AIは鏡、人は窓? 「相談相手」としてのAIの使い方

コーポレート

「ちょっと話を聞いてほしいなぁ...」
気持ちを整理するために誰かに話したいけど、ちょっと気が引ける。そんなときにAIに話しかけている...という方もいるのではないでしょうか。
今回は、AIと人それぞれに話すことの違い、そしてAIを「相談」に使うコツを、「LYぴあさぽ(※)」の鈴木と後藤に聞いてきました。

※LYぴあさぽ:LINEヤフーでは、キャリアコンサルタント資格などを持つ社員が「ぴあさぽ」として、希望する社員に「対話」を通じて同僚として寄り添っています。

後藤 雅美(ごとう まさみ)
CFOドメイン人事総務CBUピープル・デベロップメントユニット人材開発ディビジョンで全社の生成AI 教育の推進を担当。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー
鈴木 麻未(すずき まみ)
CFOドメイン 人事総務CBU 横断推進ユニット グッドコンディションサポートディビジョンで従業員の健康支援施策の企画運営を担当。
保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師

相談相手としてのAIの使い方

――最近、「ちょっと吐き出したいことをAIに話す」という人が増えましたよね。

そうですね。人にはちょっと話しにくいこともAIには素直に言える。それは大きなメリットだと思います。
ただ、基本的にAIは「あなたの考えが間違っていますよ」とまでは言ってくれません。AIの設定次第で補足してくれることもありますが、そうでないとただ「賛同してくれる相手」になってしまうことも。
そのため、使う側が「どんなアドバイスを求めているか」を意識しておくことが大切です。

たとえば、相談の前に「どんなふうに寄り添ってほしいか」を伝えるだけで、返ってくる言葉のトーンが変わります。
私はAIに相談するとき、「寄り添ってほしいけど、私だけの考えに偏らないで」と伝えるようにしています。たとえば「ベテランカウンセラーのように聞いて、バランスを取ったアドバイスをください」とお願いすると、けっこう的確に返してくれますよ。

――設定次第で、AIの「寄り添い方」も変わるんですね。

そうなんです。AIをうまく設定すれば、人との対話とあまり変わりません。
たとえば「上司とあまりうまくいっていないんです...」と相談したら、「あなたはそう感じたんですね」と受け止めてくれた上で「どうしてそう思ったのか」と掘り下げてくれます。
そのやり取りの中で、「自分にも少し言い過ぎたところがあったかも」などと気づくこともあるのではないでしょうか。

相手がAIでも人でも、対話って結局「自分を映す鏡」なんですよね。どういう気持ちで話しかけるかで、返ってくる言葉のトーンも変わる。だから、AIとの対話でも、自分の姿勢が大事です。

――AIに相談するとき、そこまで考えたことはなかったです...。これからAIを相談相手にしたいと思っている人へのアドバイスはありますか?

AIにまだ慣れていない人は、まず「どんなふうに寄り添ってほしいか」をAIに聞いてみるといいと思います。
「少しロジカルなカウンセラーになってください」や「哲学的に寄り添ってください」など、いくつか試してみると、自分に合うトーンが見つかります。

何も設定しないまま相談すると、必要以上に寄り添われ過ぎたり、逆に表面的な返答で終わってしまったりすることもあるので、「何をしてほしい」という目的を決めておくといいんですよね。

私たち「ぴあさぽ」も、「同僚として支援する場」という前提をあらかじめ整え、そのうえで対話しています。それと同じように、AIとの会話もどんな関係で話したいのかを自分から伝えるだけで、やり取りの精度がぐっと上がりますよ。

相手がAIでも人でも「話すこと」は自分を大切にする時間

――AIは相談相手としてもかなり頼りになる...と思いつつ、人との対話だからこそ生まれるものもありますよね。

そうですね。AIと少し違う点は、人との会話には「間」や「うなずき」といった温度があります。同じ「元気です」という言葉でも、声のトーンが違えば受け取り方が変わりますよね。
AIはまだ、そうした空気の微妙な違いを読み取るのは難しいと思います。

また、私たちは相手の表情や空気を読みながら、あえて沈黙することもあります。
それは人にしかできない寄り添いではないでしょうか。そして、生身の人が自分のために時間を割いてくれるという実感が、安心につながるような気がします。

