悩みを抱える人が孤立しない社会への構築に向けて自治体におけるLINE相談導入を支援
コミュニケーションの手段が多様化する中で、令和5年度の総務省情報通信政策研究所の調査によれば、10代の平日の電話の利用時間は携帯電話、固定電話を合わせて3.9分だったのに対し、遠隔会議システムやビデオ通話利用が9分、メール利用が15.6分、ソーシャルメディア利用が56分と、群を抜いてソーシャルメディアの利用時間が多くなっています。特に10代では、ソーシャルメディア利用の行為者率がメール利用と比較し高い傾向にあります。現代の子どもたちは、電話やメールよりもSNSを利用しており、特に「LINE」は10代の95%が利用しているという実態があります。
このような状況を踏まえ、いじめを始めとする子ども向けの悩み相談窓口も、最近ではLINEが活用されるケースが増えています。
相談用のLINE公式アカウントを友だち登録し、そのアカウント上で、LINEのトークを通して、SNSカウンセラーの資格を持つ相談員などへ、悩みを相談できます。
自治体が開設するいじめに関するLINEを活用した相談窓口は、2017年9月に長野県で試行実施されたのを皮切りに、2017年11月には滋賀県大津市でも実施されるようになりました。子どもたちが、より気軽に、簡単に、小さな悩みでも相談を持ち掛けられるようにし、いじめによるトラブルや自死の未然防止を図るとともに、未知の領域であったLINEを活用した相談事業について検証が行われました。
2017年9月10日から23日まで開設された、LINEの相談専用アカウント「ひとりで悩まないで@長野」には、長野県内の中高生390人から計547件の相談が寄せられ、前年度1年間の電話相談259件を大きく上回りました。
意外にも、電話相談と比べるといじめに関する悩み相談が少なく(電話相談28.2%に対しLINE相談9.8%)、電話ではその他の相談として集計されていた学業や恋愛に関する悩みが、電話相談7.3%の割合に対しLINE相談では47.8%に達するなど、明らかに違う傾向が見られました。
こうした成果は、「ひとりで悩む」子どもたちに潜んでいた『相談したい気持ち』を、「LINE」が掘り起こすことができたととらえることができ、子どもの悩みを解決可能な時期に解消し、深刻な事態に陥ることを回避する取り組みにもつなげていけるのではないかと考えられます。
長野県や滋賀県大津市での事例が評価され、いじめ相談にLINEを活用した窓口を設置する自治体は全国に広がりました。
2018年4月1日~12月31日の間に実施された、文部科学省「SNS等を活用した相談体制の構築事業」では、都道府県19、指定都市8、市町村3の合計30自治体で、11,039件の相談が寄せられました。相談内容は、友人関係の悩み(2,418件)が最も多く、学業・進路の悩み(1,086件)、いじめ問題(1,066件)と続きます。SNSで相談を受けた後は、120件が電話や対面相談に移行、21件が支援機関につながっており、心理的ハードルが低いSNSでの相談から、適切な相談機関へとつなぐ役割も担っていることが伺えました。
「SNS等を活用した相談体制の構築事業に係る自治体の取組状況(概要)」 | 文部科学省(外部サイト)2019年度も、文部科学省の「SNS等を活用した相談体制の構築事業」は30自治体に居住する青少年を対象に実施されました。
LINEとしては、全国すべての青少年が気軽に相談できるようにすることで、いじめをなくし、安心して学習その他の活動に取り組める環境を文部科学省とともに目指していきたいと考え、2019年度から、文部科学省の本事業向けのLINE公式アカウント利用料金の無償化、運用ノウハウの共有を実施しています。また、自治体独自で同様の窓口を開設する場合においても同様の扱いをしており、2019年度は計49カ所の窓口にLINE公式アカウントの無償提供を行いました。
文部科学省の「SNS等を活用した相談事業」への協力申出について2019年3月13日 文部科学省へ協力を申出(左より、同省浮島智子副大臣(当時)、LINE株式会社 代表取締役社長 出澤剛(当時))
LINEを活用した相談窓口は、現在では自殺対策、児童虐待防止対策、ひきこもり、子育て相談、若年妊娠相談、DV性暴力相談、人権相談、消費相談、ひとり親相談など、さまざまな用途で開設されています。
東京都では、2018年11月1日から14日まで、児童虐待防止を目的としてLINEの相談専用アカウント「東京 親と子の相談ほっとLINE」を開設しました。実施期間で寄せられた相談件数は576件375人、同期間の電話相談件数約390件の約1.5倍近くの相談が寄せられました。
特筆すべき点は、若い母親をターゲットとして開設した窓口であったにもかかわらず65人もの子ども本人からの相談があったこと、そして、児童相談所に対応を引き継いだものが8件もあったことです。
ゆっくり相談できない母親が子育ての合間に、虐待に悩む子どもが親に気づかれないようにLINEで相談してきた状況が想像され、窓口設置の意義があることが分かりました。2019年8月からは「子ゴコロ・親ゴコロ相談@東京」と名称を変え、通年実施されています。
LINEを活用した相談事業構築への協力を通じ、今後も悩みを抱える人が孤立しない社会の構築へ貢献してまいります。
LINEを活用した相談事業がどのように社会に貢献しているか、その具体的な成果や社会的価値(SROI: 社会的投資収益率)については、LINEヤフーの「サステナビリティマネジメント」ページ内、「社会に創出されたインパクト(社会的価値)の測定・評価」にてご確認いただけます。
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2025年7月更新