2024年6月18日、ベルサール高田馬場にて、LINEヤフー株式会社の第29回定時株主総会を開催しました。今年も、会場出席だけでなく、専用ウェブサイトを通じて議決権行使や質問などが可能なインターネット出席も併用されました。
株主総会では代表取締役社長CEOの出澤剛が議長を務め、報告事項と決議事項の説明、2024年度経営方針に関するプレゼンテーションと、質疑応答も実施されました。また、取締役選任に関する2つの議案について、決議がいずれも可決されました。
株主総会のダイジェストと、刷新された取締役ボードメンバーからのメッセージをお届けします。
2023年10月1日、グループ内再編によりLINEヤフーが誕生しました。再編後、コスト最適化や、選択と集中を通じた事業の効率化を進めてきました。
また、LINEとYahoo! JAPANのアカウント連携やLYPプレミアムなど、クロスユースの促進やユーザー体験の向上に向けた取り組みを実施しています。これらの施策を通じて、2024年度以降の再成長に向けた基盤作りを推進してきました。
全社の業績については、売上収益は1兆8,146億円と前年度比8.5%の増収を達成しました。調整後EBITDAは、コスト最適化と、選択と集中を推し進めた結果、4,149億円と前年度比で24.7%の大幅な増益となりました。
2024年度の方針として、以下3つの柱を掲げています。
出澤はあらためて、不正アクセスによる情報漏えい事案について、謝罪し、「委託先企業のPCがマルウェアに感染したことなどをきっかけに、第三者による不正アクセスが発生し、ユーザー情報や取引先情報、従業員などの個人データが漏えいしました」と、概要を説明しました。
再発防止に向けた取り組みについて、緊急性の高い再発防止策は完了しています。
今回の発生要因として、NAVER Cloud社と旧LINE社の認証基盤が共通化されていたこと、旧LINE環境におけるセキュリティ管理が不十分だったことがあげられます。
これに対し、安全管理措置対策の強化に加え、該当システムの分離を2024年度中に完了すべく推進しています。
さらに、LINEヤフー子会社は2026年中の分離完了を予定していますが、さらなる前倒しをすべく計画策定中です。
サービス・事業領域においても、ほぼすべての国内向けサービス・事業領域でのNAVER社との委託関係を終了し、内製化などを推進します。
また、社長直下に「セキュリティガバナンス委員会」、親会社のソフトバンク社を含む「グループCISO Boad」を設置しました。セキュリティガバナンス委員会では、出澤自身が委員長を務め、議論を行っています。全社一丸となってセキュリティ強化に向け推進していきます。
出澤はコーポレートガバナンス強化のために、経営体制の見直しを今回の株主総会の議題としていることを説明しました。
「独立社外取締役を1名追加し、社外役員を過半数にすることで、内部の理論にとらわれない多様な視点から方針決定を行い、ガバナンス強化を図ることが目的」と述べました。また、「慎、桶谷は、取締役からは退任し、CPO、CSOとして、事業推進に専念する体制」にしたいと説明しました。
さらに、「新任の社外取締役候補者の髙橋氏は、公認会計士としての業務執行経験に加えて、複数企業で社外役員を務めており、経営に参画いただくことで、当社ガバナンス強化に資する」と述べました。
2024年度のプロダクト強化に関して、LYPプレミアム、LINEリニューアル、Yahoo! JAPANアプリリニューアルによって、サービスの起点を強化します。
また、生成AIのサービス実装も一層推進し、検索や広告、コマース、PayPayなど主要事業の成長につなげていきます。
2023年2月以降、入会キャンペーンの効果もあり、会員数は大幅に増加し、2,444万人となりました(2024年3月時点)。
今後も、特典の追加を予定しており、LYPプレミアムの魅力をさらに高めることで、有料会員数の拡大を図ります。LYPプレミアムをサービス連携の基盤として、さらなる事業成長を目指していきます。
LINEのリニューアルでは、主に以下の変更を行います。
ホームタブ:ニュースやコンテンツが集まるポータルにリニューアルし、LINEユーザーの検索への流入を図ります。
ショッピングタブ:新たに、購入体験をできるタブを追加します。
プレイスタブ:ガイドマップメディアとなるタブを追加します。
このリニューアルを通じて、LINEの利便性向上と、検索やコマースなど、グループ内重要サービスのクロスユースを促進します。
2024年度上期中に、Yahoo! JAPANアプリもリニューアルし、ユーザーニーズにあったタブ構成へと刷新し、以下のタブを新設します。
トレンドタブ:今話題になっている検索ワードがわかります。