表情を見せながら「うんうん」と聞いてくれる、そのエネルギーの量はやっぱり別物ですよね。

ただ、私はAIの言葉にも、「人のぬくもり」のようなものを感じることがあります。
膨大な人の知識と経験の蓄積から、統計や文脈の計算を通じて生まれている言葉だからこそ、人の思考のエッセンスが滲んでいる気がするんです。
そういう意味で、私はAIを「人類の英知くん」だと思っていて(笑)。
直接人が話しているわけではないけれど、多くの人が積み重ねてきた知恵や感情の断片が、その言葉の奥にあるように感じます。

――AIにぬくもりを感じている...。

相手がAIでも人でも、「話すこと」は自分を大切にする時間だと思います。
AIは気持ちを整理するのに向いているし、誰かに話している感覚も持てますが、人との対話にはそれに加えて「育ち合う時間」があると感じています。

――育ち合う時間とは...?

「ぴあさぽ」で同僚からの相談を受けていると、私も聞きながら癒やされる瞬間があるんです。
「この話をしてくれてありがとう」と思うことも。そんな風に、人との対話はお互いに変化をもたらしてくれるんですよね。

「この人は今、どんな気持ちで話しているのかな」とか、「自分の言葉がどう届いているのかな」とか、そういう感覚を共有できるのが、人との会話の面白さだと思います。

「鏡」としてのAI、「窓」としての人

――確かに、AIに対しては「自分の言葉がどう届いているのかな」なんて思わずに遠慮なく言葉をぶつけているような気がします。

多くの人がきっとそうですよね。だから、時々思うんです。AIって、いろんな人の感情を受けとめ続けているけど、大丈夫かな? ちょっと性格が悪くなっちゃったりしないかなって(笑)

――確かに! AI、いろいろな感情を浴びてますもんね...。心配になってきました。

AIは、私たちがかなりぐちゃぐちゃした気持ちを投げても、ちゃんと受け止めてくれるからありがたいですよね。

そういえば、以前AIに自分の気持ちをそのまま伝えてみたことがあるんです。
そうしたら、AIが「あなたにとってAIは鏡で、人との対話は世界を広げる窓ですね」と返してくれて。「AI、いいこと言うじゃん!」って思いました(笑)。

――深い......!

「鏡」の役割のAIは、自分の中の「もやもや」を映して、「そうか、私は今こう感じていたんだ」って気づかせてくれる
でも、人との対話は「窓」のように外の風が入ってくるから、人と話すと新しい考えや感情が流れ込んでくる。そんな感じなのかなと。

「私はこう思う」「いや、ちょっと違うかも」と、どんどん話していくうちにAIがその言葉を整理してくれたり、新しい視点を示してくれたり。AIは私たちの相談相手としても頼もしい存在になっていますよね。

――鈴木さんは以前、「相手が人でもAIでも、自分の思いを吐き出すことが大事」と話していましたよね。

はい。言語化することが、人が気持ちを整理する基本だからです。

私たちもよく「もやもや」という言葉を使うんですが、もやもやしているときって、一番しんどいんですよね...。
でも、AIに相談すると「何が?」「どこが?」と掘り下げてくれるから、答えていくうちに自分が本当は何に怒っていたのか、悲しかったのかが見えてくる。

「もやもや」を因数分解できるAIは、思考を整える壁打ち相手としてとても優秀だと思います。
そして、AIとのこうしたやり取りを重ねることで、自分の気持ちを整理して伝える力も自然と鍛えられる。

その力は、人との対話の場面でも生きてくると思うんです。AIで言葉を磨くことで、人との会話もより豊かになる、そんな循環が生まれるような気がします。

AIとの対話は、自分の心を整理する時間。今日の「もやもや」を、ちょっとAIに話してみませんか? そして明日は、誰かとその続きを話してみてもいいかもしれません。
AIとの対話は「心を映す鏡」、人との対話は「新しい風が入る窓」。
その両方を行き来しながら、あなたらしい心の整え方を見つけてみてはいかがでしょうか。

AI相談をうまく使う3つのコツ

1.どう寄り添ってほしいかを伝える
「論理的に整理して」「優しく聞いて」「厳しめにアドバイスして」など、今の自分が求めているトーンを最初に伝える。

2.聞き方を工夫する
「なぜそう感じたのか一緒に整理して」や「別の視点を教えて」など、自分の考えを深掘りできるように問いかける。

3.沈黙の代わりに一呼吸おく
AIは沈黙を理解しません。返答を読む前に少し時間を置いて、自分がどう感じたかを考えることで、「自分との対話」の時間に。

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取材日:2025年10月28日
文:LINEヤフーストーリー編集部
※本記事の内容は取材日時点のものです

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