第26回参院選予測をビッグデータで振り返る

政治・選挙
白い背景に黒い文字で「ビッグデータで振り返る 第26回参院選予測」と書かれている。右下には青色の線の上に小さな箱があり、その上に手のイラストが乗っている。下部には「Yahoo! JAPAN ビッグデータレポート」と表記されている。

※ヤフー株式会社のコーポレートブログに掲載した記事を再掲載しています。

こんにちは、Yahoo! JAPANビッグデータレポートです。2022年7月10日(日)第26回参議院議員通常選挙(以下、参院選)の投開票が行われました。選挙前にリリースした私たちのビッグデータによる議席数予測と答え合わせをしてみましょう。予測の詳細は前回のレポートをご覧ください。
今回は、慶應義塾大学SFCでヤフーの寄付講座を受講している学生のみなさんにも予測に参加いただきましたので、あわせてご紹介します。

まず選挙結果の確認です。自由民主党が議席数を伸ばし、野党が軒並み苦戦する中、日本維新の会は躍進しました。なお、話題となっていた参政党は、比例区で1議席獲得に至りました。

(図1)2022年 第26回参院選の結果

2022年参院選結果の棒グラフ。改選前と改選後の議席数を比較。自由民主党は8議席増加し、63議席獲得。立憲民主党は6議席減少。日本維新の会は6議席増。その他の政党も増減が表示されている。

資料:総務省ホームページ

予測の一致率は?

予測の一致率は、「政党ごとの実績と一致した予測議席数の和÷改選議席数」で算出しています。今回のヤフー予測は、参政党の得票コンバージョンを過去の新党と比較して高かった場合(予測①)と低かった場合(予測②)の2種類をシミュレーションしていました。いずれも一致率94%と、高水準の結果を得られました。
またSFC学生予測は個人の予測を集めてクラス平均をとったものです。こちらも一致率89%とほぼ9割正解でした(図2)。

(図2)2022年 第26回参院選の結果

2022年第26回参院選の予測と実際の結果を比較した図表。左から比例代表、選挙区、合計の3つのセクションがあり、異なる政党ごとの議席数の予測値と結果を示しています。ヤフー予測と学生予測の一致率もパーセントで表示されています。

資料:総務省ホームページ、ヤフー検索。学生予測はSFC課題平均

なお、SFCの講座では過去のクラスでも選挙予測を行ってきました。課題の都合上、より単純なデータのみで予測を行っているにもかかわらず常にほぼ9割の精度が得られており、あらためてビッグデータの力を感じます。これからも学生の皆さんにビッグデータのおもしろさを実感してもらえるような取り組みを継続していければと思います。

(図3)SFC学生による選挙予測の一致率推移

グラフは慶應義塾大学SFC学生による選挙予測の一致率を示すもので、2019年春から2022年春までの推移が描かれています。グラフには比例代表、選挙区、合計の3つの指標が表示され、一致率は概ね80%から90%の範囲で推移しています。

資料:総務省ホームページ、ヤフー検索。学生予測はSFC課題平均

注目度と得票数の相関

では、選挙結果を検証していきます。主要7政党のインターネット上の注目度と得票数には今回も正の相関が見られました。ただし、自民と国民民主党が回帰線から乖離しており、ゆるい相関にとどまっています(図4)。

(図4)インターネット上の注目度と得票数の相関(主要政党のみ)

グラフは、主要政党のインターネット上での注目度と得票数の相関を示しています。左は比例代表、右は選挙区のデータで、自民党が高い得票を示す一方で、他の政党は注目度に対して得票が少ないことを示しています。

資料:総務省ホームページ、ヤフー検索(2022年6月22日~7月9日)

先の7政党にれいわ新選組、NHK党、参政党を追加してみます(図5)。すると、注目度以上に得票数を集める、つまりコンバージョンの高い政党群と、逆に注目度は高いものの得票にはつながりにくいコンバージョンの低い政党群が見えてきます。れいわ、N党など比較的新しい政党はコンバージョンが低く、中でも参政党は非常に高い注目度の割にはコンバージョンが低かったことがわかります。

(図5)インターネット上の注目度と得票数の相関(主要政党のみ)

グラフは比例代表と選挙区における政党のインターネット上の注目度と得票数の関係を示しています。縦軸は得票数、横軸は注目度。比例代表では自民、維新、公明が高コンバージョン、参政は低コンバージョン。選挙区も類似の関係を示しています。

資料:総務省ホームページ、ヤフー検索(2022年6月22日~7月9日)

政党別の注目度

政党別の注目度の推移を見ると、公示前から与野党の注目度が伸びる中で、特に参政党の注目度が大きく伸長していました(図6)。

(図6)政党別の注目度

2021年12月から2022年7月までの政党別注目度を示すグラフ。上段は与党と主要野党、諸派の週次注目度の推移を示し、下段は政党別構成比を表している。6月22日の公示日以降、すべての政党の注目度が上昇。特に与党の注目度が顕著に増加。

