「対話」を通じて同僚を応援する LINEヤフーの「ぴあさぽ」とは

コーポレート
二人の女性が窓際で会話中。「対話を通じて同僚を応援」とのテキスト。

みなさんが職場、学校、家庭など、日常生活の中で、「自分の話を真剣に聴いてもらった」と感じる瞬間はどんなときでしょうか。また、同僚、部下、家族、友人などの話を「聴いて」いますか?
たとえば職場では「仕事を進めるために必要な会話」は行われていても、「自分の感情を上司や同僚に率直に話し、それを理解してもらう」時間を見つけるのはなかなか難しいかもしれません。

LINEヤフーには、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格を持つ社員によるボランティアプロジェクト「ぴあさぽ」があり、「自分の未来について考える時間が欲しい」「心の整理をしたい」と希望する社員に「対話」を通じて同僚として寄り添っています。
この活動が生まれた背景、よい対話にするために心がけたいこと、対話が私たちの心にどのような良い影響をもたらすかなど、プロジェクトメンバーに聞きました。

短い髪の女性が微笑んでいる。背景に窓がある室内。
後藤 雅美(ごとう まさみ)
LINEヤフーアカデミアでグループ社員向けに「学び」を中心とした講座を企画運営。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント、トラストコーチングスクール 認定コーチング スキルアドバイザー
短い髪の女性が微笑んでいる。背景はグレー。
鈴木 麻未(すずき まみ)
グッドコンディションサポート部で従業員の健康支援施策の企画運営を担当。
保有資格:産業カウンセラー(JAICO)、交流分析士インストラクター、国家資格公認心理師
長い髪の女性が微笑んでいる。背景はぼやけた室内。
川西 由香(かわにし ゆか)
広告・販促事業のHRビジネスパートナーとして事業戦略達成のための人・組織の課題を解消する役割を担う。
保有資格:キャリアコンサルタント、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、第二種衛生管理者

ぴあさぽとは? ぴあさぽが生まれた背景

――「ぴあさぽ(以下「ぴあさぽ」)」はどのような取り組みなのか教えてください。

短い髪の女性が微笑み、背景に窓がある室内。「後藤」と書かれている。

「ぴあさぽ」の「ぴあ(peer)」は英語で「仲間」「対等」「同輩」を意味します。また、「さぽ」は英語の「support」から来ており、これは「援助」を意味します。ここでは、「仲間同士の支え合い」を表現しています。

ぴあさぽは、同僚を「ピア=仲間」と位置づけ、互いに支え合う仕組みです。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの有資格を持った社員が、希望する社員のキャリアや人間関係などについて対話を通じて応援・支援します。具体的には、「オープンダイアローグ」と「2on1」という形で定期的に対話の場を設けています。

――この活動はヤフー時代に生まれたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか?

短い髪の女性が微笑み、背景に窓がある室内。「後藤」と書かれている。

2021年に取得したキャリアコンサルタントの資格を活かし、同僚を何らかの形でサポートできないかと考えたのがぴあさぽ活動のきっかけです。当時、コロナ禍で社内のコミュニケーションが希薄化しているという課題感がありました。そんな状況の中、オンラインコミュニケーションが主流となったヤフーでは、対話を通じて同僚を支援する活動が必要なのではないかと感じました。

資格取得後しばらくは、所属部署の同僚と1on1の対話を行っていました。その後、この活動を社内全体に広げたいという考えを鈴木や他の同僚に伝えたら、みんな賛同してくれました。そこで、人事部門に有志のプロジェクト活動として提案してみたところ、活動をバックアップしてくれることになりました。

産業医からの研修や人事のコンプライアンス研修、傾聴の研修を受けるなど、準備を整えた後、2021年10月にトライアルを開始。2021年12月には、「オープンダイアローグ」と「2on1」を初めて実施しました。現在もこれらの活動がぴあさぽの中心となっています。

