SNSで知り合ったその人、本当に安全? 専門家に聞く、「ロマンス詐欺」の手口と対策

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立正大学の西田先生のバストショット。西田先生は黒髪でメガネをかけており、グレーのジャケットにえんじ色のシャツを着ている。背景は青い壁で、左上に「SNSで知り合ったその人、本当に安全? #サイバーセキュリティ月間」、左下に「LINEヤフー ストーリー」と白い文字が表示されている。

「初めまして、あなたに出会えて本当に嬉しいです」
SNSやマッチングアプリで届く、そんな言葉から始まるやりとり。少しずつ距離が縮まり、「この人は特別かもしれない」と感じるようになる――。
いま問題になっている「ロマンス詐欺」は、人が誰かを信じたい、つながりたい、と思うごく自然な心の動きを利用する詐欺です。

詐欺犯罪に詳しい社会心理学者・立正大学教授の西田さんに、ロマンス詐欺がなぜ起きるのか、そしてどこで立ち止まればいいのかを、実際のやりとりもイメージしながらうかがいました。

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西田 公昭(にしだ きみあき)さん
立正大学教授 心理学部対人・社会心理学科
専門分野は司法・犯罪心理、社会問題。

マッチングアプリやSNSでの出会いは、対面での出会いと同じ前提で考えない

――そもそも、マッチングアプリやSNSで出会った恋愛を、普通の恋愛と同じように考えていいものなのでしょうか?

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いいえ。はっきり分けて考えたほうがいいと思います。
マッチングアプリでの出会いは、これまでのような対面の恋愛とは異なった手順やルールを意識する必要があります。

――ただ、最近は「アプリで出会って結婚した」という話もよく聞きます。「自然な出会いだった」と思いたくなる気持ちもあるかもしれませんよね。

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その気持ちは、とてもよくわかります。でも、交際の仕方は別物だと認識したほうが安全です。

ロマンス詐欺の元をたどると、「結婚詐欺」や「恋人商法」など、昔からある手口に行き着きます。人の好意や信頼を利用する点では、新しい詐欺ではありません。
ただ、決定的に違うのは、いまはオンラインで簡単に成りすましができるという点です。

――対面が前提だった時代とは、条件が違うわけですね。

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そうです。昔の結婚詐欺は、実際に会う必要がありました。
顔を見られますし、素性を調べられるので、だます側にとってはリスクが高かった。でも今は、会わなくても関係が成立してしまう。プロフィール写真も文章も、いくらでも嘘で作れる。

さらに、一人の人物を複数人で演じることもできます。時間帯ごとに担当を替えて、常に返信できる状態をつくる。それも、実際に起きていることです。

――だから、やりとりが途切れず、安心してしまう...。

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「おはよう」「おつかれさま」「今日は大変だったね」そうした日常的なメッセージは、心の支えになりますよね。
その時点では、受け取る側にとって悪いことではありません。むしろ、「この人はちゃんと向き合ってくれている」と感じるでしょう。

マッチングアプリやSNSは、相手と好意や信頼を少しずつ重ねていくことを前提にした仕組みです。そのため、対面で知り合った場合と同じ感覚で進むと、リスクに気づきにくくなってしまう可能性があることを覚えておいてほしいと思います。

立正大学の西田先生のバストショット。柔らかい表情でやや左を見つめており、穏やかな雰囲気が漂っている。

覚えてほしいポイント:
マッチングアプリやSNSでの出会いは、対面での出会いと同じ前提で考えない

相手を好きになると、人はどんな心理状態になるのか

――「ちょっと怪しいかも」と思っても、相手を好きになってしまったら、冷静に判断できなくなってしまうのではないでしょうか。

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そうなんです。多くの人は、最初からマッチングアプリやSNSで知り合った相手を全面的に信じているわけではありません。半信半疑でやりとりを始める人がほとんどです。

それは、対面の出会いでも同じですよね。出会ったその日から、すべてを信頼する人はいません。
でも、食事をしたり、デートを重ねたりする中で、少しずつ信頼や好意が生まれていく。 実はこのプロセスは、非対面でも同じように起きるんです。

――「なかなか会えない」という状況が、逆に気持ちを強めてしまうことも?

