投資を始めたのは2014年です。当初は小型のグロース株を中心に、株価の値上がり益を得る投資をしていました。コロナ前まではそうしたスタイルが主流でしたが、コロナ以降はグロース株が弱くなり、大型株が強くなってきた。そのタイミングで生活や考え方も変わって、安定した収入が欲しくなったんです。
不動産投資も検討しましたが、結局は株で配当を得る形が自分に合っていると思い、高配当株へとシフトしました。今は配当金を受け取りながら、着実に資産を育てるスタイルがメインです。
投資に必要な情報は山のようにある。でも、全部読む時間はない...!
そんな「膨大な情報」と向き合う投資家に向けてYahoo!ファイナンスが導入したのが、AI要約機能です。掲示板の議論も決算短信も、数秒で要点をつかめるこの機能は、投資の「タイパ」を大きく変えました。
今回は、AI要約機能の開発を手がけた3名のメンバーと、AIを活用しながら投資を楽しむ個人投資家・シバウラさんが対談。
投資初心者へのアドバイスから、サービス開発の裏側、そしてAIと投資の「ちょうどいい関係」まで、投資をもっと「楽しむ」ためのヒントを探ってきました!





投資を始めたのは2014年です。当初は小型のグロース株を中心に、株価の値上がり益を得る投資をしていました。コロナ前まではそうしたスタイルが主流でしたが、コロナ以降はグロース株が弱くなり、大型株が強くなってきた。そのタイミングで生活や考え方も変わって、安定した収入が欲しくなったんです。
不動産投資も検討しましたが、結局は株で配当を得る形が自分に合っていると思い、高配当株へとシフトしました。今は配当金を受け取りながら、着実に資産を育てるスタイルがメインです。

高配当投資を始めたときに、個人的に欲しい情報があまりまとまっていなかったこともあり、X(旧Twitter)を中心に情報発信をしてきました。
また、Xでは情報が流れてしまうこともあり、自分のサイトを立ち上げて誰かの役に立てればと、配当実績をまとめたり、今ではAIのプロンプト例を載せたりもしています。

最近は、AIを使って投資の情報収集を時短できないかをいろいろと試していて、活用法を少しずつ模索しているところです。
正直、投資の世界でAIを活用している人はまだ少数派だと思います。ChatGPTに資料を添付して要約させたりする人も一部にはいますが、まだ一般的ではないですね。
ただ、今後は多くの投資家が自然にAIを使うようになると思っていて、自分がその先行事例になれたらいいなという気持ちもあります。探り探りですが、どう活用できるかを試している段階です。

そうなんです。ちょうどAIを活用し始めたタイミングで、この取材のお声掛けをいただきました。まさに「AIと投資をどうつなげるか」考えていた時期だったので、今回の対談もとても楽しみにしていました。
※本対談は、シバウラさんがX(旧Twitter)でYahoo!ファイナンスのAI要約機能について発信してくださったことをきっかけに実現しました。

Yahoo!ファイナンスの「決算短信AI要約機能」のリリースを知って「これは投資の効率化につながりそう」と感じました。

荻野:
まさにその点が狙いでした。「決算短信AI要約」は、投資家の皆さんが必要とする膨大な情報を、もっと効率的に、そしてわかりやすく届けたいという思いから生まれた機能です。

蓮池:
そうなんです。決算短信AI要約は、特に初心者や忙しい方に向けて企画しました。
決算短信は投資において重要な資料ですが、営業利益率やROE(自己資本利益率)といった専門用語や売上高・純利益などの数値が多くて読むのが大変です。AIで要点をまとめることで、短時間で内容を理解できるようにし、投資のハードルを下げたいと思いました。

要約されていると、どこを見ればいいかすぐわかる。掲示板も決算短信もAIで整理されているおかげで、情報の「とっかかり」がつかみやすくなりました。初心者でも使いやすい機能だと思います。
「掲示板AI要約」についても実際に使って、短くまとまっていて見やすいとは思いました。ただ、もう少しいろいろとできそうな気もするのも正直なところです。

掲示板って、投稿の中にリアルタイムで役立つ情報が埋もれていることもあるので、それをもう少し効率的に拾い上げられたらいいなと。
AIの要約で「これは見ておくといい」という情報が上に出てくるようになると、すごく便利になると思います。

河野:
ありがとうございます。掲示板AI要約は、Yahoo!ファイナンスでも長い歴史のある掲示板をAIでアップデートした取り組みです。投資家同士の意見や議論をAIがまとめ、主な主張や対立の流れが一目でわかるようにしています。
確かに掘っていかないと見つからない良い情報は多いですよね。掲示板はYahoo!掲示板の時代から数えると、もう20年以上続いています。
長く使ってくださっている方も多いので、変化にはていねいに寄り添う必要があると感じています。その分、慎重さが求められる難しい部分でもあります。

河野:
そうなんです...。ですが、引き続き新しい試みをいくつか始めています。おっしゃっていただいたように、良い投稿をAIが判定して上に表示するテストも一部で行っています。