対話をオープンに「オープンダイアローグ」と「2on1」

――ぴあさぽの活動の中心になっているという、オープンダイアローグと2on1について、詳しく教えてください。

短い髪の女性が微笑んでいる。背景はグレー。「鈴木」と書かれている。

オープンダイアローグ
「オープンダイアローグ」は、フィンランドで開発された包括的な精神医療アプローチで、「開かれた対話」を意味します。私たちは「話すこと」「聴くこと」「対話」を大切にするという思いから、この対話の形式を「オープンダイアローグ」と呼んでいます。

コロナ禍をきっかけにリモートワーク中心の働き方になった当時、「リモートワークでは雑談がなくなってしまう」「1人で仕事をしていると自問自答ですごくクローズな状態になりがち」という声もありました。そのため、対話をクローズではなくオープンにすることが一つの解決策になるのではないかと考えました。

さらに、どれくらいの時間であれば忙しい社員でも利用しやすいのか、そして自分の話が十分に聴かれたと感じられるのか、また他の人の対話も聴けるかも検討しました。現在のオープンダイアローグは、1時間でぴあさぽメンバー2人に対して社員3人までが参加する形で実施しています。

2on1
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーが実施する「対話」は通常、1on1の形式で行われます。ですが、「同僚としての支援」と私たちの心理的負担の軽減という点を大切にしながら、できるだけオープンな関係性を保てる方法はないかと検討した結果、2on1という新しい形式が生まれました。

2対1の対話形式にすることで、客観性が保たれるとともに、1対1の会話で感じる「逃げ場がない」という感覚も軽減できるかもしれない、と考えたことがきっかけです。

「ていねいに聴いてもらう」経験を ぴあさぽの活動を通じて感じていること

――普段私たちがしている「会話」や「雑談」とぴあさぽメンバーとの対話は、どのような点が違うのでしょうか?

短い髪の女性が微笑み、背景に窓がある室内。「後藤」と書かれている。

ぴあさぽの対話が一般的な「雑談」と異なる点は「聴く」と「話す」を明確に区別していることです。つまり、みんなでにぎやかに話すというより、1対1で「聴く」と「話す」を交互に行う形式です。「対話」では、先入観を排除し「私は今の話を聴いてこう感じました」と具体的な感想を伝えることが大切だと考えています。

ぴあさぽ活動を通じて感じるのは、多くの方が「ていねいに聴いてもらう」経験を、日常生活では十分に得られていない可能性があるということです。「10分間でも自分のことをたくさん話せて、ていねいに聴いてもらえたと感じた」「短い時間だけれど聴いてもらったことで思ったよりもすっきりした」といった感想を聞くこともあります。

ただ、深刻な悩みを抱えていたり具体的なトラブルが発生したり、という方については専門家、たとえば産業医などの専用窓口を案内します。また、具体的な体調の不調がある場合は健康相談を受けくださいということもあわせて伝えています。

短い髪の女性が微笑んでいる。背景はグレー。「鈴木」と書かれている。

1人で自己反省を行うと、つい課題に焦点を絞りすぎてしまい、反省会のような雰囲気になってしまいがちです。多くの人にとって、「自分は素晴らしい。一生懸命頑張っている!」と自己評価をするのは難しいかもしれません。
でも、オープンダイアローグや2on1を通じて「そんなことはないですよ」「本当に頑張っていると思います」といったフィードバックを得ることで、心が軽くなる効果もあるのかもしれません。

私たちは人との関係性の中で生きていますが、リモートワークが主流となったことで人間関係が希薄になると、自分を映し出す鏡がなくなったような感覚になることもあるかもしれません。そんなとき、私たちがその「鏡」になり、必要な時にしっかりと対話できる存在になりたいと思っています。

大切な人の話を「きちんと聴く」ためにできることは? 対話のヒント

――私たちが同僚や家族、友人などの話をしっかり「聴く」ためにできそうなことはありますか?