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あります。心理学では「ロミオとジュリエット効果」と呼ばれるものです。
会いたいのに会えない。その原因を、相手の気持ちや努力不足のせいではなく「環境」や「妨害」のせいだと考えるほど、相手への気持ちは強くなっていきます。

「会えない=おかしい」ではなく、「会えない=仕方がない」になってしまう。
そして、「私もあなたも会いたい」「相手も同じ気持ちだ」そう思えてしまうと、疑う理由がなくなっていくんです。

――そう考えると、「おかしい」と思っても抜けられなくなるのも無理はないですね。

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はい。もう一つ大きいのが、詐欺師は「好き」「大切」「特別」といった言葉を、惜しみなく使うことです。人は、自分を好いてくれる相手を自然と好きになってしまう。これは、「好意の返報性」と呼ばれる心理です。

「こんなに大切にしてくれる人を疑うなんて、失礼じゃないか」そう感じ始めた時点で、警戒心はかなり下がっています。

――そして、マッチングアプリやSNSの出会いでは最初から相手の趣味や価値観がわかる分、「この人とは気が合う」と感じやすいですよね。

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そうですね。SNSやプロフィールに書かれている情報を事前にこっそり調べれば、相手に合わせた話題をつくるのは簡単です。
人は、自分と似ている人に好意を抱きやすい。これは、ごく自然な心理です。

――そして、やりとりを続けるうちに信頼も生まれる...?

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はい。やりとりが進むと、相手は悩みや愚痴を聞き出そうとします。ここで使われるのが「自己開示」です。
仕事の不安、将来の心配、日常の小さなトラブル。それらを真剣に聞いて、受け止めてもらううちに、相手が「頼れる人」「わかってくれる人」「癒してくれる人」になっていきます。

悩みや愚痴を聞いてもらうと、被害者側には、「こんなに話を聞いてもらっているのに、疑うのは申し訳ない」という罪悪感が生まれます。

――疑うこと自体が、悪いことのように感じてしまうんですね。

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その通りです。相手を疑う自分を責めるようになり、「この人はきっと大丈夫だ」と思い込んでいく。
これは、特別な人だけが陥る心理ではありません。人を信じたい、つながりたいという自然な気持ちが、判断を少しずつ鈍らせていってしまうのです。

立正大学の西田先生の上半身ショット。テーブルの前で両手を広げながら話している様子。

覚えてほしいポイント:
恋愛感情が動くと、「おかしい」と思っても判断は鈍る

やりとりで「お金」が出たら止まる

――実際に送られてくると思われるメッセージの例を見てみると、「ここが怪しい」と言い切れるポイントがあまりないように感じました。

恋愛感情を装って信頼を得ながら個人情報を聞き出す「関係構築〜好意強化フェーズ」と「情報収集フェーズ」の例文を並べたイラスト。左側(青)は親しみを込めた言葉で距離を縮める内容で、「関係の土台作り」「二人の関係強化」「依存心の醸成」「特別な存在へのステップアップ」「好意の告白」といった段階に沿って発言例が並んでいる。右側(ピンク)は「家族構成」「収入・生活パターン」「資産」「投資経験」などをさぐる質問文が示されている。
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それでいいんです。見破れないのが普通なんです。
趣味の話、家族の話、仕事の話。どれもマッチングアプリでは自然な会話ですよね。

――投資の話も、「NISAやってる?」と聞かれたら答えてしまいそうですよね。

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投資の話は、最初から出るとは限りません。たとえば、子どもの話→将来の不安→お金の話...というように、いくらでも自然につながる。
相手を信じようとしていると、「自分を心配してくれているから」「一緒に未来を考えているから」と前向きに受け取ってしまう。「この人は詐欺じゃない」と思ってしまう。
これは、「確証バイアス」と呼ばれる、自分に都合のいい情報だけ集めてしまう心理です。

相手をいい人だと思うと、いい側面ばかりを見てしまい「疑うこと自体が、嫌なこと」になっていくんです。
だから、無理に見抜こうとしなくていい。判断基準は一つです。

――それは...?

