ビッグデータで見る能登半島地震

防災・安全
ビッグデータで見る能登半島地震。背景は白で、左側に黒い文字でタイトルが記載されています。右下には防災関連を示すヘルメットと非常用バッグの簡素なイラストがあります。

こんにちは。LINEヤフービッグデータレポートチームです。
2024年1月1日16時10分、能登半島地震が起こり、甚大な被害が発生しました。全ての被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。今回は、その時の状況をビッグデータでご報告したいと思います。いまだ多くの人々が復興に向けて尽力されている中、私たちにできることは何か、考える一助になれば幸いです。

被災地からのアクセスがどう変化したか

まずはインターネット利用の変化です。今回、被害の大きかった石川県・富山県・新潟県・福井県の4県と、その他の地域のページビュー(以下、PV)の変化を見てみましょう。図1は12/18~12/24の週を基準週とし、同曜日でのPV変化を表したグラフです。震災直後、4県でPVが増えているように見えます。デバイス別に割ってみると、4県ではスマートフォンによるアクセスが増えていることがわかります。なお、PCでは特に変化が見られないようです(図2)。

(図1)日別PVの変化

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数、全デバイス、YIDログイン)

石川県、富山県、新潟県、福井県の日別PVとその他都道府県の日別PVを指数化し、日別変化を比較した折線グラフ。対象は「4県(石川、富山、新潟、福井)」と「他都道府県」で、縦軸はアクセス指数(100を基準)を、横軸は日付を示している。4県の実線は、年始(2024年1月1日前後)にかけて急激に上昇し、最大で約150まで達している。ピークの後も100〜150の間で上下を繰り返しており、年始以降しばらく高い水準を保っている。一方、他都道府県の破線はやや緩やかな上昇を見せるものの、120前後を上限に比較的落ち着いた推移をしている。全体として、4県では年始以降にアクセスが顕著に増加したことが確認できる。

資料:Yahoo! JAPAN PV

(図2)デバイス別のPV変化

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数、YIDログイン)

石川県、富山県、新潟県、福井県の日別PVとその他都道府県の日別PVをスマホ、PCのデバイス別に指数化し、日別変化を比較した折線グラフ。左側はスマホのアクセスデータ、右側はPCのアクセスデータを表しており、縦軸はアクセス数を指数化した値で、横軸は日付となっている。スマホのグラフでは、「被災4県」と「その他」の2系列が描かれており、「被災4県」の方が年始(1月1日前後)にかけて急激にアクセスが増加し、ピークは180を超えている。その後は徐々に減少し、1月下旬には安定して100前後に戻っている。一方、「その他」の地域では大きな変動はなく、概ね100前後で推移している。PCのグラフでは、両地域ともアクセス数の変動が小さく、やや年始に上昇が見られるものの、スマホと比べて顕著な差は見られない。

資料:Yahoo! JAPAN PV

しかし、今回のようなケースでは、同じ県内でも地域によって傾向は大きく異なるはずです。石川県内のいくつかのエリアをピックアップしてみると、被害状況が比較的軽度であった金沢市ではスマホのPVが増えているのに対し、より被害が甚大だった地域ではスマホ、PCともに大きく落ち込んでおり、1月末時点でも元の水準には戻っていませんでした。特にPCでは大きく減少しています。
なお、比較的軽度だったとは言え、金沢市でも一部の地域では大きな被害がありました。もっと細かく見れば同市内であっても傾向には差異があるはずです。本データはあくまでも市全体を見たものである旨、ご了承ください。

(図3)デバイス別のPV変化(石川県内)

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数、YIDログイン)

