岸田奈美さん 完璧な家族旅行をするはずだった話 - Yahoo!カーナビ10周年企画

サービス
赤い車に乗った三人が笑顔で楽しんでいる。画像の左下に「LINEヤフー ストーリー」の文字がある。

LINEヤフーストーリー編集部では、Yahoo!カーナビの10周年を記念して、作家の岸田奈美さんにエッセイを寄稿していただきました。
岸田さんの愛車であるボルボにはカーナビが搭載されていないため、今回はYahoo!カーナビアプリを使って久しぶりの日帰り家族旅行に出かけたそうです。一体どんな一日になったのでしょうか?

黒い帽子をかぶった女性が、鮮やかな赤い服を着て笑顔を見せている。背景には建物が見える。
岸田 奈美(きしだ なみ)さん
作家。1991年生まれ、兵庫県神戸市出身。関西学院大学人間福祉学部社会起業学科在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年に渡り広報部長を務めたのち、作家として独立。著書に「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(小学館)、「もうあかんわ日記」(ライツ社)、「飽きっぽいから、愛っぽい」(講談社)など。最新刊に「国道沿いで、だいじょうぶ100回」(小学館)。

家族旅行。
ハッピーで、和やかな響きですね。

でも、家族旅行って、カンタンじゃないんです。
その裏側には、苦労とか心配とか、
そういう"すっぱい汗水"を流した人が、必ずいます。

夏休み、家族旅行を計画する英雄たちへ この旅行記を、捧ぐ......!

赤い車の前で、車椅子の女性と二人の仲間が笑顔でポーズをとっている。楽しそうな雰囲気。

こんにちは、作家の岸田奈美です。

車いすに乗ってるのが、母のひろ実で、
ひょうきんな弟の良太もいます。

今日はなんと、わたしがふたりのために、 家族旅行を計画しました! パヤパヤ?ッ!

孝行です。孝行。

最近のわたしったら、忙しくて。

わたしの著作「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」がこの夏、NHKで放送されてまして。おまけに新刊も出たもんだから、江戸時代の行商人みたいな生活を送ってました。

