責任あるAIへの取組み

LINEヤフーは、ユーザープライバシーの保護と適切な情報管理を徹底し、AI倫理基本方針に基づき様々なAIをサービスや開発に広く活用しています。特に生成AIについては、日本で最も活用している会社を目指し、従業員が活用するための技術基盤や利用環境の構築・整備を行っています。LINEヤフーは、生成AI活用による業務効率化等を通じ、中長期的に収益の拡大を目指すとともに、より利便性の高いサービスをユーザーに提供していきます。

生成AI活用推進サイクル

LINEヤフーは、強みである豊富な日本のデータと多数の日本ユーザーとの接点を活かし、生成AI活用推進サイクルを回すことができる”超実践的”な環境を整備しています。

生成AI活用推進サイクル図

「生成AI活用推進サイクル」を示しています。国内最大級のユーザー基盤を持つLINEヤフーが、生成AI活用のサイクルを回せる“超実践的”な環境を提供することを説明しています。1.活用基盤(利用環境) - 活用するための組織、ガバナンス、社員教育 2.活用基盤(開発環境)-  活用するための技術 3.業務活用- 社員の生産性効率化 4.サービス活用 - ユーザーに「WOW」と「!」を提供

1.活用基盤(利用環境)の整備

LINEヤフーは、ユーザーのプライバシーを保護しながらAIを安全に活用するための方針として、AI倫理基本方針をはじめとしたガイドライン・ルールを整備しています。詳細は「責任あるAI」をご覧ください。

2.活用基盤(開発環境)の構築

LINEヤフーでは、最適なパートナーと提携するマルチベンダー戦略を採用しており、生成AIを活用するための技術基盤として、従業員が様々な生成AIを選択できる環境づくりに取り組んでいます。OpenAI, L.L.C. が提供する全てのAPIに関する利用契約を締結しているほか、Google Cloud・Amazon Web Servicesで提供される大規模言語モデルも利用可能としています。

3.業務活用の推進

全従業員に対して、生成AIのリスクやプロンプト作成の工夫に関する研修を必須とし、研修修了後に実施されるテストに合格すると、社内専用の対話型AIアシスタント「ChatAI」を利用できるようになります。これらの取り組みにより、従業員が多様な生成AIを安全に利用できる環境を整備し、生産性の向上を図っています。

4.サービス活用

LINEヤフーでは、生成AIを利用した様々な機能をLINE、Yahoo! JAPANをはじめとしたサービスにて提供しています。詳細は「サービスにおけるAI利活用」をご覧ください。

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責任あるAI

AIガバナンス確立に向けた取組み

LINEヤフーは、「AI倫理に関する有識者会議」を2021年6月に設置し、社会のニーズをふまえたAI活用のあり方、特にその倫理的側面について継続的に外部の専門家と議論を重ねています。2022年7月、ユーザーのプライバシーを保護しながらAIを安全に活用するための方針として、取締役会決議のもとAI倫理基本方針を策定しました。

AI倫理基本方針は8項目からなり、特定の属性や個人に不当な差別や不適切なバイアスがかからないよう「公平性と公正性の追求」や、「安全性とセキュリティの確保」、「プライバシーの保護」などを定めています。

  1. 情報の多様性から生まれるより良い未来の創造と人類への貢献
  2. 平和で持続可能な社会の実現
  3. ガバナンスコントロール
  4. 公平性と公正性の追求
  5. 透明性と説明可能性の追求
  6. 安全性とセキュリティの確保
  7. プライバシーの保護
  8. AI人材の育成

また、2023年10月、急速に発展する生成AIの変化に適応するため、専門組織である生成AI統括本部とその配下にAI倫理ガバナンス部門を創設し、全社における生成AI利活用推進に加え、当社グループ会社との連携も行っています。

