「口コミの力を最大化する」movとYahoo!プレイスのシナジーとは【スタートアップ×LINEヤフーグループ連載】

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オフィスで並んで立っている4人の男性を写しています。背景にはデスクや植物が見えます。「LINEヤフーストーリー」と書かれています。

みなさんは、マップアプリなどで、口コミを参考にしたり、書き込んだりすることはあるでしょうか? 近年、評価を参考にするユーザーが増えている一方、口コミで企業、店舗などが炎上するケースも増えています。

ですが、その影響力を逆手に取って、新たな価値を生み出している企業があります。
2015年に創業したスタートアップのmovは、こうした口コミやインバウンド需要にいち早く着目し、店舗マーケティング支援やコンサルティングサービスなどを提供しています。
インバウンド市場の拡大が続く中で、先見性のあるビジネスモデルが注目を集め、これまでの資金調達額は累計50億円を突破。2024年2月からはLINEヤフーが運営する店舗向けツール「Yahoo!プレイス」と公式連携をスタートし、さらなる成長を目指しています。

そこで、movへの出資を担当しているZ Venture Capitalの亀岡をファシリテーターに迎え、movの渡邊社長とYahoo!プレイスの担当者で対談を実施。ユーザーが目にする機会が増えているマップサービスの裏側で、どのような取り組みが行われているのか探りました。

<スタートアップ×LINEヤフーグループ連載>について
注目のスタートアップとZ Venture Capital、LINEヤフーグループのキーパーソンの声を通して、グループシナジーの取り組みや背景をご紹介します。本記事はそのシリーズ第1弾。共創につながる視点や考え方をお届けします。

グレーのスーツを着た渡邊 誠さんのクローズアップです。彼はカメラに向かって微笑んでいます。
渡邊 誠(わたなべ まこと)さん
株式会社mov代表取締役
2015年にmovを創業。店舗支援事業とインバウンド支援事業を展開し、累計資金調達が50億円を突破するなど急成長させている。
mov公式サイト
黒のジャケットを着た児玉和也のクローズアップです。真剣な表情でカメラを見つめています。
児玉和也(こだま かずや)
LINEヤフー ローカルコンテンツ本部 アライアンス推進部 部長
2005年ヤフー(現LINEヤフー)入社。検索やメディア事業等を経て、現在、ローカル事業のアライアンス推進部の部長を務めている。
黒のカーディガンを着た福留進介のクローズアップです。落ち着いた表情でカメラを見ています。
福留進介(ふくどめ しんすけ)
LINEヤフー ローカルコンテンツ本部 アライアンス推進部 リーダー
2008年ヤフー(現LINEヤフー)入社。広告事業などを経て、現在、ローカル事業にてmovをはじめとするパートナー制度推進のマネージャーを務めている。
眼鏡をかけた亀岡千泰のクローズアップです。彼は明るく微笑んでいます。
亀岡千泰(かめおか ちひろ)
Z Venture Capital Principal
弁護士として法律事務所などでM&A業務などに従事した後、2023年にZ Venture Capitalに参画。メディア・エンタメ領域を中心に投資業務に従事している。

日本人は減点式で、外国人は加点式なのが口コミの特徴

亀岡:
マップサービスなどで、口コミの存在感がますます高まっていますね。評価をもとにお店を探す人が増える一方で、口コミが原因でお店が炎上するニュースも増えています。
少し難しい質問かもしれませんが、口コミに向き合い続けてきた渡邊さんに、良い口コミと悪い口コミについてお聞きしたいです。

渡邊さん:
口コミはマップ上やショッピングサイト上など、さまざまなところにありますが、それを見たユーザーや事業者がどう捉えるかが重要だと思います。
「ピュアな声」や「率直な評価」に対して、ユーザーは「欲しい」「欲しくない」や「行きたい」「行きたくない」と感じるでしょう。一方で、店舗側はその口コミに対してどう向き合うかが重要だと考えています。