掲示板って「空気感」を楽しむ場所でもありますから、その雰囲気を壊さずに、時短の面でもっと便利にできるといいですよね。
僕もAIには「時間を短縮できるツール」というイメージがあるので、情報を掘る手間を減らせたら理想だと思います。

河野:
まさにその両立がポイントだと思います。掲示板らしい雰囲気や会話の面白さは残しつつ、投資にも役立つ情報をすぐに見つけられるようにしたい。どちらか一方に偏らないよう、両軸で改善していくつもりです。

荻野:
情報を掘らなくても必要な投稿に出会えるよう、AIの精度を上げていきたいと思います。
掲示板を「読む楽しさ」はそのままに、探す手間を減らしていく...。それが今後のテーマですね。

感じますね。たとえばチャート分析をChatGPTに聞くこともあります。実際に移動平均線などを見て判断もできますが、それすら面倒でAIに聞いてしまう時があります。

河野:
具体的には、チャートのキャプチャを添付して「どこで買えばいいと思う?」というような質問を投げ、移動平均線やチャートの形状を見て、「この金額で買うといい」というのを提案してもらうようなイメージでしょうか。
素晴らしい活用ですね。精度的にも問題ないですか?

はい、特に違和感ないと思います。チャートも、AIがかなり学習しているんじゃないかと思います。

河野:
シバウラさんのXで拝見しましたが、図解はすごく参考になりました。あれもやはりAIを活用していますか?

そうですね。Power Automateなどを使って、ウェブから情報を吸い上げて、あとはExcelに落として、ほぼ自動で作れてしまう。
「AIを使うとこんなこともできる」っていうのを発信したくて投稿しました。
AIで作った図解。Power AutomateやExcelを使って作った図解をAIに読ませて3銘柄を並べて見られるようにしたそうです。

河野:
画像を複数並べてサマリにしているので、比較がしやすいですよね。こういったことを、私たちのサービスでもできたらと思いました。

河野:
掲示板は率直で自由な投稿が魅力の一つですが、その分、相場に影響を与えてしまいかねない内容や誹謗(ひぼう)中傷的な投稿もあります。そういった投稿をAIが誤って強調してしまうリスクが課題でした。
パトロールチームが日々投稿や要約そのものをチェックしていますが、すべてを即時制御することはできないので、あらかじめリスクを軽減できるように検証を繰り返しました。

荻野:
掲示板はユーザーが主役ですが、AI要約を出すとなるとこちらの「発信」になる。その責任が重く、バランスが難しいと感じました。

蓮池:
「決算短信AI要約」でも同じような課題がありました。AIの強みは処理の量と速さにあり、数千文字の決算短信を最短1分で要約できるケースもあります。ただし、正確でなければ意味がありません。
そのため、AI自身によるチェック機能を入れつつ、人の目による確認も重視しています。現在は、要約をサンプリングして人的チェックを実施しています。
そのかいもあって、利用は順調に伸びており、特に決算時期には大きく増えています。アプリに展開してからは爆発的に伸びました。短時間で知りたいというニーズに応えられたのだと思いますし、ありがたいことに信頼して使ってくださる方も増えています。

蓮池:
そうですね。AIのアップデートによって生成される内容が変わってしまうことも考えられますし、機能提供後も注意が必要です。AIから想定通りに回答が得られているかを定期的に確認するなど、品質を維持することにも注力しています。

荻野:
そこは地味だけれど、とても大事なところですよね。AIの自動化が進んでも、最終的に信頼性を担保するのは人の目。やっぱりそこは欠かせません。

蓮池:
AIにすべてを任せるのではなく、人が支える部分もあります。プロンプトの調整や言葉の揺れの修正など、地道な確認作業も多いです。
処理の速さがAIの強みではありますが、そうした地道な作業を重ねることで、精度と信頼を保てていると感じます。

まずはライフスタイルに合った投資をすることです。若い人ならインデックス投資でもいい。個別株は、調べるのが好きな人向けです。
高配当株は損しにくいですが、一気に増えるものではないので、時間をかけて育てるタイプだと思います。

私は投資を「楽しむこと」を大切にしています。
当然ながら配当金がもらえると嬉しいというのもありますが、いい銘柄を見つけたときのワクワク感、思った通りに株価が上がったときの嬉しさ。そこにはゲーム感覚のような楽しさもあります。
とはいえ、やはり調べるのが面倒だったり、時間がかかったりすることもあります。なので、そういった銘柄を検索する効率を上げられることにAIが使えるとより楽しさが増すと思います。

蓮池:
楽しむという言葉が印象的ですね。投資ってつい難しく考えがちですが、そのように楽しめる要素が見つかると学びも深まり、投資を長く続けられそうですね。

河野:
株って人気投票的な側面がありますよね。人気なものがさらに上がる。でも、投資のおもしろさは自分が先に良い銘柄を見つけた楽しさにある気がします。

そうですね。日常の中にもヒントがあると思います。たとえば、コンビニでよく見る商品やサービスが急に増えていたら、それが上場企業のビジネスだった、なんてこともある。日本株なら身近な企業が多いので、そういう発見がしやすいです。