フォロータブ:ユーザー自身が興味のある情報を集約して提供します。
アシストタブ:個々人の生活や行動にまつわる情報を提供します。
これらの新機能によって、ユーザーの利便性を向上し、サービスのさらなる活性化を目指します。
2024年度も昨年度のコスト最適化の方針は継続しつつ、最優先事項であるセキュリティ対策と、今後の成長の要となるプロダクト強化へは規律ある投資を行います。
セキュリティ対策には年間150億円程度を投下し、しっかり進めていきます。
出澤は最後に、「2023年度は、事業の効率化などにより増収増益を継続してきましたが、低調な株価推移となっておりますのは、セキュリティインシデントによる行政指導などにより、今日まで十分に市場の不安を拭い去ることができなかった結果と、非常に重く受け止めています」と説明しました。
その上で、「2024年度は、新しい経営体制のもと、ガバナンスを強化し、セキュリティ対策を最優先に取り組むとともに、プロダクト強化、事業成長もしっかり推進し、株主価値の回復・向上に邁進します」と結びました。
その後、質疑応答を経て、取締役選任の件に関する2つの議案について、採決が行われて、いずれも原案通り、承認・可決されました。
左から、社内取締役の川邊、出澤、社外取締役の臼見、蓮見、國廣、髙橋。
株主総会終了後、正式に発足した新たな経営体制の取締役ボードメンバーから、LINEヤフー社員に向けてメッセージ動画の取材がありました。一部抜粋してコメントをご紹介します。
川邊健太郎(かわべけんたろう):代表取締役会長
株主総会では主に「業績は上がっているのに、なぜ株価が上がらないのか」「セキュリティ対応をしっかりやるように」「個別のサービスに『WOW』や『!』をどうやったら植え付けられるのか」といった質問や指摘をいただきました。
これらを厳粛に受け止め、今後の経営に反映させていきたいと思います。今回の株主総会の趣旨である「経営と執行の分離」をしっかり実行し、まずはセキュリティ対応を確実に行った上で、社員とともに良いプロダクトを作り上げていきたいと思います。
臼見好生(うすみよしお):社外取締役(独立役員)・常勤監査等委員
常勤の監査等委員として6年目を迎えました。これまではなかなか現場に入る機会が少なかったのですが、多くの人に会うことが好きですし、LINEヤフーの社員も非常に好きです。今後は積極的に現場に足を運んで、皆さんのモチベーションが上がるように努めてまいります。
蓮見麻衣子(はすみまいこ):社外取締役(独立役員)・監査等委員
2021年に就任してから、3年がたちました。この期間は非常に多くのことがあり、月日の流れを長く感じています。
先月発表された決算では素晴らしい結果が出ており、会社の底力を実感しています。ぜひこの底力を新しいサービス創出に活かし、ユーザーをよりワクワクさせ、社会に愛されるライフプラットフォーマーとして、さらに成長していってほしいと思います。私も監査等委員としてサポートを続けてまいりたいと思います。
國廣正(くにひろただし):社外取締役(独立役員)・監査等委員
私も蓮見さんと同期で、4年目に入ります。これまで、LINEヤフーはさまざま問題に直面し、社員の皆さんも苦しい日々を送ってきたかと思います。
しかし、これからは前を向いて、ぜひ元気に進んでいってほしいと思います。重要な点など押さえるところはしっかり押さえるべきです。しかし、LINEヤフーは本来、将来に向けて新しいプロダクトを次々生み出していく企業で、そうした社員の集まりだと信じています。私はそのような皆さんを応援する立場ですので、どうぞよろしくお願いします。
髙橋祐子(たかはしゆうこ):社外取締役(独立役員)・新任の監査等委員
ボードメンバーの一員として経営に参画できることを大変光栄に感じていますし、とてもワクワクしています。LINEヤフー社の掲げるミッションを実現するのは、尽きることのないエキサイティングなチャレンジの連続だと思います。このチャレンジをより高度なレベルで実現するために、マネージメントチームの皆さんをしっかりサポートし、全てのステークホルダーから信頼をいただけるガバナンスの構築に尽力してまいります。
出澤剛(いでざわたけし):代表取締役社長CEO
新しく髙橋さんを迎えて、このボードメンバーで経営をしっかり進めていきます。ご存じのとおり、慎さんや桶谷さんはCPO、CSOとして事業執行により専念し、積極的にサービスを創出していきます。
「経営と執行の分離」を行い、ガバナンス強化と、事業推進、その両輪で強力に回していく体制が整いました。みんなで一緒にさらに良い会社、良いサービスをつくっていきましょう。引き続きよろしくお願いします。
決議内容などの株主総会関連資料については、 こちらからご覧いただけます