法令遵守と国際的責任の遂行に関する以下の取り組み内容を適宜開示します。
TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)は、主要国の中央銀行や金融監督当局などが参加する国際機関であるFSB(金融安定理事会)によって設立されたタスクフォースで、2017年6月に「気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援すること」との提言を公表しています。LINEヤフーグループ(当時Zホールディングスグループ)は2020年6月にTCFD賛同表明を行い、正式にサポーターとなりました。またTCFD提言を参照し、シナリオ分析を行い、リスクと機会をまとめました。今後も、気候関連のリスクと機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示を進めていきます。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、主要国の大手事業会社や金融機関を中心とした企業・機関・団体等が参加する国際組織で、自然資本および生物多様性に関するリスクと機会や依存とインパクトを適切に評価し、開示するための枠組みを構築するために設立されました。LINEヤフーグループはTNFDの理念に賛同し、2023年2月にTNFDフォーラムに加盟、2023年11月にTNFD Early Adoptersに登録しました。今後も、継続的にTNFD情報開示フレームワークに基づいた積極的な情報開示を進めていきます。
LINEヤフーは、取締役会監督のもと、代表取締役社長をリスクマネジメント最高責任者としたERM(Enterprise Risk Management:全社的リスクマネジメント)体制を構築しています。具体的には、包括的に当社およびグループ会社における経営および事業に関わるリスクを的確に把握し対応するための全社横断的なリスク管理体制を整備しており、サステナビリティ関連のリスク管理に関してもERM体制に統合されています。
ERM体制におけるリスクの評価において、当社グループのミッションの実現および事業活動に関わる目標の達成等に影響を及ぼすリスクを特定し、リスクが顕在化した場合の影響度(リスクが目標達成に与える影響の大きさ)と発生可能性(どのくらいの可能性/頻度で顕在化するか)の観点から分析しています。そして、影響度×発生可能性=リスクの大きさとし、リスク評価をした上で対応を行っています。
ERM体制において把握したリスクのうち気候関連をはじめとするサステナビリティ関連のリスクについては、事業部門およびグループ会社から収集したリスクアセスメント結果をもとに、リスク主管部門であるESG推進室がリスクの識別・評価・優先順位付け・モニタリングを行い、サステナビリティ委員会配下の環境分科会・人権分科会に報告の上、リスクへの対応策を検討・実施しています。なお、機会についてはマテリアリティ特定に向けた議論を通じて、グループ各社各部門が事業・サービスの特性に応じた検討内容から抽出しています。
内部環境や外部環境の分析、経営層や実務責任者による認識を踏まえ、特に重要度が高いリスクを「グループトップリスク」と位置づけており、気候関連リスクも含め評価結果が高い場合にはその位置に選定されます。気候関連リスクは、ERM活動および年に1度の環境データの集計機会を通じて、環境による影響も考慮しながら適宜見直し、優先度をつけて対応策を実行しながら進捗のモニタリングを行っています。
LINEヤフーグループでは、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に把握し、リスクを低減するとともに機会を拡大するための事業戦略を策定することが重要であると考えています。環境課題におけるリスクと機会は、長期間にわたって自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、以下のような時間軸の整理のもとでシナリオ分析に基づく検討を進めています。
・グループ全社の事業活動での温室効果ガス「スコープ1」および「スコープ2」を2030年度までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」の2030年度目標の達成に向けて「GHG関連投資計画」を策定の上、まずは2028年度までの5か年のGHG投資計画に関する戦略的意思決定を経営会議にて行っています。(短期:戦略的意思決定に用いる計画期間)
・加えて、取引先等で排出される温室効果ガス「スコープ3」も含めた事業活動に関わる全ての温室効果ガス排出量を2050年度までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現も目指しています。(長期:気候変動の「緩和」に関する長期目標)
・一方で、日本政府は、世界全体の1.5℃目標と整合し、2050年ネットゼロの実現に向けた目標として、2035年度に温室効果ガスを2013年度比で60%削減すること等を掲げたNDCを国連に提出しています。(中期:日本政府の中期目標)