FY2021からFY2023までの3つの年度にわたる計画を示すタイムラインを示しています。FY2021: 「ガバナンス体制の検討」2021年6月: 「AI倫理に関する有識者会議 設立」FY2022: 「目指すべき姿を定義」2022年7月: 「AI倫理基本方針 策定」FY2023: 「生成AI対応・アジャイルガバナンスの構築」2023年10月: 「生成AI倫理・AI倫理ガバナンス部門設立」

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攻めと守りを意識したアジャイルガバナンス

昨今、生成AIを中心としたAI技術は急速に発展しており、大手テクノロジー企業や新興事業者の台頭、さらには国内外の法規制整備が進むなど、とりまく環境はめまぐるしく変化しています。このような状況下で、LINEヤフーは画一的な運用にとらわれず、環境の変化に対応できる柔軟なアジャイルガバナンス体制を構築しています。

アジャイルガバナンスの全体像

AI倫理ガバナンス部門等の専門部門が、 政府、関連機関、パートナー企業をはじめとしたステークホルダーから情報を臨機応変に反映し、適時適切にガバナンス体制に反映。AI倫理に関する有識者会議からアドバイスを受けつつ、方針類の策定と見直しを実施。加えて各部門・従業員に対して教育を実施、相談を受けながらユーザーが安心・安全に利用できる環境を整備。

AI倫理ガバナンス部門では、生成AIの利活用に伴う様々なリスクに対応するための相談窓口を設置しています。

相談内容に応じて、関係する専門部門との連携体制を柔軟に構築し、策定したガイドラインやルールに基づいてアドバイスやチェックを行っています。

また、国内外のイニシアティブの状況やパートナー企業およびユーザー・社会の動向を注視し、ガイドライン・ルール、教育内容などの定期的な見直しや、サービスにおける利用規約やポリシー等の作成を支援しています。これらの取り組みや社内の事例に基づいた倫理的な判断基準等について、卓越した知見を有する専門家で構成される「AI倫理に関する有識者会議」に相談しています。

以上の包括的な取組みにより、生成AI利活用に伴う問題を未然に防ぐための体制を整え、ユーザーが安心・安全に利用できるサービスを提供しています。

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AI利活用におけるリスク評価

AI利活用にあたっては、欧州を中心にリスクベースの考え方が議論されています。LINEヤフーにおいてもEU AI規則を参考に、事業内容に応じてリスク評価と判断を行っています。

リスク
レベル
リスクレベルの概要 方針
人命、人の人生に大きな影響を与えうる事業 AIリスクの配慮を最優先に行う
2 実生活に大きな影響を与えうる事業 AIリスクの配慮を十分に行なう
3 実生活に大きな影響が生じにくい事業 一般的なAIリスクの配慮を行う

LINEヤフーでは、以下のAIリスク項目を重視し、適切な評価を行って影響の低減に努めています。

リスク項目 内容
品質リスク AIが期待される性能を維持できないリスクや、生成AIの出力品質が低下するリスク

例) ハルシネーション、一貫性の欠如、データドリフト等
法令・倫理リスク AIが差別的な表現を出力する可能性や、生成AIが権利侵害となる違法・有害情報を出力するリスク

例)学習データのバイアスの増幅による不適切な出力、特許や著作権などの知的財産権を侵害する出力
セキュリティリスク AIの学習段階や推論段階において、悪意のあるユーザーや第三者からの攻撃を受けるリスク

例)情報漏洩、敵対的入力 等

LINEヤフーでは、リスク評価と実施判断の際に、上記の項目に加えて、コンプライアンスやプライバシー、透明性など、安全性を含む包括的な分析を行っています。社内や自社プロダクトがAIを活用する際は、法務、プライバシー、セキュリティ、知財などの各部門が連携して専門的な視点によるリスク評価を行い、総合的に実施を判断します。また、高リスク案件については、CxO(CDO、CISO等)や横断的なコミッティが意思決定を行います。

