的に変わると思います。AI、クラウド、SaaS、ロボティクスなど、すべてが連動して進化するでしょう。
たとえるなら、「インターネット以前と、以後」ほどのインパクトです。
私たちが投資するのは単なる技術ではなく、それをどう社会実装するかを考える起業家。彼らの挑戦を全力で後押ししていきたいですね。

ファンCEOが正面に向かって微笑んでいる。紺色のジャケットを着ており、丸い眼鏡が特徴的だ。窓越しに緑と遠くの建物が見え、自然光が柔らかく顔を照らしている。

やり抜く力が未来を動かす

――次世代の起業家へ、どんなメッセージを伝えたいですか。

日本の投資マーケットを見ていると、特に若い世代には優秀な方が多いなと感じます。その一方で、「大胆な挑戦が足りないな」、「少し慎重すぎるな」と感じることがありました。
ですが、最近はポジティブな変化が見られます。スタートアップも増え、若手だけでなく上の世代も積極的にチャレンジしていますし、政府もそれを後押ししていますね。
今、AIがどんどん進化を遂げて、インターネット誕生以来の大きな変化が起き、ビジネスチャンスが生まれています。
失敗を恐れず、どんどん挑戦してほしいですね。

――「やり抜く」以外に、大切にしている信念や価値観はありますか?

自分が考えている価値観と妥協しないことです。投資でも経営でも、信念のない判断はしません。
私が見るのは、起業家が「何をしたいのか」。その信念が明確であれば、どんな困難も乗り越えられるはず。会社も同じで、利益を出すことだけが目的ではなく、ユーザーの生活をより良くすることがゴールであるべきだと思います。
LINEヤフーのミッションである、「"WOW"なライフプラットフォームを創り、日常に"!"を届ける」という言葉や、バリューとして掲げるユーザーファーストの姿勢も、まさにその考え方に通じていますよね。

――LINEヤフーの上級執行役員として、グローバル戦略とZVCの連携についても教えてください。

LINEヤフーのグローバル事業は、現状ではLINEサービスをベースに展開しており、各地域の文化に合わせたローカライズを進めています。その結果、たとえば台湾のモバイル決済サービス「LINE Pay Taiwan」、タイのフードデリバリーサービス「LINE MAN」など、地域発の成功例も増えています。
投資先企業が成長すれば自然と、グループシナジーが生まれます。

まずは良い会社に投資し、ともに成長すること。われわれもサポートしますが、逆に新しい刺激を受けたり、新しい事業モデルにつながったりすることもあります。そうした相互作業の積み重ねがグループ全体の可能性を広げると考えています。

――最後に、グループ社員を含め、変化の大きな時代を生きるビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

投資をするときにも考えていることですが、これからの時代はもう、グローバルな競争力を持たない人も企業も生き残れません。パソコンからモバイルへ、そしてAIの時代へと進化する中で、グローバルな競争がますます加速しています。
それは言語の問題ではなく、自分の仕事が世界水準かどうかを常に問い続ける必要があるのです。
AIも人間の競争相手になる時代だからこそ、私たち一人ひとりが自分の強みを磨き、グローバル視点を持って挑戦し続けることが大切です。
そして、何よりも「やり抜く」覚悟を持ってほしい。それこそが、未来を動かす力になると思います。

ソファに座るファンCEOを正面から撮影した写真。紺色のジャケットを着て落ち着いた表情をしている。背後の大きな窓から緑が広がり、明るい室内で穏やかな雰囲気が漂っている。

取材日:2025年10月28日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:芹澤 明彦
記事中の所属・肩書きなどは取材日時点のものです。

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