年々早まるラン活事情
何を重視? ランドセル選びの今

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「年々早まるラン活事情 何を重視? ランドセル選びの今」というテキストが中央に配置され、右下に上昇するグラフのアイコンが描かれています。左下には「LINEヤフー ビッグデータレポート」と記載されています。

こんにちは、LINEヤフービッグデータレポートチームです。

突然ですが「ラン活」という言葉をご存じでしょうか? 小学生の子育て経験がある方は知っている人も多い単語だと思いますが、「小学校に入学する子どものためにランドセルを購入する活動」のことを指します。

ここで「ラン活」をしたことがない人(私含む)からすれば、「ランドセルなんて、小学校入学の直前に買うだけでしょ?」と思ったかもしれません。しかし、どうやらそうではないようです。

では、具体的にどういったことをするのでしょうか? 一般的にいわれているラン活とは以下のような活動を行うようです。

【ラン活とは】

  • 情報収集: ランドセルのブランドやデザイン、価格帯を調べる。
  • 試着: 子どもに実際に背負わせてフィット感を確認。
  • 比較検討: 複数の候補を比較し、デザインや機能性、価格を考慮。
  • 購入決定: 家族で相談し、最適なランドセルを選んで購入。

これら一連の流れを行うわけですが、このラン活に近年ある動きがみられるということで話題になっています。それが活動時期の前倒し化です。

ラン活の"前倒し"はどこまで進んだ?

実際にどのぐらい活動時期が早くなってきているのでしょうか? 2016年~2025年5月までの「ラン活」の検索数推移波形を比較してみましょう。

【図1】「ラン活」の検索数推移(2016年から週次)

この図は、2016年から2025年にかけての「ラン活」の検索数推移を示しています。年々検索のピークが前倒しになっており、2020年には4月がピークとなり、2025年には4月初週にピークを迎えています。これは、ランドセル選びの時期が子供の小学校入学式の1年前に早まっていることを反映しています。

これを見ると、「ラン活」の検索数のピークが徐々に前倒しになってきていることが一目瞭然です。2016年頃には7月ごろにピークを迎えていた検索数が年々早くなり、2020年には4月がピークとなり、2025年には4月の初週がピークとなっています。
現在ではランドセルの新製品が1~2月に発表され、4月頃から予約が始まるため、ランドセルを決めるタイミングは、子供の小学校入学式の1年前の4月頃というのが今の常識となりつつあるようです。ただ、前倒し傾向に関してはここ5年ほど大きく変わっておらず、学年における年度のタイミングから考えても、4月より早くなることは難しいのかもしれません。

では、ランドセル選びにもトレンドがあるのでしょうか? それについても、検索キーワードから探ってみたいと思います。
2016年から各年ごとに「ランドセル」とともに検索された第二キーワードを抽出し、各年におけるニーズの傾向の違いを見てみました。年代の近くにあるキーワードが、基本的にはその年におけるニーズが高かったワードとなります。

【図2】2016年以降の「ランドセル」第二ワードのニーズ変化(対応分析)

この図は、2016年以降の「ランドセル」とともに検索された第二ワードのニーズ変化を示しています。各年のニーズが視覚化され、2016年にはオーダーや予約が多く、2022年以降は「軽い」や「かわいい」といったトレンドが見られます。これらの変化は、消費者のランドセル選びにおける重視ポイントの変遷を示しています。特に、デザイン性や機能性が求められるようになっています。

ちょうど左上から反時計回りに右上まで年代が順に並ぶような配置となりました。2016年ごろは、オーダーや予約、ショールームといったランドセルを手に入れるための活動が目立っています。色のトレンドとしては、ブラック、黒、ブラウンといった昔ながらの落ち着いたカラーが集まっています。2020年ごろには、色のバリエーションが多く見られるとともに、おしゃれが重視されている傾向が見られます。
2022年以降は、「軽い」や「かわいい」といったトレンドが見られるとともに、年々暑くなる気象の変化に合わせて「保冷」というワードも現れるようになっています。

それでは、もう少し細かくデータを見てみましょう。2016年から各年の「ランドセル 〇〇」検索数上位1000件のキーワードを、その意図に応じてカテゴリ分けを行い、それぞれの検索人数を集計しました。そのボリュームの変化を構成割合で見てみます。

【図3】「ランドセル 〇〇」検索キーワードのカテゴリ別検索人数構成割合

この図は「ランドセル 〇〇」検索キーワードのカテゴリ別検索人数構成割合を示しており、特に「リメイク」カテゴリの拡大が目立ちます。コロナ禍以降にボリュームが増加しており、ランドセルの再利用やデザイン改変への関心が高まっていることがわかります。消費者の環境意識の高まりが背景にあると考えられます。