亀岡:
確かに、ユーザーと店舗側では視点が異なりますし、どのようなスタンスで捉えるかで口コミの価値も変わりそうですね。

グレーのスーツを着た渡邊さんが笑顔で話しているシーンを捉えています

渡邊さん:
たとえば、セルフサービスの飲食店で「テーブルが汚い」という口コミが入ったとします。そのときに、「一人のお客さんの意見なんて関係ない」「うちはセルフだから仕方ない」と考えるのではなく、ふきんをテーブルの上に置いて誰でも使えるようにするだけで、そのような口コミを減らせるかもしれません。
「口コミに対応することで、店舗でのユーザー体験が良くなるかもしれない」と思うかどうかは、事業者側のスタンス次第です。

実際、私たちのクライアントである大手の飲食チェーン店でも、「この口コミ、オペレーション的にありえない」というケースがありました。調べてみると、その店舗でマニュアルが徹底されていなかったことが原因でした。
「なぜこうなったのか?」「どうすれば再発を防げるか?」と、考えながら口コミに向き合うことで、ユーザー体験は確実に良い方向へ変わっていくと考えています。

亀岡:
向き合うスタンスの違いは、確かにありますよね。
口コミを書き込む側の違いについてですが、昨今、インバウンドが非常に伸びている中で、外国人と日本人で口コミに対する価値観の違いはありますか?

渡邊さん:
日本人は満点を付けにくい傾向がありますね。「まだまだ改善の余地があるから、かなり満足していても80点、90点です。星の数で言うと4点」という感じです。
国籍別で口コミ評価を分析すると、外国人は日本人より0.8ポイントぐらい高評価の口コミをする傾向があります。
外国人の場合、日本を旅行中でテンションが上がっていることも影響しているかもしれません。 また、「良いサービスにはちゃんと良い評価をつける」という文化もあるように感じます。
そのため、外国人の口コミが増えると、平均点が上がる傾向にあります。インバウンドで人気の高い観光地にある店舗もそういった理由で点数が上がることが多いです。
そういったところで、日本人は減点式で評価し、外国人は加点式で評価する傾向があると感じます。日本人の場合、たとえば、どんなに料理が美味しくても、他に少しでも減点ポイントがあった場合、満点にはならないんですよね。

オフィスの一角で4人の男性がテーブルを囲んで会話している様子を写しています

創業時からブレないマーケット選定で、資金調達は50億円を突破

亀岡:
それは厳しいですね。日本ではインバウンド慣れしていないお店が特に多いので、movさんのコンサルが劇的にユーザー体験を向上させるシーンがイメージできました。では、創業10周年を迎えたmovがどのようなサービスを行っているのか、改めて教えてください。

渡邊さん:
私たちは主にインバウンド支援と店舗向けSaaS(Software as a Serviceの略で、インターネット経由でソフトウエアをクラウドサービスとして利用できる仕組み)の2つの事業を展開しています。

インバウンド支援事業では、業界最大級のインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」やインバウンド専門の広告代理業を通じて、訪日観光に関する情報やノウハウを提供しています。これにより、企業が海外からの集客を効率的に行うサポートをしています。

もう一つが店舗向けSaaSの集客一元化プラットフォーム「口コミコム」で、店舗が複数の集客媒体を効率的に管理し、口コミを活用して店舗の運営を改善する手助けをしています。これにより、店舗は時間と労力を節約しながら、顧客満足度を向上させることができます。

亀岡:
クライアントが共通なことで、隣接の課題に対して相互に送客できる印象がありますが、二つの事業が相乗効果を出しているという認識で合っていますか?

グレーのスーツを着た渡邊さんが真剣な表情で視線を横に向けている様子を捉えています

渡邊さん:
はい、その通りです。movの強みは、これらの事業が相互にシナジーを生み出し、顧客に対して一貫した価値を提供できる点にあります。インバウンド事業で得た知見を店舗向けSaaSに生かし、逆に店舗向けSaaSの顧客にインバウンド支援を提供するという、シームレスなビジネス展開を実現しています。

亀岡:
私が所属する、LINEヤフーグループのZ Venture Capitalも出資していますが、資金調達が順調に実施できていますよね。これまで累計50億円を突破しています。どういう点が投資家に受けていると分析されていますか?