夏まっさかりだってのに、実家にも帰れなかったもんで。

ここらでいっちょ、もてなしたろやないかい!と。
後ろめたさを旅行一発で、チャラにする狙い。
ギャンブラーの発想です。

ただ、実はね、わたし、
あんまり家族旅行って計画したことなくて。

いや、昨年も、家族で海外とか行ったけど、
あれらはさまざまな事情により、
「家族」で「旅行」する羽目になるっていうか......。

岸田家の人生、羽目になりがち。
ゆえに、ほぼ、家族旅行は無計画。

でも今日ばかりは、もう、気合いの入り方が違うわけ。
わたし、大見得を切った。

「完璧な旅行プランを組んだる!総員、希望を言ってけー!」

みたいな宣言をね。母と弟に言ったわけ。

母からは、

「人がおらんくて、かわいい雑貨が買えるとこ!」

弟からは、

「ユー・エス・ジェイ!」

もう暗礁に乗り上げた。
S極とN極か、きみらは。

弟に交渉した。

「人がおらんところで、他にないか?」

「ユー・エス・ジェイ!」

「オカンと、おいしいもん食べようや」

「ユー・エス・ジェイ!」

「それしか言わんつもりかキミ」

バンドならば、方向性の違いで解散してる。 しかし、家族は解散できない。

なんとか全員の希望を叶えるため、 わたしは、鉛筆をなめなめ、考えた。

やりました。
完璧な家族旅行の計画が、できました。

それでは発表します。
家族のリアクションとともに、お聞きください。

今回の目的地は、兵庫県の丹波篠山市です。

「近所やん、30分で行けるやん」と、母。

早朝、われわれは兵庫県加東市にある東条湖おもちゃ王国へ入国します。

「えっ!?」

「おもちゃ大好き♪ おもちゃ王国♪」
関西人なら、誰でも聞いたことがあるでしょう。王国の国歌です。

「ユー・エス・ジェイ......」
弟が消え入りそうな声でつぶやいた。

ユー・エス・ジェイよりも、
歴史ありますから、大丈夫です。楽しめます。

そして、おもちゃ王国は2時間で出国します。

「短っ」
と、母。

つづいて、雑貨屋と土産物屋を回ります。
丹波篠山は陶器が有名なので。
工房が点在してるから、5軒は回りましょう。

「多っ」
と、母。

さらに、陶器にはうるさい母のため、
気に入ったのが見つからん場合にそなえて、
陶芸教室も予約しました。

「つくるん!?」
母と弟の声が重なった。

以上。

初めてにしては、われながら、完璧な計画である。

移動は、わたしの愛車ボルボ240ちゃん。
ドラマの撮影で使われたものを、引き取った。
しかも、引き取るために、32歳にして運転免許も取った。

古すぎて、クーラー、半分動かんけど。
フロントガラスから、無限に雨漏れてくるけど。

母が、青ざめた。

「えっ、あの車、カーナビついてないやん! どうすんの!」

「心配するなかれ!」

赤い車の前で女性がスマートフォンを見せて笑顔を見せている。

「Yahoo!カーナビ」アプリがあれば、なんのその。
こうやって、

車内に設置されたスマートフォンがナビゲーションアプリを表示し、目的地までのルートを案内している。

(C)Mapbox,(C)OpenStreetMap,(C)LY Corporation

スマホを取りつけて、アプリを起動。
経由地を複数、設定できるので、
計画の目的地たちも一気に登録可能だ。

あとは、ナビどおりに車を走らせたら、
完璧な家族旅行になるっていう寸法である。

天才! 天才です!
家族旅行の天才軍師たあ、わたしのことです!

計画を立てるまでは、完璧だった。

旅は、波乱の幕開けではじまる。

本当は......8時30分に......出発する予定だった......!
起きたら、8時すぎてた......!

忘れていた。
岸田家、猛烈に朝が弱いのである。

だれも、起きてなかった。

落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。
一時間の遅れはまだ取り戻せる。

出発やでえっ。

赤い車の中で、三人が楽しそうに笑顔を見せている。運転席の女性が手を振り、和やかな雰囲気。

道中は車内でカラオケ大会でも開いて、
テンションを上げて......

車内で少年が眠っている。窓の外には緑豊かな風景が広がり、リラックスした雰囲気。

さっそく寝るんじゃないよ! 起きろ!

「ごめん! 止めて! 止めて!」

高速道路に向かう途中で、
母がとつぜん、叫んだ。

なんだ、なんだ。
よもや車いすでも置き忘れてきたかと思ったら、
ウィーンと窓を開けて、

女性が車の窓から外を眺めている。腕にはスマートウォッチが装着され、興味深そうな表情。

「ヤクルトさーん! 岸田ですー!」

ヤクルトのお姉さんを呼び止めていた。

「出かけるんで、玄関前に置いといてくださいー!」

業務連絡するんじゃないよ!

「来週はミルミルも買いたいですー!」

追加注文するんじゃないよ!