やはり、一番大きな動きとして目立つのは「リメイク」カテゴリの拡大です。特に、コロナ禍の始まりである2020年からボリュームが増加しています。大きなニーズとして、使い終わった思い出のランドセルを財布やポーチなどにリメイクし、再び使えるようにするという加工が人気のようです。
また、使い勝手の部分も広がってきています。これは、軽さや暑さ対策といった体の負担を軽減するためのキーワードが多く見られることから、昔よりも子供の体を気遣う傾向が強くなってきているのかもしれません。

ランドセルの色の選択に見る時代の移り変わり

では、特定のカテゴリをより詳しくみてみましょう。まずは「色」についてです。色を10の系統に分けて、それぞれの検索人数の構成割合の変化を抽出してみました。

【図4】色関連キーワードの検索人数構成割合

この図は色関連キーワードの検索人数構成割合を示しており、茶系の割合が減少し、白・ベージュ系や黄色・オレンジ系が増加しています。色の多様化が進んでいることが示され、消費者の好みがより個性的で多様化していることを表しています。

まず目立つのは、茶系(ブラウンやキャメルなど)の割合が年々減少していることです。一方で、代わりに増加しているのが白・ベージュ系や黄色・オレンジ系といったカラーです。また、ランドセルといえば定番の黒や赤といった色は、構成割合上ほぼ変化がないといえます。その結果、2016年と比較して2024年では明らかに色の多様化が進んでいることが伺える結果となりました。

"重いランドセル"はもう昔? 体への負担への配慮が急増

さらに「機能・使い勝手」に関するカテゴリ構成の変化も時代によっての移り変わりがあるのでしょうか? そちらも見ていきたいと思います。

【図5】機能・使い勝手関連キーワードの検索人数構成割合

この図は機能・使い勝手関連キーワードの検索人数構成割合を示しており、軽量化や素材に関する検索が増加しています。子供の体に負担のないランドセル選びが重要視されており、特に軽量で耐久性のある素材が求められています。また、実用性とデザイン性のバランスを重視する傾向が見られます。

こちらも大きな変化が起きているカテゴリがあり、それが軽量化・素材です。特に軽さに関する検索は年々増えてきており、快適性・負担軽減のカテゴリの増加と合わせて、ランドセル選びにおいて子供の体に負担のないものを選ぶことが、重要な基準となる傾向が鮮明になってきているようです。一方で、付属品や収納に関する関心はやや下がりつつあるのかもしれません。

ランリュックと暑さ対策に見る、通学の自由化と気候変動

最後に、ランドセルを分析する中で発見したいくつかのトレンドの変化を感じる検索キーワードを紹介したいと思います。
一つ目は「ランリュック」です。

【図6】「ランリュック」の検索数推移(2014年からの年次)

この図は「ランリュック」の検索数推移を示しており、ランドセルとリュックサックの長所を組み合わせた通学かばんへの関心が年々高まっています。特に、機能性と快適性を兼ね備えた製品への需要が増加しています。

「ランリュック」とは、ランドセルとリュックサックの長所を組み合わせた、小学生向けの通学かばんのことです。軽くて安価であり、デザインの自由度も高いということで、年々関心が高まっているようです。また、学校側でも通学かばんの自由化が進んでおり、その点も関心が拡大している要因となっているようです。

そして、もう一つのトレンドとしては、子供の暑さ対策に関する検索キーワードです。

【図7】ランドセルの暑さ対策関連の検索数推移(2014年からの年次)

この図はランドセルの暑さ対策関連の検索数推移を示しており、2020年以降に急激に増加しています。背中に保冷剤を入れられるランドセルへの関心が高まっており、特に夏場の暑さ対策が重要視されています。

ランドセルの暑さ対策に関する検索キーワードは、じわじわというよりも2020年を境に急激に伸びています。最近では、背中に保冷剤などを入れられるランドセルへの関心が高まっているようです。猛暑日が毎年のようにどこかで記録を更新する今の時代において、これらの対策は非常に優先度が高くなってきています。また、これに関連して、「子供 日傘」といった検索キーワードも年々増加しています。

最後に

これまでの分析から、時代によるランドセルニーズの変化がいくつか見えてきました。

  • ランドセル選びが"イベント"から"戦略的な準備"へと変化
  • 性別や慣習に縛られない「その子らしさ」重視の傾向が加速
  • 子どもの身体的負担や暑さへの配慮が"必須条件"に
  • モノを"使い切る"ではなく"思い出として再生"する価値観が浸透
  • 学校の持ち物にも"自由と多様性"が広がっている

ランドセル選び一つをとっても、「子ども中心」「快適性」「多様性」「持続可能性」という、今の社会全体の価値観の変化がくっきりと映し出されています。子供の身体や気候変動への配慮、そしてモノの"その後"を考える姿勢。ランドセルをめぐる小さな選択の変化の中にも、時代や社会背景、人々の考え方の変化が映し出された興味深い示唆を得ることができたのではないでしょうか。

LINEヤフービッグデータレポートは、これからも社会課題の解決に役立つデータ活用事例を提供してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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