・これらの状況をふまえ、LINEヤフーグループでは以下の時間軸にて、気候関連のリスクおよび機会を開示しています。
短期:~2030年(GHG関連投資計画、カーボンニュートラル目標)
中期:~2035年(日本NDC目標)
長期:~2050年(ネットゼロ目標)
シナリオ分析に際しては、国際的な認知度や信頼性を考慮し、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が策定したシナリオを参照しています。産業革命以前からの気温上昇を+1.5℃以内に抑えるシナリオとしてNZE(Net Zero Emissions by 2050)とSSP1-1.9を、+2℃相当のシナリオとしてAPS(Announced Pledges Scenario)とSSP1-2.6を、+4℃を上回るシナリオとしてSTEPS(Stated Policies Scenario)とSSP5-8.5を用いました。
2℃シナリオでは、事業に影響を与えるレベルの気候変動による急性あるいは慢性的な物理リスクは生じない想定でありつつも、炭素税の導入や火力発電廃止などによるエネルギー価格の上昇が見込まれ、LINEヤフーグループとしての電力使用量増加に伴うコスト増のリスクを認識しています。1.5℃シナリオでは、そのリスクが更に早まる可能性が考えられます。一方で、環境配慮行動やサステナビリティ市場が拡大することによってサステナブルを重視するユーザーが増加することは、低炭素排出製品やサービスの売上増加など消費者選好の変化にもつながるため、LINEヤフーグループの各サービスにとって重要な機会であると考えています。
気候変動と自然資本は密接に関連し、お互いが影響を及ぼし合う依存関係におかれていることからも、それぞれを個別に検討するのではなく、統合的に連関性(ネクサス)を考慮する必要があります。よって、自然資本におけるシナリオ分析としても気候変動のシナリオ分析結果を用いるとともに、廃棄物や水利用など自然資本にかかる項目もリスクと機会に含めて特定しています。今後も、国際的に信頼性の高い自然資本シナリオの公開を注視しつつ、気候変動と自然資本を統合したシナリオの策定およびシナリオ分析結果を更新していきます。
TCFD提言に基づくリスクと機会の分類 | 想定される主なリスクと機会 ● は重要度が高い項目 |
時間軸 | ||
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リスク | 移行リスク | 法や規制に関するリスク |
● 炭素税・排出量取引の開始
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 |
テクノロジーリスク |
電力・エネルギー価格の推移
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 | ||
● 消費電力・エネルギーの増加
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 | |||
市場リスク |
● ビジネス自粛や消費者心理の冷え込み
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 | ||
顧客の行動変化
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 | |||
レピュテーションリスク |
気候変動対策への遅れ
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短期 | ||
気候変動対策に遅れている企業との取引
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短期 | |||
物理的リスク | 急性リスク |
● 異常気象の激甚化
【LINEヤフーグループのリスク】
|
短~中期 | |
慢性リスク |
気候パターンの変化
平均気温の上昇 【LINEヤフーグループのリスク】
|
中~長期 | ||
機会 | 資源効率 |
● 技術革新
【LINEヤフーグループの機会】
|
長期 | |
● 環境配慮
【LINEヤフーグループの機会】
|
短~中期 | |||
エネルギー |
技術革新
【LINEヤフーグループの機会】
|
長期 | ||
製品とサービス |
ビッグデータ
【LINEヤフーグループの機会】
|
中期 | ||
サプライチェーン
【LINEヤフーグループの機会】
|
中期 | |||
● サービス
【LINEヤフーグループの機会】
|
短~中期 | |||
市場 |
技術革新
【LINEヤフーグループの機会】
|
長期 | ||
● ライフスタイル
【LINEヤフーグループの機会】
|
短~中期 | |||
行動変容
【LINEヤフーグループの機会】
|
中~長期 | |||
レジリエンス |
事業の安定稼働
【LINEヤフーグループの機会】