基本的には、業績など、自分の想定が崩れたら売ることにしています。
ただし、想定が崩れなくても「20%下がったら売る」と決めています。その理由は、20%以上下がると感情的に損切りをできなくなるからです。
また、感情が邪魔をして売る判断に迷うときには、「今この銘柄を新しく買いたいか?」と自問して、買いたくないなら売るようにしています。また、株価が上がってもすぐ利益確定したくなりますが、それも感情との戦いです。
このように株の取引では感情が正しい判断を惑わすのですが、そういった時にもAIは感情がないぶん冷静なアドバイスがもらえるため、参考になりますね。

荻野:
シバウラさんにとって、AIは「冷静な相棒」ですね。人の熱とAIの冷静さ、そのバランスが理想的だと思います。

蓮池:
AIは速さと大量の情報処理が強みです。決算短信のような長い資料も、AIなら要点を短時間でまとめられます。そのスピードは、人では到底かなわない部分ですね。

たしかにとても便利ですね。ただ、人でもできる要約ではなく、AIならではの「もう一歩先」が見えてくるとさらにいいと思います。
たとえば、グラフや図解など、視覚的にわかる形があると理解が深まりますし、AIとチャット形式でやりとりできるようになると、もっと使いやすいと思います。自分が知りたいことを投げかけて答えてもらえるほうが、直感的で効率的ですよね。

河野:
まさにそこは、私たちも考えているところです。決算短信を読み込んだうえで、「この会社の今期の見通しは?」といった質問ができる仕組みがあるといいですよね。
もともと、そういったニーズがあるだろうという仮説は立てていたのですが、実際にシバウラさんのような投資家の方から生の声をいただいて確信が強まりました。

荻野:
決算短信の内容を基にAIが答える形になると、利用する人にとっては欲しい情報を最短で得られる「時短」にもなるし、AIが伴走してくれるような感覚にもなると思います。

それは理想的ですね。自分でもChatGPTに決算資料を読み込ませて質問することはありますが、Yahoo!ファイナンス内で完結できたら本当に便利です。投資の判断材料を探す手間が減って、初心者の人にも使いやすくなると思います。

河野:
ちょうどXでシバウラさんがつぶやかれていたNotebookLMのように、任意の決算資料を深掘りして理解できるようになるのもいいですよね。AIと壁打ちしながら情報を整理できると投資がさらに身近になりますね。

荻野:
私たちも、AIを「分析ツール」というより、「相談相手」として使ってもらえるように進化させたいと思っています。

河野:
ただ、AIの活用を進める中で思うことがありまして。先ほど「AIは感情を持たない」という話もありましたが、投資ってやっぱり人の感情と切り離せないと思うのですよね。
たとえば、市場が大きく荒れた日なんかは、社内の空気もどんよりします(笑)。ファイナンスのメンバーも投資をしている人が多くいるので、自分の保有銘柄を気にしながらサイトの対応作業をしていたりして。

荻野:
2024年の夏、日経平均株価が大きく下がった日は、みんな静かにモニターを見つめていました(笑)。でも、そんなときこそ「ユーザーの投資判断を支える」という原点に立ち返れる瞬間でもあります。

その裏話はすごくリアルですね...! 仕事だと嫌でも目に入ってきてしまいますしね。

河野:
AI導入の大きな目的は「時短」です。投資は情報が多く、難しくて面倒だと感じる人も多い。まだまだそこに課題があると思います。
今後さらにAIで整理をして効率化すれば、もっと投資の門戸を広げることができるようになると思います。

荻野:
「掲示板AI要約」が2024年12月、「決算短信AI要約」は2025年2月にリリースし、少し時間がたちました。その間に新しいAIのモデルも登場しました。
さらに良い要約ができるのではないか? もっとより良い機能にアップデートできないか? というところはまさに取り組んでいて、新機能の検証をしています。

AIが投資の世界に入ってきたことで、情報の扱い方や判断のスピードは確実に変わってきたと感じます。これまでは自分で探して、読んで、まとめて――と時間をかけていた部分を、AIがサポートしてくれるようになった。
そのおかげで、「考えること」や「判断すること」に時間を使えるようになったと思います。
個人でできる範囲には限界がありますが、Yahoo!ファイナンスのようなサービスがAIをさらに活用すれば、もっと多くの人が投資に触れやすくなると思います。
投資は判断材料が多く、時間がかかるものですが、AIで時短できれば、それだけ楽しく続けられる人が増えると思っています。

蓮池:
最近は、ユーザーの方々も「AIで要約できるのは当たり前」と感じるようになってきていると思います。だからこそ、さらなる「驚き」を感じていただけるような機能を届けていきたいです。
そして何より、Yahoo!ファイナンスを通して、シバウラさんのように投資を前向きに楽しめる人を増やしていきたいですね。
取材日:2025年10月2日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:安田 美紀
※本記事の内容は取材日時点のものです