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お金の話が出たら、そこで止まる。

金額の大小は関係ありません。「少し貸して」「立て替えて」「一緒に投資しよう」など、お金に関するキーワードが出てきた時点で、恋愛ではありません。

――たとえ返してくれたとしてもですよね。

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はい。それは信用させるための手段にすぎません。少しでもお金を出し始めると、人はそこから逃げにくくなる。お金を出した自分の判断が間違っていたとは認めたくないから。
そして、金額が大きくなるほど、関係を断つのが難しくなるんです。

立正大学の西田先生の上半身ショット。両手を軽く組みながら前のテーブルに置き、話をしている様子。

「他にも自分でできることの1つとして、これまでは『いい人』という前提で読んできたやりとりを、『もしこの人が詐欺師だったら?』という仮説で誰かと一緒に読み返してみるのも方法です。すると、質問や話題の『意味』が違って見えてくることがあるかもしれません」

覚えてほしいポイント:
少額でも「お金」の話が出たら、立ち止まる

周りの人ができることは? だまされたことは、恥でも失敗でもない

――ロマンス詐欺は特に、被害に遭ったあと相談しにくい詐欺だと感じます。

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まず知っておいてほしいのは、相談しにくいのは、あなただけではないということです。
他のどんな詐欺被害でも、被害者はなかなか声を上げづらいんです。
「だまされた自分が悪い」「恥ずかしい」「これ以上、恥をさらしたくない」そう思って、隠してしまう。

――そこに恋愛が絡むと、さらに言いづらくなりますよね。

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そうなんです。特に恋愛の場合、「欲を出したあなたが悪いんじゃないか」「忠告されていたのに、なぜ止めなかったのか」そんなふうに言われがちです。
でも、恋愛で判断が甘くなるのは、人として世界共通の自然な反応です。ドーパミンやセロトニンといった物質が働き、気持ちが高揚しやすくなる。

それを「自己制御ができていない」と責めるのは、違うと思います。

――相手を信じたこと自体が、悪いわけではありませんよね。

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その通りです。人を好きになったり、人を信じたりすることは、何も悪くありません。
人を信じることは本来、いいことですし、社会の中では大切に教えられてきた価値です。

――では、もし友人などが「だまされたかもしれない」と打ち明けてくれたら周りはどう関わればいいのでしょうか?

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大切なのは、だまされた人が悪いわけではないという前提を周囲の人が強く持つことです。
「よく話してくれたね」「一人で抱えなくていい」「一緒に整理しよう」そんな一言が、大きな支えになります。そして、詐欺に遭ったこと、あるいは遭いかけたことを隠さずに話せることは、同じ被害を防ぐことにもつながります。

ロマンス詐欺は、恋愛に弱い人がだまされる話ではありません。
誰かを信じたいとき、誰かに頼りたいと少しだけ思ったとき、その気持ちにつけ込まれてしまうのです。

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私が、ロマンス詐欺から身を守るために作った短歌を紹介します。

好きだから お金貸してに用立てる
お金返らず 愛も返らず

もし、やりとりしている相手からお金を出してほしいと言われたときは、「本当に大切にされている関係か」を、一度立ち止まって考えてほしいと思います。

立正大学の西田先生のバストショット。笑顔を見せながら話している様子。

「好きになってしまった相手を『悪い人かもしれない』と考えるのは、とてもつらいこと。そんなときは、『詐欺かもしれないから一緒に見てほしい』と周囲に共有することで、視点を切り替えやすくなります」

覚えてほしいポイント:
詐欺に遭ったこと、遭いかけたことを話すことは、被害を防ぐことにもつながる

これだけは覚えてほしい ロマンス詐欺への3つの対策

1)マッチングアプリやSNSでの出会いは、対面での出会いと同じ前提で考えない
マッチングアプリやSNSでの出会いは、成りすましや分業がしやすい 
2)恋愛感情が動くと、判断は鈍る
会えないほど気持ちが強まる。「好き」「特別」と言われると疑えなくなる
3)「お金」の話が出たら、そこで立ち止まる
「少し貸して」「立て替えて」「一緒に投資しよう」少額でもお金の話が出たらアウト

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取材日:2026年1月8日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:倉増 崇史
※本記事の内容は取材日時点のものです

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