|
短~中期 |
LINEヤフーグループの事業活動においても、直接的またはサプライチェーンを通じて間接的にも自然資本に依存しており、また一方では自然資本に対してインパクトを与えています。結果、このような依存とインパクトの両観点によって、前述の自然資本関連におけるリスクと機会が生じています。 LINEヤフーグループでは、気候変動と自然資本の連関性(ネクサス)を考慮し、水資源への依存と排水のインパクトにおける管理と対処を進めることが自然資本課題において重要であると認識しました。
今後も水資源をはじめ自然資本に対する状況に関しての把握と開示を行うことで、依存の低減とポジティブインパクトの強化およびネガティブインパクトの低減を目指していきます。
日本でも検討が進められている炭素税の導入を重要なリスクとして想定しています。CO2排出量に応じた炭素税導入やその規制・罰則が厳格化される場合には、税負担が将来において増すなど財務影響を受ける可能性があります。メディア事業、コマース事業、Fintech領域を中心に新たな収益の柱を創出する戦略事業など、多様なインターネットサービスを展開するLINEヤフーグループでは、データセンター、オフィス、物流センターなどにおいて事業を運営するための電力を使用しています。特に、データセンターによる消費電力量はLINEヤフーグループ全体の大部分を占めていることからも、データセンターの効率性向上と再生可能エネルギー化がリスク回避につながると考えます。カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速することを目的に、環境問題の解決に貢献する事業に対する資金調達手段として、2021年国内インターネットセクターにおいては初となるグリーンボンドを発行しました。調達された資金(200億円)は、LINEヤフーグループ(当時Zホールディングスグループ)で利用するエネルギー効率の高い(PUE1.5未満)データセンターの建設や改修など、データセンターへの投資およびデータセンター運営に必要な再生可能エネルギーの調達資金に充当しています。早期にカーボンニュートラル化を達成することで移行リスクによる炭素税の負担を回避できるものと考えます。
気候変動に伴う被害が社会・経済へと広範囲に影響した場合、LINEヤフーグループの主力事業である、広告事業においてはビジネス自粛や消費者心理冷え込みの影響が、コマース事業においては売れ筋の変化といった市場における移行リスクから売上や利益など財務影響を受ける可能性があります。また、気候変動のリスクへの対応が不十分な場合には、ネガティブな評判からブランド価値、サービス利用者が低下する可能性もあります。
このようなリスクを低減させるために、
といった取り組みが有効であると認識しており、今後も更なる施策を継続して行っていきます。
気候変動による地球温暖化が進んだ場合、日本においても台風や豪雨など自然災害の激甚化によるデータセンターや物流センターの被災リスクが高まります。メディア事業、コマース事業、Fintech領域を中心に新たな収益の柱を創出する戦略事業など、多様なインターネットサービスを展開するLINEヤフーグループでは、データセンターが被災した場合には建造物の破壊や回線障害などによる機能の低下または停止により主要サービスを提供出来なくなることで売上収益および営業利益に影響を及ぼすリスクが、物流センターが被災した場合にはサプライヤーからの仕入や配送などの機能が低下または停止による売上高および営業利益に影響を及ぼすリスクが、それぞれ想定されます。LINEヤフーグループでは、自然災害によるデータセンターの機能低下または停止の影響を緩和するため、システムの冗長化や日本国内に限らないデータセンターの多重化、分散化などの環境構築を進めています。また、自然災害による物流センターの機能低下または停止の影響を緩和するため、同じ配送管轄エリア内の別地域に物流センターを新設するなど機能分散を進めています。これら代替施策の取り組みにより、事業停止のリスクは概ねヘッジされ、影響は小さいものと考えます。
水資源は、気候変動課題や生物多様性の保全とも関連する自然資本の保全上の重要項目と認識し、事業活動における水使用量の削減、水源の保全、水リスクの管理と対処に努めてまいります。
詳細は関連リンクから水資源保全をご確認ください。
LINEヤフーグループは、投資家・企業・都市・国家・地域が環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する国際NGOであるCDPに対して、自社が与えている環境影響に関する情報開示を行なっています。
LINEヤフーは、2024年度調査において、気候変動分野で最高評価となる「Aリスト」に初めて選定されました。
国際会計基準(IFRS)財団傘下の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、世界の資本市場におけるサステナビリティに関する情報開示基準を公表しました。これは企業が短期、中期、長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクと機会について、IFRSサステナビリティ開示基準に基づき、グローバルに比較可能な情報を投資家に提供することで、開示する情報の信頼と信用を向上させると共に投資判断の材料となるものです。