なお、AI利活用において不可欠であるデータの取り扱いについては、データプロテクション基本方針およびサイバーセキュリティ基本方針に則って運用しています。

AIガバナンス部門を中心としたチェック体制

「AI倫理ガバナンス」が窓口となり「AI倫理・利用規範でのリスク判断」を行います。また、案件情報を法務知財、プライバシー、セキュリティ、他関係部門に共有し、「各専門領域でのリスク判断」を行います。「ビジネス・サービス部門」がリスクを踏まえたアドバイスや判断を受け取ります。

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社員教育

LINEヤフーでは、生成AIの利用に伴うリスク(情報漏洩、権利侵害、プライバシー侵害、ハルシネーションなど)を把握するため、全従業員※に必須の研修を実施しています。この研修はeラーニングとテストで構成され、 生成AIの出力品質を向上させるためのプロンプトの工夫についても学びます。社内専用の対話型 AIアシスタント「ChatAI」を使用するには、研修を受講する必要があります。研修内容は、社会情勢 やAI技術の進展に応じて適宜見直され、全従業員は、概ね半年に一度研修を受講しています。
※役員・正社員・契約社員が対象となります。

  • 2023年度下半期受講率:98%

従業員が生成AIのeラーニングを受講し、テスト合格後に独自AIアシスタントの利用を開始するプロセスを示しています。 学習内容:主要リスクの学習: 情報漏えい、権利侵害、不正確な出力、差別的な出力、プライバシー。プロンプトの学習: 出力品質の向上(プロンプトの良い例・悪い例、テンプレートの提示)。

主要リスクの学習​ 情報漏えい、権利侵害、不正確な出力、差別的な出力、プライバシー​
プロンプトの学習​ 出力品質の向上(プロンプトの良い例・悪い例、テンプレートの提示)​ ​

サービスにおける生成AI利活用

LINEヤフーでは、生成AIを利用した様々な機能をLINE、Yahoo! JAPANをはじめとしたサービスにて提供しています。

Yahoo!検索での活用

2024年度以降の成長戦略である「ID連携を基盤としたメディア・検索の再強化」の実行にあたり、改善を進めているYahoo!検索では、ユーザーの多様なニーズをもとに、生成AIを活用した利便性を向上する機能を公開しています。

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LINEアプリでの活用

コミュニケーションアプリ「LINE」では、OpenAIのAPIなどを利用し、トークルームでユーザーからの質問や相談に答えるサービス「LINE AIアシスタント」を公開しています。友だちとのトークと同様の使い方で、調べ物、仕事や宿題のアイディア、翻訳や要約、画像編集、レシピ検索など、日常を便利にするAI体験を提供しています。

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Yahoo!知恵袋での活用

Yahoo!知恵袋は、ユーザーがさまざまな質問や相談をできる場であり、自分の知識や知恵を活かして回答もできるQ&Aサービスとして誕生しました。2024年4月で20周年を迎え、現在では年間約5,400万件の質問と回答が投稿されています。しかし、約1割の質問には回答がつかないという大きな課題がありました。この問題を解決するため、AIを導入して回答を自動化することで、未回答の質問が減り、回答のバリエーションも広がっています。このようにYahoo!知恵袋では、強みである人の知識や知恵に加え、最新の生成AI技術を活用した回答により、ユーザーのニーズに応えた、満足度の高いサービスを提供してまいります。

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生成 AI 利用に伴う GHG 排出削減に関する取組み

生成 AI や先進技術の利用が拡大するなか、データ処理量が急増し新たな温室効果ガス(GHG)排出のリスクも高まっています。この課題に対し、LINE ヤフーグループはAI倫理基本方針で掲げている通り「平和で持続可能な社会の実現」 に向けて、追加性のある再生可能エネルギー由来の電力調達等によって、事業活動におけるスコープ 1(直接排出)およびスコープ 2(間接排出)の温室効果ガスを 2030 年度までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を目指しています。さらに取引先等サプライチェーン関連のスコープ 3(その他の間接排出)を含めた全体の排出量を 2050 年度までに実質ゼロにする「ネットゼロ」を目指しています。

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