石川県内の市町村金沢市、珠洲市、輪島市、凰珠郡穴水町、凰珠郡能登町、七尾市も日別PVをスマホ、PC別に指数化し、日別変化を比較した折線グラフ。左側はスマホ、右側はPCのアクセスデータを表している。対象となる市町村は、金沢市、珠洲市、輪島市、鳳珠郡穴水町、鳳珠郡能登町、七尾市の6つで、それぞれ異なる記号と線のスタイルで示されている。特に注目されるのは、金沢市(破線)で、スマホでは1月1日直後にアクセスが急増し、200近いピークを記録している。他の市町村、特に珠洲市や輪島市など被災地に近い地域では、アクセス数が年始に大きく低下し、その後徐々に回復する傾向が見られる。PCでも似た傾向はあるが、スマホほど大きな変動はなく、全体的にアクセス数は低く安定している。スマホでは市町村間の格差が大きく現れているのに対し、PCでは比較的均一な推移となっている。

資料:Yahoo! JAPAN PV

被災地近辺の変化を地図で確認してみましょう。図4は上記データから1/1~1/7の平均を算出し、変化度合いを色で表したものです。色が濃いほど減少幅が大きかったエリアです。地域によって傾向に差があり、特に能登半島では大幅な減少が見られたことがわかります。

(図4)デバイス別のPV変化(1/1~1/7平均)

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数平均、YIDログイン)

能登半島周辺の市町村別マップに、1/1~1/7のスマホのPVの変化を濃淡で示した地図。PCの地図と同様に色の濃淡でアクセスの相対値を表している。能登半島の北部地域(珠洲市、輪島市、穴水町、能登町)が濃い灰色で塗られており、スマホからのアクセスが非常に低かったことが分かる。その他の地域ではアクセス数にばらつきがあるものの、広範囲にわたって比較的明るい色が見られ、スマホからの利用が一定程度確保されていたことを示している。全体としてはPCの分布と類似しているが、スマホの方が濃い色が多く、被災地における利用制限の度合いがより大きかったことがうかがえる。

資料:Yahoo! JAPAN PV

能登半島周辺の市町村別マップに、1/1~1/7のPCのPVの変化を濃淡で示した地図。色の濃淡によってアクセスの相対値が示されている。色の凡例は「50未満」から「110以上」までの5段階で、濃いほどアクセスが少ないことを意味する。能登半島北部(珠洲市、輪島市、穴水町、能登町)を中心に濃い色(50未満)が広がっており、アクセスが著しく低下していることが分かる。それに比べて金沢市や新潟県の一部では相対的にアクセスが高めであることが見て取れる。

資料:Yahoo! JAPAN PV

求められるのはニュース・天気情報や検索

サービス領域ごとで変化はあったのでしょうか。ヤフーの主要なサービス領域について確認してみましょう。被災4県では、特にニュース・天気災害系とトップ・検索の伸びが顕著でした。その他地域でも同様の領域でPVが伸びているのですが、被災地に近い地域ほど、地震情報や被害状況の確認のためにアクセスが増加したと考えられます。
なお、地図系は直後に増えていますが、その後は平時並みに落ち着いています。コマース系はその他地域と比べても特に変化が見られなかったようです(図5)。

(図5)サービス種別のPV変化

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数、YIDログイン)

被災4県とその他都道府県の領域別PVを指数化して日別変化を表した折線グラフ。左側が被災4県、右側がその他の地域を示している。表示されているカテゴリは「トップ・検索」「コマース系」「ニュース・天気災害系」「地図系」の4種で、2023年12月25日から2024年1月29日までの日別の推移が描かれている。被災4県では、年始に「ニュース・天気災害系」が急激に増加し、ピークは200を超えている。他にも「トップ・検索」や「地図系」も一時的に増加傾向が見られるが、「コマース系」は比較的安定しており大きな変化はない。その他の地域でも「ニュース・天気災害系」は年始にやや増加するものの、被災地ほどの急騰は見られない

資料:Yahoo! JAPAN PV

もう少し細かい地域で見てみましょう(図6)。石川県内でも特に被害の大きかった輪島市では、いずれの領域でも震災直後に大きく減少しています。その後徐々に回復してはいるものの、地図系以外では1月末時点でも回復し切っているとは言えない状況です。特にコマース系は大幅な減少が続いています。金沢市の変化は図4で見た被災4県の動きとほぼ同じであり、震災直後にニュース・天気災害系を中心にPVが増えています。
同じ被災地でも、被害の深刻度や周辺状況の変化によって、求められる情報は変わっていくことが伺えます。

