「ユーザー・広告主・パートナーを守る」Yahoo!広告のアドフラウド対策

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ユーザーや広告主を守るアドフラウド対策を示す画像。手がキーボードを打つ様子と広告のイメージが重なっている。

※この記事は2021年12月10日に行ったインタビュー記事を再編集したものです。

近年、広告主からの報酬を増やす目的で、アプリケーションやプログラムなどを使ってクリックやインプレッションなどを作為的に増やす「無効トラフィック」が問題になっています。そのなかで、特に悪質な手法で広告のインプレッションやクリックを稼ぎ、不正に広告費を搾取する「アドフラウド(広告詐欺)」があります。

LINEヤフー(当時 ヤフー)は、インターネットユーザー・広告主・パートナーに満足いただけるインターネット広告の提供を目指して、透明性や品質向上に関するさまざまな取り組みを進めています。今回は、Yahoo!広告のアドフラウド対策について、担当者に聞きました。

男性がインタビュー中の様子。背景には窓があり、手を広げて話している。
齋藤 裕也(さいとう ゆうや)
2011年ヤフー入社。Yahoo!広告における広告の不正をデータサイエンスの観点から検出・排除するための研究開発を担当。
男性のポートレート写真。明るい表情で、背景にはオフィスの照明が見える。
一条 裕仁(いちじょう あきひと)
2001年ヤフー入社。ヤフオク!の開発、Yahoo!検索の企画などを経て、一度退職後、2012年にヤフーに再入社。ヤフオク!のユニットマネージャー、開発本部長などを経て、現在はメディア統括本部トラスト&セーフティ本部長。(2024年現在は、LINEヤフー株式会社経営企画・事業開発統括本部トラスト&セーフティ本部長)

アドフラウド(広告詐欺)とは

広告掲載の仕組みを示す図。広告主、メディア、ユーザーの関係とそれぞれの目的が説明されている。

一条:
「自社のサービスに価値を感じ使ってくれる可能性が高い人に届けられる」プラットフォームと取引したいというのが、広告主の強いニーズだと考えています。ですが、「広告出稿をお願いします」と依頼したあとは、実際に誰にその広告を見てもらえているのか把握することは難しいです。また、確認する場合は、かなりの労力が必要になったり、費用をかけて分析ツールを導入する必要があったりという課題があります。

広告主は「自分のサービスを使ってもらえる可能性があるお客さまに広告を届けたい」
でも、「本当にそのお客さまに広告を見てもらえているのか?」確認することは難しい

広告主のメリットにならないアクセスをしっかり防ぐことが必要

アドフラウド(広告詐欺)は悪質なトラフィック

無効なトラフィックの種類を示す図。悪意のないクローラーやボットと、悪意あるプログラムや人間を比較している。

Invalid Traffic(IVT)と呼ばれる、人間ではない機械的なトラフィックや、人間であったとしても、その広告効果がない無効なトラフィックがあります。その中でも、悪意を持った詐欺的な行為による悪質なトラフィックを「アドフラウド(広告詐欺)」と呼んでいます。ここでいう詐欺とは、実際には広告による効果がないのに、効果があったように見せかけて広告費用に対する成約件数や広告効果などを不正に水増しする行為のことです。

Invalid Traffic(無効なトラフィック)とは

  • 人間ではない機械的なトラフィック
  • 人間であっても、広告効果のないトラフィック
  • 詐欺的な行為による悪質なトラフィック=アドフラウド(広告詐欺)

Invalid Trafficを発生させるわかりやすい例は、インターネット上のサイトや画像などの情報を取得し、自動的に検索データベースを作成するための巡回プログラム(クローラー)です。これは悪意をもったものではなく、ページの中に含まれる情報を拾う目的のプログラムです。
このようなアクセスは人が見ておらず広告効果がないのに広告が表示されたことになってしまうため、無効にするべきものです。

私たちは、広告を使って悪意を持って行うアドフラウドはもちろんのこと、悪意の有無にかかわらず、広告を出す側の方にとってメリットのないアクセスを排除することに取り組んでいます。 特に、悪意が含まれているアドフラウドを取り除きたいと考えて対策を続けています。悪意を持った人がもうかると、広告詐欺を行う人が減らないですし、そのような人にお金が渡ることを一番避けたいからです。

アドフラウドにはいくつかのパターンがあります。

1)サイトに広告を載せている人の自作自演

一条:
自分が運営しているサイトに広告を掲載している人が自作自演でクリックを発生させ、お金をもうけようとするものです。ただ、この行為はかなりのクリック数を生まないとそれなりのお金にならないため、その行為を発覚しないように実施するのはかなり大変です。
また、自作自演していることがわかった場合、パートナーの権利が奪われるのはもちろん、返金することにもなりリスクが高いため、実施する人は割合としては少ないと思います。

フードを被った二人がパソコンを操作しているイラスト。暗い背景で、何かをクリックしている様子。

2)第三者からトラフィックを買う

一条:
自作自演以上に横行しているのが、広告出稿を請け負っている担当者が、偽りの広告効果をうたって出稿を請け負い、第三者から大量のトラフィックを買う行為です。
担当者が所属する企業などはその行為を把握しておらず、禁止もしていた、というケースもあり得るので、突き止めるのは非常に難しいです。