資料:ヤフー検索(2021年12月~2022年7月)

各党の公示前の注目度を基準として公示中の変化を見たところ、選挙直前に自民と国民の注目度が大きく跳ねており、盛り上がり度(公示中の注目度÷公示前の注目度)が大きかったことがわかります。なお、参政党の盛り上がり度は他の主要な野党と同じくらいでした。高い注目は集めたものの、投開票前の盛り上がりが突出していた訳ではないようです(図7)。

(図7)注目度の変化と盛り上がり度

図は2022年参院選における政党別の注目度の変化と盛り上がり度を示しています。左のグラフは公示日前から公示中の注目度の推移を、右の棒グラフは注目度の盛り上がり度を数値化したものを示しています。自民党と国民民主党の盛り上がり度が高いです。

資料:ヤフー検索(2022年6月4日~7月9日)

過去の国政選挙と比較しても、自民と国民の盛り上がり度は高めでした。れいわは初登場だった前回の2019年参院選では大きく盛り上がっていましたが、今は他の主要政党と同水準に落ち着いています(図8)。

(図8)政党の盛り上がり度の変化

主要政党の注目度の変化を示すグラフ。時間軸に沿って各政党の注目度がプロットされ、線グラフで視覚化されています。自民、立憲、公明、維新、共産、れいわ、N党、参政などの政党が示され、時期ごとの注目度の違いが比較されています。

資料:ヤフー検索。立憲は民主党・民進党を含む、国民は希望の党を含む

政党別の得票コンバージョン

得票コンバージョン(注目度の得票へのつながりやすさ)はどうだったでしょうか。図9は国政選挙における各政党の得票コンバージョンの相対的な強さの推移を表しています。自民のコンバージョンは2021年衆院選の時よりはやや落ちるものの、時系列では上昇傾向です。今回は投票日直前に選挙運動中の元首相銃撃という大変に不幸な事件がありましたが、コンバージョンのトレンドに大きな影響はなかったように見受けられます。自公平均を赤の点線で表してみたところ、さらに安定的なトレンドが見てとれ、自民と公明の補完関係が伺えます。また、今回躍進した維新は比例代表のコンバージョンが上がっています。
総じて比例・選挙区ともに、10年前と比べると主要政党のコンバージョンの差が開いてきている傾向が見られます。

(図9)政党の得票コンバージョン
主要政党のつながりやすさ平均を1としたときの指数

2つのグラフが並んでおり、左は比率代表の政党別得票コンバージョン、右は選挙区の得票コンバージョンを示しています。自公の平均が赤点線で描かれ、主要政党のトレンドが分かります。

資料:総務省ホームページ、ヤフー検索。立憲は民主党・民進党を含む、国民は希望の党を含む

なお、公明党はインターネット上の注目度と関わりなく得票率が一定の割合に収まる傾向にあることが過去の分析でわかっています。今回はどうだったのでしょうか? 比例代表における公明党の得票率は11.7%と、過去水準をやや下回りました。これがヤフー予測で公明党議席数を1議席読み誤った理由です。従来と異なる事象が起きているのか、それともたまたまにすぎないのか、今後もウオッチしたいと思います。

(図10)参院選における公明党の得票率(比例代表)

1998年から2022年にかけての参院選における公明党の得票率(比例代表)の推移を示すグラフ。得票率は1998年の13.8%から2022年の11.7%に変動しており、過去の一定範囲をやや下回る結果。

資料:総務省ホームページ

与党優位に進んだ選挙と見えますが、選挙区の結果を精査すると、全国合計で与党の得票率は46%、45選挙区のうち与党が過半数を獲得したのは22選挙区でした。決して大勝したエリアばかりではなく、拮抗した戦いも多かったと言えるでしょう(図11)。

第26回参院選の選挙区別得票率を示す棒グラフ。与党が60%以上、50%以上、50%未満の3つのカテゴリーに分類され、与党と野党の得票率が視覚化されている。与党平均は46%。

資料:総務省ホームページ

まとめ

  • ビッグデータによる選挙予測は引き続き一定以上の精度で可能だった
  • 注目度と得票数の正の相関はあるものの得票コンバージョンが高い政党と低い政党に分かれる傾向
  • 参政党の得票コンバージョンはかなり低かったが大きな注目度を集めた結果、議席数獲得に至った
  • 歴史的な事件の直後においても、自民の得票コンバージョンは引き続き上昇傾向にあり、10年前と比較して主要政党間の差が開いてきている
  • 公明党の得票率は過去の一定範囲をやや下回った

Yahoo! JAPANビッグデータレポートでは、私たちの未来にとって大事な選挙をはじめ、今後もさまざまな社会課題・生活課題についてビッグデータを元に検証し、考察を行っていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

文・図/Yahoo! JAPANビッグデータレポートチーム

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