朝の支度の合間や、通勤中の電車の中。何気なく開いたLINEに、その日の検索急上昇ワードやニュースが届く――。
忙しい毎日の中で、アプリを新たに入れなくても、自然と「いま」を知ることができる。そんな体験を目指して生まれたのが「ヤフーアプリ セレクト」です。
開始記念の無料スタンプ配布をきっかけに、立ち上げから約半年で登録者数は約550万人に広がりました。本記事では、この取り組みをリードする菅沼に、ユーザーにとって「ちょうどいい入口」をどのように設計しているのか、その試行錯誤を聞きました。

Yahoo! JAPANアプリを使ってもらうために、まず必要なのは「出会うきっかけ」です。アプリ自体が魅力的であることはもちろん大事ですが、そもそも出会っていない人にどう届けるかが課題でした。
Yahoo! JAPANアプリを使っていることを意識せず、日常の習慣の中で気づいたら触れていた、という状態をつくりたい。まだアプリをインストールしていない方に向けても、日常的に開いているLINEの延長線上に接点をつくる。
それがヤフーアプリ セレクトの出発点でした。
開始当初は、計3回のスタンプキャンペーンをきっかけに多くのユーザーとの接点が生まれました。立ち上げから約半年(2026年4月時点)で、登録者数は約550万人に広がっています。
数字だけを見れば順調に拡大しているようにも映りますが、それが「ヤフーアプリ セレクトそのものの魅力」によるものかどうかは冷静に見極めていきたいと考えています。
実際、一定数のユーザーがブロックしている状況もあり、友だち追加後に継続して利用していただくことが現在の課題です。そうした中で、ユーザーが継続的に利用できる設計ができれば、行動は変わるのだと実感した出来事がありました。それが、去年の年末年始に実施したおみくじ施策です。
当時は、オフィシャルアカウント(OA)の中で楽しんでもらうための、比較的小規模なコンテンツとしておみくじ施策を企画していました。
大吉や中吉が出るおみくじに加えて、くじを引くと「お年玉」のように特典が当たる仕組みを用意していました。この企画を社内に持ち込んだところ、想定よりも大きな取り組みへと広がり、最終的にはトップページ施策として展開されることになりました。
さらに、「合言葉」を使った仕組みも取り入れました。LINE上で特定のキーワードを投稿すると応答メッセージが返り、追加でくじを引くことができるというものです。毎日参加することで、さらにもう一回くじを引ける設計にしていました。
その結果、この期間に友だち登録したユーザーのブロック率は、通常時と比べて約10分の1になりました。
この経験から、ユーザーが継続的に関わりたくなる理由をどう設計するかが重要だと実感しています。ヤフーアプリ セレクトでも、継続的に利用してもらえる仕組みを模索し続けていきたいと考えています。
通知からの流入が中心になると考えていましたが、実際にはLINE下部のリッチメニューから定常的にアクセスするユーザーも一定数存在していたことです。
これまでは「何を配信するか」に意識が向きがちでしたが、プッシュをきっかけにLINEを開いたあと、「そこで何を用意しているか」も同じくらい重要だと気づきました。
LINEを起点にYahoo! JAPANアプリを使ってもらう中で、理想はユーザーが自ら「ヤフーアプリ セレクト」を開き、リッチメニューから能動的に利用してくれる状態です。そこに向けて、まだ設計を深めていく必要があると感じています。
そのために意識しているのが、継続的に楽しんでもらえる仕組みです。習慣的な利用につなげることを意識したコンテンツや、読み物のように楽しめる「マガジン的な配信」なども検討しています。
実際にユーザーの利用傾向を見ても、日常的にフォローしているアカウントは、内容そのものを楽しみにしているケースが多く、少しおしゃれで、つい開きたくなるような存在であることが重要だと感じています。ユーザーの反応を見つつ、トライアンドエラーを繰り返しながら、より良いものにブラッシュアップしていけるよう、AIでの生成も含めて、いろいろな可能性を検討しています。
ヤフーアプリ セレクトを語るうえで欠かせないのが、「えりすぐり」という発想です。
Yahoo! JAPANアプリを大型スーパーに例えるなら、ヤフーアプリ セレクトは家の近くの小さなお店やコンビニのような存在を目指しています。
大型スーパーには、あらゆる商品がそろい、棚いっぱいに並べられています。目的を持って訪れる人にとっては、とても便利な場所です。Yahoo! JAPANアプリも同様に、多岐にわたる機能を提供しており、使い慣れた人には「何でもそろう」と感じていただけるのではないかと思います。
一方で「どこに何があるのか」「どうやって使いたいものにたどり着けばいいのか」といったハードルもあります。