LINEヤフーは、IFRSサステナビリティ開示基準の採用および利用に賛同しています。
SBTiは、企業に対してパリ協定の内容に基づいた温室効果ガス排出量の削減目標であるSBT(Science-Based Targets)を設定するよう求めるイニシアチブです。CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4機関が共同運営しています。
LINEヤフーはソフトバンクグループの一員として、ソフトバンクグループの「ネットゼロ」宣言(自社の事業活動や電力消費などに伴い排出する温室効果ガス「Scope1」および「Scope2」に加えて、取引先などで排出される温室効果ガス「Scope3」も含めた事業活動に関わる全ての温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする)にコミットして取り組んでいます。アスクルは、「2030年CO2ゼロチャレンジ」を宣言し、設定した温室効果ガス削減目標がSBT(Science-Based Targets)認定されました。(2018年8月)
RE100は、事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブです。
LINEヤフーグループは、2022年6月にRE100に加盟し、グループ全社の事業活動における温室効果ガス排出量を2030年度までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」を着実に実行していきます。
アスクルは、RE100に加盟(2017年11月)し、以下2つの目標達成を宣言いたしました。
LINEヤフーを含む「RE100」加盟企業は、2024年6月に日本のエネルギー政策に対する提言を提出しました。本提言を通じて、日本の再生可能エネルギー設備容量の増加や関連技術への投資など、再生可能エネルギーに関する取り組みが加速していくことを期待しております。
気候変動イニシアティブ(JCI)は、宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に賛同し、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するためのネットワークです。
LINEヤフーグループ(当時Zホールディングスグループ)は、2020年12月から参加しています。
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下に2009年に発足した、日本独自の企業グループです。脱炭素社会への移行を先導することで、社会から求められる企業となることを目指しています。
LINEヤフーグループ(当時Zホールディングスグループ)は、2023年4月から参加しています。JCLPの活動目的である1.5℃⽬標を確実に達成するべく、LINEヤフーの気候変動対策を整合させて取り組んでいます。
30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。
LINEヤフーグループは、2023年10月から参加しています。
GXリーグは、カーボンニュートラルへの移行に向けた挑戦を行い、GX(グリーントランスフォーメーション)を牽引する枠組みです。
LINEヤフーは、2024年2月から参加しています。
経済団体である一般社団法人新経済連盟は、2022年6月に新たにカーボンニュートラルワーキンググループを発足し、脱炭素時代の企業経営について政策提言等の活動を行っています。LINEヤフー(当時LINE)は発足当初からワーキンググループの一員として活動しています。
東京都が大規模事業所にCO2排出量の削減義務を課す「総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)」に関して、LINEヤフー(当時ヤフー)は自社で保有していた都内2カ所のデータセンターについて、第1期(2010~2014年度)の削減目標より14,565t-CO2の超過削減を達成しました。超過削減分については、東京都が目指す「ゼロエミッション東京」への協力とし、CO2削減クレジットを都に提供しました。第2期(2015~2019年度)についても、非効率なデータセンターの利用を縮小し、より効率的なデータセンターに置き換えるなどの取り組みを進めることで、26,654 t-CO2の超過削減を達成しました。また本社のある千代田区赤坂の東京ガーデンテラス紀尾井町は東京都環境局より地球温暖化対策の推進体制が特に優れた事業所として、トップレベル事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)に認定されました。