ええい、なかなか出発できん。

東条湖おもちゃ王国へ急ぐべく、
高速道路に突入した。

車内のスマートフォンがナビゲーションアプリを表示し、次の出口までの距離を案内している。

「なみちゃん、なみちゃん」

弟に呼ばれる。

「今度はなんや!」

「あさごあん」

そうだ、全員、寝坊したので、朝ごはんを食べてない。

「くっ......」

女性が車椅子から赤い車に乗り込もうとしている。周囲には明るい日差しが差し込んでいる。

運転開始から10分で、
赤松パーキングエリアに寄った。

こんなド地元で、パーキングしてる場合ではない。

店内で女性と少年が軽食を楽しんでいる。明るい雰囲気の中で、二人は食べ物を味わう。

ここは昔から、コロッケがおいしい。

歩くのも食べるのも遅い弟を、

「はよ食え!はよ食え!」

急かして、車に乗せた。

予定時刻を大幅に遅れ、
東条湖おもちゃ王国に、着いた。

女性と子供が「TOYS' KINGDOM」のキャラクターに手を振っている。カラフルな背景が印象的。

母が第一声、

「なつかしっ!昔のまんまや!」

と興奮している。

わたしがめちゃめちゃ幼い頃、
家族で何度も訪れてたという過去が判明した。

いまは亡き父が、遊園地が大きらいだったにも関わらず、
車で連れてきてくれたらしい。

幼すぎて、覚えてなかった。
王国民だったんだ、わたし。

「皆さん、いいですか。予定より遅れてるので、一時間後に王国を出ます」

「一時間後!?」

「午後の計画が、ぎょうさんあるんや! ここで巻かなあかんねん!」

わたしは、鬼軍曹の形相で伝えた。

東条湖おもちゃ王国は、まあ、
言うてみれば幼児向けの遊園地である。

それに加えて、この猛烈な暑さ。

遊園地の駐車場で、少年が赤い車の前に立っている。背景にはカラフルな建物が見える。

ちょっと雰囲気だけ味わって、フッフーンって、
鼻歌まじりに帰ることになるやろと思ってたわけ。

赤い帽子をかぶった少年が、案内パンフレットを手に取ろうとしている。周囲には緑が広がる。

弟、めっちゃ、ウキウキしてた。
ユー・エス・ジェイと同じぐらい。
地図をジーッと見つめるほど、王国がお気に召したよう。

やばい。
このままやと、大使に就任するなど言いかねん。

汗だくになりながら、
めぼしいところを、大急ぎで回った。

ジェットコースターに乗り、

ジェットコースターの座席に座る女性と少年。二人とも笑顔で、これからの乗車を楽しみにしている。

パンダにも乗った。

少年がパンダの乗り物に乗っている。後ろには車椅子の女性がスマートフォンで撮影している。

謎の陽気な音楽にも乗った。

女性と男の子が屋外で楽しそうにジャンプしている。背景には遊具が見える。

トライアスロンのように、遊具と遊具を走りまわった。

でも、弟の琴線をいちばん揺さぶったのは、

赤い帽子をかぶった男の子が室内で積み木遊びに集中している。

建築だった。

摩訶不思議なバランスで、唐突に建築してた。
すごいな、きみ。

母が感動していた。

「やっぱりこの子には、大工の血が流れとるんや......」

岸田家の父方の生業は、大工である。
おもちゃ王国にて、弟に大工の才が花開いた。

弟がサクラダファミリア顔負けの果てしない建築をしているうちに、一時間が経過した。
あかん、あかんて。
どんどん、計画が遅れてるって。
事もあろうか、出口を目前にして、

いざ出国!