渡邊さん:
おかげさまで、まずはトラクション(※1)がしっかり出ています。たとえば、「チャーンレート」という指標がありますが、これは一定期間内にサービスを解約した顧客割合を示します。この数値が非常に低く推移していることは、私たちのサービスがそれだけお役に立てているということかなと思います。

また、マーケットの広さもポイントです。特にインバウンド事業は国策としても急成長しており、2024年はインバウンド消費が8兆円と過去最高を更新しました。

それから、アライアンス、複数媒体との連携がうまくいっていることも評価していただいています。弊社は国内のいわゆるMEO業界で最も独自連携数が多いです。

※1:トラクションの日本語直訳は、「地面をつかむことで生み出される推進力」で、スタートアップ業界では、「成長の兆しを示す指標・実績」を意味する。

亀岡:
定量的な数値が素晴らしいのはもちろんですが、他の投資家と話をする時に、定性面での高い評価もよく聞きます。営業やカスタマーサポートの方も優秀で、組織全体が成長している印象です。 AIも積極的に活用されていますが、どのようなインパクトを生み出しているのでしょうか?

渡邊さん:
AI活用の専門部隊を作って取り組みをリードしてもらっています。まず、社内のコスト削減の効果は大きいですね。
クライアントに対しても、「このような機能を提供できます」といった提案を行っています。社内でPDCAを回しながら運用できているのは大きいですね。
また、AIを活用して口コミデータを分析し、より高度なインサイトを得られる機能も提供しています。
口コミは膨大なので、AIを活用していける余地、私たちがクライアントに提供できる価値はまだまだあると感じています。

亀岡:
創業から10年で急成長を遂げていますが、その成功要因をどのように分析していますか? 道のりはずっと順風満帆だったのでしょうか。苦しかった時期やターニングポイントになった出来事があれば教えてください。

渡邊さん:
順風満帆とは言えない状況でした。コロナ禍はロックダウンにより店舗が営業できない時期もあり、大変でした。
創業時からインバウンド事業に注力し、マーケットをしっかり選定してきましたが、東京オリンピック決定後に盛り上がりかけたところでコロナの直撃を受け、本当にもどかしい期間が続きました。
でも、同時にチャンスもありました。緊急事態宣言によって営業時間が強制的に変更する必要性がでてきたのに、マップサービスに反映できていない店舗が数多くいました。その結果、マップサービスにネガティブな口コミが入るケースもあり、「お店の情報をちゃんと更新しなければ」と言う認識が店舗側に広がりました。これは私たちのサービスを導入していただく大きな動機となりました。

4人の男性がテーブルを囲んで真剣に話し合っている様子を写しています

全世界で通用するサービスを作りたかった

亀岡:
渡邊社長はmovを起業する前は、どんなキャリアを歩んでこられたのですか?

渡邊さん:
学生の頃から漠然と起業に興味を持っていて、自動車やバイク関連での起業を考えていましたが方向性を変え、音楽系のサービスとして10年以上前に初めての起業をアメリカで経験しています。その会社はうまくいきませんでしたが、その後、フリーランスの期間を経て、デジタルマーケティング分野での経験を生かし、2015年にmovを設立しました。
起業やサービス開発をする際に共通しているのは、「国境を超えて価値を共有できるコンテンツ」を取り扱いたいという思いです。
movの使命は「日本のポテンシャルを最大化する」です。日本には国境を越えて通用する良質なコンテンツがたくさんあると思います。

亀岡:
視点がグローバルですよね。リーダーとして、大変なことや困難に直面した時に、大切にしている考え方やポリシーがあれば教えてください。

渡邊さん:
そうですね。その事象が一時的なものなのか、恒久的なものなのかを考えるようにしています。また、ポジな時でどれくらいの成果が出るのか、ネガな時にはどれくらいの影響があるかはかなり意識しています。

亀岡:
長く会社を続けていく上で、最悪のケースを想定できるかどうかはとても大事な視点ですよね。他の皆さんからみて、渡邊社長はどのように見えていますか?