だからこそ、私たちが厳選した情報だけを届けることで、「今ほしいもの」にすぐ手が届く体験をつくりたいと考えました。ライフスタイルに寄り添い、気兼ねなく立ち寄れる存在でありたい。そのために、あえて「全部は見せない」という選択をしています。
ニュースを届ける場所は、すでに他にもあるので、ヤフーアプリ セレクトはあくまで読んで不快感がないもの、気軽に楽しめるもの、前向きな気持ちになれるものを「セレクト」することに意味があると思っています。
何を届けるかだけでなく、何を届けないかを決めること。その判断の積み重ねが、ヤフーアプリ セレクトの世界観を形づくっていくと思います。
ただ、まだ理想の形に届いているとは思っていません。忙しい日々の中で隙間時間に情報を得ているユーザーを想定していますが、コンテンツのとがり方はまだ十分ではないと感じています。これから、もっと「気づいたら隣にいるような存在」にしていきたいです。
Yahoo! JAPANアプリとして初めての試みなので、手探りで進んでいます。ただ、最初から完璧な正解があるとは思っていません。「やってみて、ユーザーの反応を見て、少しずつ整えていく」その繰り返しだと思っています。
そうした試行錯誤の中で、一緒に考えながら前に進む力になってくれるのがチームの存在です。自分たちが本当に「押せる!」と思えないものは、外に出したくないので、議論がぶつかることもありますが、メンバーが意見を言いやすい心理的安全性の高い環境があってこそ、より良いアウトプットにつながると思うので、雰囲気作りは意識しています。
具体的には、Zoomでのミーティングも多いのですが、メンバーのコメントは一つ一つ自分の感想をリアクションする、面白い時は大きな声で笑う、など自身の感情を表現するようにして、発言しやすい雰囲気の醸成を心がけています。
プロダクトは、一人ではつくれません。設計思想を形にするのも、届け方を磨くのも、チームの温度があってこそだと感じます。
就職活動のときは、ウェブ広告に関わりたいという気持ちで入社しました。コマース事業部に配属され、約5年間在籍した後、社内の制度を利用してメディア事業部へ異動し、検索「きせかえ」サービスに携わるようになりました。
最初のきっかけは、ユーザーの反応を実感できたことでした。
当時、「きせかえ」が始まった背景には、他サービスとの差別化や、ユーザーに愛着を持って使ってもらいたいという狙いがありました。その中で、とあるキャラクターのプロモーション施策の企画を担当することになったのですが、企画をいちから考えることが初めてだったので、企画を実施するための承認フローや承認に必要な数字の試算の仕方も分からない状態でした。
当時の検索のサービスマネージャーに「どうやったら企画を通してもらえるのか?」と相談して、ホワイトボードで試算の仕方を一から教えてもらいながら進めていきました。企画の実施承認が取れた後は、デザイナーやエンジニアと連携しながら、「ユーザーがここで離脱したらどうするのか」など細かいパターンを踏まえた動線設計や、音声の扱い一つとっても、無音で始めるのか、字幕を出すのかなど、考慮せねばならないことが多く、議論を重ねました。正直とても大変でした。
企画のリリース後、SNSなどでユーザーが「ヤフーやるじゃん!」と企画を通してヤフーに好感を抱いてくださっている反応を見ることができた時に、大きく心が動きました。
大変なプロセスも含めて、誰かと一緒に一つのものをつくり上げ、それがユーザーに届いて喜ばれヤフーと出会うきっかけになる。その一連の体験そのものが楽しいと感じられたのも、このときでした。そこから「使ってもらうきっかけ」に関わる仕事を、この先も続けていきたいと思うようになりました。
そして、必死に取り組んだ仕事ほど、結果的に自分自身が一番楽しめているという感覚もこのときに強く感じました。
キャリアの中で、二度の産休・育休を経験しています。復帰当初は不安もありましたが、実際に戻ってみると仕事はとても楽しく、成果を評価してもらえることが日々の活力になっていると感じています。
正直、うまくできているとは言えませんし、多くの人に助けてもらっています。家庭とのバランスに悩むこともありますが、もともと楽観的な性格もあり、まずはやってみて、しんどくなったらそのときに考えればいいかな、というスタンスでやっています。
時には思うようにいかないこともありますが、「仕方がない」「次はもっと頑張ろう」と気持ちを切り替えています。
思い通りにいかず苦戦することはたくさんありますが、それでも自分の好きな「Yahoo! JAPAN」を、より多くの人に使ってもらうきっかけをつくる今の仕事にやりがいを感じています。
ヤフーアプリ セレクトが、日常の中で自然に開きたくなる存在になり、その先にYahoo! JAPANアプリを好きになってくれる人が増えていく。そんなきっかけを、これからもつくっていけたらうれしいですね。
取材日:2026年2月25日
文:大野 奈菜 撮影:安田 美紀 編集:LINEヤフーストーリー編集部
※本記事の内容は取材日時点のものです