「行くでーっ! いそげーっ!」

車のメーターが映っており、速度計や燃料計が表示されている。

ガソリンが、ない。
古い車は、燃費が絶望的に悪いのである。

男の子がガソリンスタンドで赤い車に給油している様子。

大工に入れてもらった。
心なしか、仕事が丁寧になってるような。

車内でカーナビをいじっていた母が、
「見て! これ見て! 見て見て見てっ!」
やかましいので、何事かと思ったら。

車の中で女性と男の子がスマートフォンを見ている。

ナビアプリに課金したら、車のアイコンを
犬に変更できるとに気づき、興奮していた。

「梅吉ちゃんや......」

梅吉とは、留守番しているうちの犬である。
よう似とる。

犬シックになった母の涙が、
こぼれる前に課金した。

地図アプリの画面に、動物のキャラクターが車に乗って表示されている。

(C)Mapbox,(C)OpenStreetMap,(C)LY Corporation

かわいい。かわいいけども。
車の速度は、変わらない。

すでに計画から2時間も遅れていた。
陶芸教室の時間がせまっている。

わたしは、完璧な計画の崩壊に、
頭を抱えはじめた。

「あかん、雑貨屋は間に合わんかも......」

さぞ、母は落ち込んでいるだろう。 ふと見ると、

スマートフォンの画面を操作している手。食べ物の情報が表示されている。

なにかを、カーナビアプリで夢中で調べていた。

「奈美ちゃん、このへんで黒豆、買えるらしい」

目が輝いていた。

「えっ、でも......雑貨屋......」

「わたしいま、黒豆が大好っきゃねん。おねがい!」

母の熱望により、急遽、アプリに経由地を追加。
丹波といえば黒豆、
黒豆といえば小田垣商店に来ました。

伝統的な日本家屋の外観。黒い塀と緑の木々が特徴的な景色。

わたしの気持ちは、もうね。
やさぐれてた。
せっかく、喜ばそうと思って、完璧に計画してたのに。

あーあ、もう、どうにでもなーれ、って。

「うわっ......そんな......うそやろ......?」

小田垣商店に入るなり、母の声が裏返った。
黒豆の値札を見て、固まってた。

帽子をかぶった女性が店内で商品を見ている様子。

どうせ観光客向けの、お高いやつでしょ、と思ってたわけ。

「黒豆が、安い」

「えっ?」

「信じられん。スーパーで買うより、ごっつ安い」

女性が店内で商品を抱えている。帽子とサングラスを着用。

思わず、赤子のように抱いていた。
黒豆聖母子像を、ここに建立しよう。

ここからはもう、母、すごかった。
キャーキャー、言うてた。

「見てーっ! 豆しぼりや! わたし豆しぼり大好きやねんっ」

「......しぼり豆やないの?」

「ん?」

「豆しぼりって、ひょっとこが頭に巻いとるやつでは」

豆しぼりが大好きだと、近所で公言して生きてきた母、絶句していた。
もしや、うちに渡されるお土産に、手ぬぐいが多いのって、ひょっとこやと思われてるのかもしれん。

母、大興奮で、豆しぼり、改め、しぼり豆も大量購入。

楽しい、嬉しい、ありがとう、と連呼されたので、
わたしは複雑な気持ちで照れた。

最初は雑貨! 雑貨! って言ってた母が、
まさか豆で、ここまで喜ぶとは。
計画になかった、母の尋常ならざる、
新しい一面。

最近の母、もっぱらの趣味、夜なべして黒豆を煮ることらしい。

週末に実家へ帰ってくる、わたしと弟に、 おいしい黒豆を食べさせたかったそうだ。

伝統的な建物の縁側で笑顔を見せる女性。

さて。
行こうと思ってたお店は、もう、ランチタイムが終わってしまっていた。

たまたま豆屋の奥に、すてきなカフェがあることに気づいた。

ちょうど、ランチも食べられるらしい。

ここはいつも大人気で、ランチは予約もできないし、
入れないだろうと最初からあきらめてたのに。

なぜか、今日、この時間だけ、席があった。
計画には、まるでなかったけど。

こんなラッキー、飛び込むしかない。

多彩な料理が盛られたプレート。色とりどりの食材が並ぶ。

小田垣豆堂の黒豆料理が並ぶプレート「-ZUKUSHI-」
※メニューは季節により異なります

優しさがしみる料理がおいしくて、気がホッと緩んだ。
偶然にも、こんな料理と景色にありつけるとは、

デザートまで堪能して、出発。

......しようと思ったら、また、
母が何やらに釘付けになっている。

帽子をかぶった女性が陶器の器を手に取っている。

「こんな立派な漆器が......1600円て......安すぎる......」

驚愕していた。
母、この店だけで、情緒のすべてを出しきってる。

「えー、みなさん、聞いてください」

母が、わたしと弟を集めて、神妙な顔で言った。

陶器の器を手に取る帽子をかぶった女性。

「これは、買いの一品です」

知らんがな。

いきなり鑑定団と化した母が解説するに、これはおそらく蔵で保管されていた漆器で、かなり状態がいいのだと。こんな掘り出し物は、なかなかお目にかかれないらしい。

いつからそんな、目利きになったのだ。

「昔から好きで、器とか集めとったんやけど、阪神大震災でコナゴナになってもうたんが悲しくてなあ......」

買ってください。
好きなだけ、買ってください。

しこたま漆器もゲッチュして、陶芸教室に向かった。

伝統的な木造の部屋の内部。陶器や家具が並んでいる。

工房「炎丹久窯」にて。

母が車いすのまま、陶芸できるように、
お手製のスロープやろくろ台で迎えてくださった。

女性が陶芸をしている。粘土を手で成形中。

「......お母さん、めっちゃ指が踊ってますね」と工房のスタッフ。

「ほ、本当ですか?」

「器が好きな人の指の動きをしてらっしゃるわ」

「好きですう! 大好きなんですう!」

母、筋の良さを褒められ、ノリノリで土をこねる。

裁縫も絵画も不器用すぎて、なにひとつ、
続けられなかった母の才能もここで開花した。

陶芸用のろくろの上に乗った粘土の器。

弟のほうも、一生懸命に、作っていた。

「それ、なにつくってんの」

弟に聞いてみた。

「あんばーぐ」

まさかの、ハンバーグ専用皿。
多様性が叫ばれるこの時代に、まさかの用途一本槍の皿。

子供が粘土を使って作品を作成中。真剣な表情で手を動かし、形を整えている。

あまりに熱中しすぎて、気がつけば、夕方になっていた。
立ち寄るつもりだった雑貨屋は、
どこもかしこも、閉まっていた。

......と思いきや、ナビで調べると、
「丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷」なら、
まだ開いていた。