児玉:
自分がやるべきところと、他の経営陣に権限を委譲して任せるところは任せると言うのが上手だなと感じます。それでいて、会社全体では一体感が出ているんですよね。

黒のジャケットを着た児玉が考え込むように横を見ている様子を捉えています

Yahoo!プレイスとの連携で生み出すシナジー

亀岡:
では、児玉さん、「Yahoo!プレイス」とはどのようなサービスなのか教えてください。

児玉:
Yahoo!プレイスは、「Yahoo!マップ」と「Yahoo!検索」の店舗ページのCMS(※2)のようなものですね。店舗や施設のオーナーさまが自分たちの情報を更新できるサービスです。わかりやすく言うとGoogleビジネスプロフィールのLINEヤフー版という感じでしょうか。

※2:CMS(Contents Management System)はウェブコンテンツを構成するテキストや画像などのデジタルコンテンツを統合・体系的に管理し、配信など必要な処理を行うシステムの総称。

亀岡:
2024年2月からは口コミコムとの連携がスタートしたそうですが、両社ではどんな取り組みを行っているのですか?

福留:
基本的に、Yahoo!マップ、Yahoo!検索のユーザーにとって最も大事なのは、情報の質と量がしっかり補完されていることだと思っています。
その目的を達成するために、私たちは外部にAPI(※3)を開放しています。これにより、movさんの口コミコムのクライアントがYahoo!マップやYahoo!検索に表示される店舗/施設情報を効率的に管理、運用できるようになります。
その結果、movさんにとっては付加価値向上につながり、クライアントにとっては工数の削減が可能になります。たとえば、媒体が2つ、店舗数が100あるとすれば200の手間が必要になりますが、そういった膨大な工数を圧縮することができます。
この運用の敷居が下がることで、クライアント、mov、LINEヤフーの3者にとってWin-Winの関係とシナジーを生み出すことができます。

※3:API(Application Programming Interface)は異なるソフトウエアやアプリケーションが相互に機能を共有したり、データをやりとりしたりするための仕組み。

黒のカーディガンを着た福留が真剣な表情で前を見ている様子を捉えています。背景にはオフィスの一部が見えます

亀岡:
渡邊社長から見て、Yahoo!プレイスとのシナジー効果はいかがですか?

渡邊さん:
他にもさまざまなマップサービスはありますが、「Yahoo!マップを標準で使っているよ」というユーザーも多くいらっしゃいます。たとえば、飲食店の店長さんが「他のマップはよくわからないけどYahoo!マップだったらわかる」という場合、セールスが非常にしやすくなります。
私たちの連携媒体としての効果的な手段が増え、そこで価値提供ができていることが大きな成果となっています。

亀岡:
LINEヤフーグループの強みをどのように感じていますか?

渡邊さん:
Yahoo!プレイスに限らず、LINEもYahoo! JAPANもユーザーが非常に多いですよね。ユーザーのロイヤルティーや利用頻度が非常に高いのが特徴で、これは企業として見習うべき点だと感じています。

亀岡:
今後の展望で、movさんとYahoo!プレイスの取り組みに関して言えることがあれば教えてください。

福留:
ローカルビジネスの課題を解決するという方向性は一致していますので、そのシナジーの最大化に向けて、私たち媒体側の責務は集客効果を向上させることです。それによって「他のサービスは利用しているけど、Yahoo! JAPANのサービスはまだ利用していない」というクライアントに対し、クロスセル(交差販売)をよりスムーズにしたいですね。

渡邊さん:
たとえば、LINE公式アカウントは飲食店での導入もかなり増えていますよね。LINEヤフーグループには、店舗集約に関わるプラットフォームが複数ありますので、全てご一緒したいなと個人的には思っています。
個人的に野望はたくさんあるのですが、まだ言えないことも多いので、今日はこの辺にしておきます!

オフィスで4人の男性が集まり、カメラに向かってポーズをとっています。リラックスした雰囲気が伝わります

取材日:2025年4月7日
文・LINEヤフーストーリー編集部 撮影・倉増崇史
※記事中の所属・肩書きなどは取材日時点のものです。

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