(図6)石川県内のサービス種別のPV変化

(12/18~12/24週の同曜日を100とした指数、YIDログイン)

輪島市と金沢市の領域別PVを指数化して日別変化を表した折線グラフ。「トップ・検索」「コマース系」「ニュース・天気災害系」「地図系」の4カテゴリが表示されている。輪島市では年始に全カテゴリが急激に減少し、とくに「コマース系」が顕著に落ち込んでいる。その後は「地図系」が大きく増加し、一時的に200を超えるピークも見られる。金沢市では年始に「ニュース・天気災害系」が急騰し、300に迫る数値を記録。その後は緩やかに減少し、他のカテゴリは比較的安定した推移を見せている。

資料:Yahoo! JAPAN PV

検索ワードで見るニーズの変化

被災地でどのような検索がされていたのでしょうか。下記は、LINEヤフー研究所とNHKによる、被災地でよく検索される特徴的なワードの分析です。
被災地のニーズの変化は?3週間の検索ワード分析で見えたもの
上記を見ると、人々のニーズがどのように変化していくのかがわかります。たとえば同じ断水関連の検索であっても、地震直後から求められている「断水」情報に加えて、日数が少し経過してからは「トイレ」や「風呂」「入浴支援」などの言葉が特徴的に現れてきます。
こちらの分析を元に、「断水」「生活再建」「道路」「電気・エネルギー」の関連検索ワードが量的にどう変化するのかを見たものが図7です。石川県内の各カテゴリーの12月18週の検索量を基準値100とし、その後の検索量推移を週次で表したものです。関連ワードは以下の表をご覧ください。

カテゴリー 関連検索ワード
断水 温泉、断水、トイレ、仮説トイレ、風呂、銭湯、入浴支援、スーパー銭湯、コインランドリー 等
生活再建 ホテル、罹災証明、罹災証明書、輪島市仮設住宅、二次避難所 等
道路 のと里山海道、里山海道、通行止め、道路情報、交通情報、道路交通情報、渋滞、北陸自動車道、道路復旧見える化マップ 等
電気・エネルギー 北陸電力、ガソリンスタンド、ガソリン、停電、発電機、北陸電力、非常用発電機 等

「断水」「生活再建」関連は震災1種目に平時の約9倍、「道路」関連は約5倍もの検索があったということになります。なお、「断水」「道路」関連は震災1週目をピークに徐々に検索量自体は落ち着いてきますが「生活再建」関連は震災2週目がピークであり、その後もニーズが継続していることがわかります。わかりやすい情報提供とともに、状況に合った中長期的な復興支援が求められています。

(図7)石川県内の検索量の変化

(週次、12/18~12/24週を100とした指数、YIDログイン)

石川県内の震災関連カテゴリー別検索数の変化を指数化し、週次で表した折線グラフ。生活再建と断水は青系統の色で、電気と道路は黒系統の記号で描かれている。生活再建の数値は1月8日に最大の約1,200に達し、その後は漸減していく。断水は1月1日に急増し、約900に達した後、1月8日以降は大幅に減少しながらも2月中旬まで残存している。電気と道路の項目は年末年始にかけて一時的に増加するが、その他の項目と比べると数値は小さく、早い段階で落ち着きを見せている。

資料:Yahoo!検索

震災大国日本において、地震災害は誰にとってもひとごとではありません。LINEヤフービッグデータレポートは、これからもビッグデータを通じて社会の問題提起や課題解決につながる発信を行って行きたいと思います。また、LINEヤフー株式会社は引き続き被災地の復興支援事業に取り組んでまいります。
令和6年能登半島地震 緊急支援募金 特設ページ
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文・図/LINEヤフービッグデータレポートチーム

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