ほかの工房で作られた陶器たちが、
たくさん並んでいるらしい。

あと、15分で閉館やけど。

女性が車椅子に乗った人を坂道でサポートしながら押している。周囲には緑が広がっている。

「いそげーっ!フィナーレやーっ!」

着いたはいいが、立ち尽くしてしまった。

建物内の案内板が展示されており、訪問者が施設内の場所を確認できるようになっている。

多い。あまりにも、展示が多い。
50軒を越える工房のブースが、
むちゃくちゃオシャレにひしめいている。

ええ、どうしよ。もう15分しかないで......

絶望していると、母は真っ先に車椅子を走らせ、躍り出た。

「うちに必要なんは、湯呑みや! 湯呑みを探すでえっ!」

ビュンッ!

わたしたち以外に客がいないのを良いことに、
母が風を切り、車いすをこぐ。
超高速。こんな速い母、見たことない。

「これは艶がちょっと強い」
「両口やなくて片口が今はアツいねん」

母は、50軒のブースを、ブツブツ独り言をいいながら、
ものすごいスピードで、横目に見てまわっている。

「これや!これはええ仕事や!」

駆け抜けた先で、母はお宝の湯呑みをゲッチュした。
後から知ったが、マニアックな雑誌でも、
取り上げられている一品だった。

極限状態で、母の目利きの才能まで開花した。

陶器が並んだ伝統的な日本の店内。棚には様々な形や色の器が美しく配置されている。

閉館のアナウンスとともに、
家族旅行は、幕を閉じた。

最初は、完璧な計画のはずだった。

終わってみれば、計画の半分も、
うまくいかなかった。

計画が崩壊していくほど、
わたしは焦って、落ち込んだけど。

ままならない旅行のおかげで、
弟は大工になったし、母は目利きになった。
思いもよらぬところで、才能は花開くものだ。

どんな土壇場でも、偶然でも、
ちゃんと楽しむことができるふたりは、
すごいなと思った。ありがたいなと思った。

ボロボロの計画も、
いつか振り返って、笑えるお土産になった。

今回はわたしが家族旅行を計画したけど、
昔は父の役目だった。

父も、こんな気持ちだったんだろうな。

せっかくの計画が崩壊して、
怒ったり、悔しがったりしながらも、
助けるはずの家族に、助けられてたんだろうな。

家族旅行は、計画する人がいないと始まらない。

でも、計画がどうなったとて思い出にするという、
楽しむ人がいないと終わらない。

「なあ、夜ご飯どうする?」

「どうしよか」

「せっかくやし、知らんお店に入ってみる?」

「わたし、ひらめいてんけど」

スマートフォンの画面に焼肉店の情報が表示され、料理の写真や評価が確認できる。

カーナビアプリで検索した地元の焼き肉店を家族に提案する

「迷ったら、地元の店が間違いないんでは?」

親の顔ほど見た店に、三人で入った。

車椅子の女性と男性がレストランの入口に向かっている。建物の外観はモダンなデザイン。

「今日は計画通りに回れんくて、お金が余ったし......」

テーブルに並べられた美味しそうな肉料理を前に、女性たちが驚きと喜びの表情を見せている。

たらふく焼き肉をしたあと、
スーパーで買い物をして、
帰ったのであった。

うちの家族は、
日常に帰るのが早い。

Yahoo!カーナビは今年、10周年を迎えました。
感謝を込めて、お得なキャンペーンや特別コンテンツをたくさんご用意しましたのでぜひご覧ください。今後も、みなさんのドライブを快適にアップグレードできるよう、使いやすい機能を提供してまいります。引き続き、Yahoo!カーナビをよろしくお願いします。

Yahoo!カーナビ10周年の広告。特別企画やキャンペーンの案内があり、今すぐチェックのボタンがある。

取材日:2024年7月26日
※本記事の内容は取材日時点のものです

「LINEヤフー ストーリー」のロゴ
LINEヤフーストーリーについて
みなさんの日常を、もっと便利でワクワクするものに。
コーポレートブログ「LINEヤフーストーリー」では、WOWや!を生み出すためのたくさんの挑戦と、その背景にある想いを届けていきます。
Page top