齋藤:
具体例をあげると、大量の不正クリックを請け負う業者が過去に摘発されたことがあります。「クリックファーム」などといわれていますが、Googleが、不正クリックを発注していた媒体社を訴えて勝訴(※1)したというものです。また、中国では携帯電話を横に大量に並べて、人がどんどんクリックしていくという不正(※2)がニュースになったこともありました。
※1 参考)Google Wins Click-Fraud Case vs Auction Experts
India's secret army of online ad 'clickers'
※2 参考)Chinese Woman Using Multiple iPhones To Manipulate Apple Store App Rankings

第三者からのトラフィック購入を示す図。悪質なトラフィックの購入プロセスが描かれている。

3)ウイルスやプログラムを仕込んでアクセスを発生させる

一条:
また、スマホなどにウイルスや、大量のアクセスをするような変な動きをするプログラムを仕込むことで、世界各国から急にアクセスが来るようにしてクリックを発生させる、というものもあります。

アドフラウドの関係者は、次々と新しい手段で不正を行ってきます。それらに打ち勝つためには、自社の力だけで戦い続けるのではなく、この分野の専門的なノウハウを持った外部のパートナー企業と一緒に戦うことが必要だと考えました。

ウイルスやソフトを使ったアクセス生成を示す図。ハッカーが感染したPCを利用して無効なトラフィックを発生させる。

Yahoo!広告のアドフラウド対策

齋藤:
こうした考えの元、インターネット広告取引で発生するトラフィックの品質や掲載先の品質などの解析サービスを提供するDoubleVerifyと提携しました。(2021年12月 当時のヤフーがDoubleVerifyと提携しました。)
これにより、広告主のみなさまは特別な手続きを行うことなく、アドフラウド対策とブランドセーフティ制御が標準実装された環境で「Yahoo!広告 ディスプレイ広告」を利用いただけます。
自社だけの努力だけではなく、第三者の力もお借りすることで、広告プラットフォームの品質をしっかり担保して、より透明性が高く中立性を持った取り組みを進められると判断しました。

広告リクエストの流れを示す図。Yahoo!広告サーバーとDoubleVerifyでの不正判定プロセスが描かれている。

齋藤:
私たちは、DoubleVerifyのシステムと連携して、図の一番右にある不正判定を行っています。これは、アドサーバーで発生した実績を基に、それが正しいトラフィックだったのか、不正なトラフィックだったのかを分析し、以後発生する同様の無効なトラフィックをどうやって抽出するかを試行錯誤するというものです。

その際にYahoo!広告にとって強みとなるのが、自社サービス(旧ヤフーサービス)のユーザーデータを持っていることです。不正者が「人間の動きに偽装した」不正クリックを発生させたとしても、私たちは本当のユーザーのデータと比較して、正しいトラフィックかどうか判断できるからです。

不正クリックを発生させようとする動きは人を模した行動をするため、1回のクリックだけを見ると人間の動きに偽装したトラフィックなのか、正しいトラフィックなのかがわからないこともあります。ですが、そのサイト内でユーザーがどう動くかをモデル化して、それが一般的なモデルとどう重なるのか、どれだけ乖離(かいり)しているのかを見ることで、確率的にあり得ないというラインが引けます。ただ、悪いトラフィックの中に一般のユーザーも含まれてしまうことがあるため、その精度をどこまで高められるかチャレンジしています。

男性がインタビュー中の様子。背景には窓があり、手を広げて話している。

一条:
これまでの社内での判定に加えてDoubleVerifyの仕組みを使うことで、不正なトラフィックをほぼリアルタイムで判定できるようになります。また、グローバル規模のトラフィック量を元に作られた不正検知モデルによる判定も可能になり、それに自社(旧ヤフー)からしか見えない特徴を掛け合わせることで、より確度の高い不正検知の仕組みを作っていきます。

今回の取り組みにおける役割分担

LINEヤフー(当時 ヤフー):ユーザーのデータを元に不正判定を行う
DoubleVerify:不正トラフィックかどうかをほぼリアルタイムに判定

今後の展望

齋藤:
DoubleVerifyさんのシステムを導入することで、Yahoo!広告における不正対策がより強化されますし、今後もより良いものになるよう機能を磨き込んでいきます。目標は全体が強固になることなので、私たちがやるべきものとDoubleVerifyさんにお任せするものをしっかりすみ分けて取り組んでいきたいと思っています。

一条:
アドフラウド対策は、新しい手法に対して「盾」をつくり続ける必要がある領域だと思っています。これまでは齋藤のチームを中心にしっかり対策をしてもらってきましたが、これからはさらにスピード感を持って盾を強化していくことができます。

さきほどお話したように、この盾で本当に不正なトラフィックをブロックできているか、正しいトラフィックまでブロックし過ぎてないか判断する精度も高めていく必要があります。DoubleVerifyさんと一緒に不正検知の仕組みをしっかりと磨き込んでいき、精度が高い不正検知の仕組みをつくり上げることで、最終的には「安全・安心だからLINEヤフーを選んだ」と言っていただける広告主を増やしていきたいと思います。

男性がインタビュー中の様子。背景には窓があり、手を組んで話している。

2024年現在

こちらのインタビューは2021年当時、DoubleVerify社とのシステム連携開始時に関係者にインタビューを行った際の記事です。システム連携開始後から2024年現在まで、DoubleVerify社のPre-bidシステムによるリアルタイム判定によるURL単位のブロックなども実施しており、より精度の高い不正検知の仕組みが出来上がっております。
なお、取り組みについての詳細は、以下ページにてご紹介していますのであわせてご覧ください。
今こそ知っておきたい アドフラウドとYahoo!広告の対策

関連リンク

※本記事は2021年12月10日に公開したYahoo! JAPAN Corporate Blogの記事に加筆修正を加えたものです

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