短い髪の女性が微笑んでいる。背景はグレー。「鈴木」と書かれている。

まず、「聴く」と「話す」を意識的に分けてみてください。普段の会話では、相手の話を「聞きながら」次に何を話すかを考えることが多いかもしれません。でも、「対話」のときは、何を答えよう、という思い考えはいったん横に置いて、全力で「聴く」ことに集中してみてください。

また、相手に向き合いすぎてしまわないことも大切です。「向き合いすぎてしまう」ときは、相手への自分の願いや期待が強すぎるとも言えます。たとえば、親であれば子どもにより良いと思える道を歩んでほしい、仕事ではこのプロジェクトを成功させたい、と思うのではないでしょうか。
しかし、それらの思いはいったん横に置いて、聴くことに専念してみてください。

短い髪の女性が微笑み、背景に窓がある室内。「後藤」と書かれている。

「アイメッセージ」を返すことも重要です。たとえば、「〇〇しなければならない」と言われたときは、「私はこう感じたのですが、〇〇しなければならないと思う理由は何ですか?」と質問するようにしています。
その人と同じ経験をしていない限り、本当に理解することは難しく、また、話の内容にすべて共感できるわけではありません。そんなときでも、話している人の気持ちに寄り添い、同じ視点で見て、心で感じる姿勢を大切にしています。

そして、「間」を怖がらないことも大切です。沈黙もまた、重要な時間だからです。そして、評価を加えないことも心がけてほしいと思います。多くの人は、「相談されたら解決してあげたい!」という思いが強くなりがちですが、ぐっと抑えてくださいね。

私たちは、ぴあさぽとして話すときはいつもの0.8倍の速さを心がけています。多くの人は何か話したいことがあるときには1.5倍の速さで話すのですが、私たちは意図的にその速さに合わせないようにしています。そうすることで、話す人も自然と落ち着きを取り戻し、話すペースを落とすようになります。

よい対話にするためのヒント

  • 「聴く」と「話す」を分ける
    次に話すことを考えながらではなく、「聴く」に集中する
  • 「聴くことは難しい」と頭のどこかで意識しながら話す
  • 「アイメッセージ」を返すことが大切
  • 「間」を怖がらない
  • アドバイスをしない、どうにかしてあげなければ! とは思わない
  • 話すときにはいつもの0.8倍速ぐらいに

LINEヤフーの「ぴあさぽ」として新たなスタート 今後目指したいこと

――2023年10月にLINEとヤフーが合併し、ひとつの会社になりました。旧LINEのメンバーも加わり「ぴあさぽ」として活動をスタートしたそうですが、今後目指していきたいことを聞かせてください。

短い髪の女性が微笑み、背景に窓がある室内。「後藤」と書かれている。

合併後、川西をはじめ旧LINEのメンバーも加わってくれたので、「対話」の輪がさらに広がっています。さらに、「ぴあさぽ」に話しにくる社員の中には、旧LINEのメンバーや英語を話す社員も増えてきています。
「対話」が自然にされる会社、を目指し、「ぴあさぽ」があることを通じて「この会社っていいな」「働きやすいな」と思ってもらえたらとてもうれしいです。

長い髪の女性が微笑んでいる。背景はぼやけた室内。「川西」と書かれている。

自分自身の考えや感情を他人と共有し、対話する時間を設けることで、自分の気持ちに気づいたり、考えを整理したりすることで、心がスッキリすることもあると思います。
心がもやもやしていて誰かに話したいと感じたとき、社員のみなさんから気軽に声をかけてもらえるようになりたいと思います。

短い髪の女性が微笑んでいる。背景はグレー。「鈴木」と書かれている。

「ぴあさぽ」は、お互いの意見や感情、背景を尊重しつつ耳を傾け合う「対話」を通じて、社員個人にも組織にもポジティブな影響をもたらしたいと考えています。
そして、誰もが「対話」の重要性を感じ、「対話」したいと思ったときには、まず思い出してもらえる存在になっていきたいですね。

※ヤフー株式会社のコーポレートブログに掲載した記事を一部修正し再掲載しています。

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