おばあちゃんは、生成AIを使ったことってありますか?
写真に残っていない若い頃の思い出を、もし今の技術でもう一度見ることができたら...。
今回は、ライターの島影真奈美さんに寄稿いただき、吉本興業所属の芸人・おばあちゃんの記憶を辿りながら、生成AIを使って実写風に再現していきます。
生成された画像を見ながら「少し当時の雰囲気に似ているけれど、もっとこうだった」「全然違うかも」と会話を重ねるうちに、思い出の細部がどのように浮かび上がってくるのかを探ってみました。
記事の後半では、「画像生成のコツ」や「安心して楽しむためのポイント」もご紹介します。親子・孫世代でAIをもっと身近に感じられるヒントが見つかるかもしれません。
島影 真奈美(ライター/編集者)さん
介護や対話をテーマに幅広く執筆するライター・編集者。株式会社abaに所属し、NPO法人タダカヨ理事も務める。著書に『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)がある。現場の声を丁寧にすくい取り、「おもしろい」の中に潜む社会の課題や人の思いを伝える記事に定評がある。近年は介護離職防止のアドバイザーとしても活動し、「介護技術で遊ぶ会」などユニークな取り組みも展開している。
ライターの島影真奈美と申します。
普段は介護や対話をテーマに取材や執筆をしていますが、今日は少し特別なテーマを携えて、吉本興業にお邪魔しています。
そのテーマとは「AIが世代を超えたコミュニケーションツールになるのではないか」ということです。
みなさんは、ご家族とどんなふうにコミュニケーションを取っていますか?
なかなかゆっくり話す機会がない、という方も多いかもしれません。
そんなときに思い出を語り合うのも素敵なコミュニケーションのひとつですよね。
昔のエピソードを話すと、「そうだったんだ」「初めて聞いたよ」と会話が広がることがあります。
もしそこにAIがあったらどうなるのでしょうか。
思い出を形にすることで、世代を超えて語り合うきっかけになるかもしれません。
お会いするのは、"おばあちゃん"という芸名で活動されている吉本所属の芸人さん。70代で芸人デビューし、高齢者ならではのユーモアあふれるネタを舞台で披露して注目を集めています。
今回は、おばあちゃんに若い頃の思い出を聞きながら、その場面を生成AIで一緒に再現していきます。
写真には残っていない、けれど心に鮮やかに刻まれている青春のひとこま。
いったいどのような記憶が語られるのでしょうか。
おばあちゃん(吉本興業所属芸人)
1947年2月12日生まれ、東京都国分寺市出身。
70代で芸人デビューという異色の経歴を持つピン芸人。芸名そのままに"おばあちゃん"として舞台に立ち、日常のあるあるをユーモアたっぷりに語るネタで注目を集めている。趣味は近場の温泉巡り。東京NSC24期生として芸人活動をスタートし、高齢者ならではの視点と人懐っこいキャラクターで観客を笑顔にしている。
おばあちゃんは、生成AIを使ったことってありますか?
以前、YouTubeの企画で使ったみたいなんだけど、どんなものだったかしらね。ほとんどスタッフにやってもらったからわからないのよ。でも、周りの芸人仲間や趣味の友達で使っている人は多いわ。
なるほど。今日は一緒に体験してみましょう。おばあちゃんの思い出をAIに描いてもらうんです。
へぇ~、そんなことできるのね。どんなふうになるのか楽しみだわ。
LINEには「LINE AI」というサービスがあって、「LINE AI」上で話しかけると文章を考えてくれたり、画像を生成してくれたりするんですよ。誰でもスマホから気軽に試せるんです。
私もLINE使っているわ。そんな機能があったなんて知らなかった。
今回は私と一緒にLINE AI使っていきましょう!
ではさっそく、おばあちゃんの印象に残っている思い出を聞かせてください。
そうねぇ、40歳くらいのときにオーストラリアへ1週間ほど行ったのが、とても楽しかったのよ。就職した後に大学に入り直して、そのときに仲良くなった同級生が誘ってくれたの。
ツアー旅行じゃなくて現地の人の家にホームステイしたから、観光客がいないような場所にたくさん連れていってもらってね。
すごくいい体験ですね。
印象的だったのはホームステイ先に小学生の男の子。
その子がよく助けてくれたのよ。買い物に一緒に行ったときも、私がまごまごしていると「ここに何ドルを出して」って全部案内してくれて。とても頼もしかったわ。
小学生とは思えないくらいしっかりしていますね。
当時10歳くらいだったと思うけど、とても大人びていたの。私はほとんど英語が喋れなかったけど、ジェスチャーで気持ちが通じたのも嬉しかった。
彼との思い出の中で、印象に残っていることはありますか?
一緒に自然を見にいったのよね。いろいろな場所に連れて行ってもらったけど、あれはすごく良い場所だったわ。
雄大な大自然の中で、すごくリラックスできる場所でね、たしか馬もいて、触らせてもらったはず。あれはどこだったのかしらねえ。
その思い出をLINE AIに伝えて、実写化してもらいましょうか。私がおばあちゃんとコミュニケーションを取りながら文字を打っていきますね。では「思い出を画像にしてほしい」と打ってみます。
あなたの思い出について、できるだけ詳しく教えてください。
例えば:どんな場所でしたか? 誰と一緒にいましたか? 何をしていましたか? どんな雰囲気や季節、時間帯でしたか?
詳しく教えていただくほど、イメージに近い絵を描けます! どうぞお聞かせください。
あら、こんなことを聞いてくるのね。なんて言おうかしら。
全部一気に話すのは大変なので、こういうときはひとつずつAIに質問していってもらうといいと思います。
それでは順番に質問しますね。
1つめの質問です。その思い出の「場所」はどこですか?
たしか、シドニーだったかしらね。
承知しました。その思い出には「誰」が一緒にいましたか?
大学の友達と、ホームステイ先の小学5年生ぐらいの男の子です。
3つめの質問です。その時「何をしていましたか?」
彼と雄大な自然の中にいたの。そこには馬がいて、私は柵の中にいる馬にさわろうとしていて、男の子はそんな私を心配そうに見ながら、腕をギュッとつかんでたのよ。なぜかその光景を覚えているわ。
4つめの質問です。その時の「季節や時間帯」「雰囲気」はどうでしたか?
初夏の爽やかな雰囲気だった印象があるわ。
ありがとうございます、素敵な情景が思い浮かびます! その時の「あなたの気持ち」はどうでしたか?
自然を満喫して、リラックスした気分だったわ。開放的でのびのびして、楽しかったわよ。
ここまでの情報を整理すると――
【あなたの思い出のシーン】
シドニー近郊の雄大な大自然の中、開放的でのびのびした雰囲気。
大学の友達やホームステイ先の小学5年生の男の子と一緒に過ごした。
あなたは柵の中にいる馬にさわろうとしていて、男の子が心配そうに、あなたの腕をギュッとつかんでいた。
爽やかで楽しい、伸びやかな気持ち。
この情報でイメージをイラスト化する準備ができました! このまま絵にして大丈夫ですか?
すごい、まとめてくれるのね。楽しみだわ!
すごい! ずいぶんリアルになるのね!
でも男の子が日本人になってる。オーストラリア人の男の子よ!
そうですよね。ちなみに彼は金髪でしたか?
金髪だったわ! 私の髪型もね、もっと短かったかな。帽子は被ってなかったわ。
変更リクエストしてみますね。
AIの画像生成の精度を上げていくためには細かくリクエストして、理想に近づけていくのが大切なんですよね。
そんな微調整もできるのね!
「男の子を金髪のオーストラリア人の小学生にして。私はショートカットで、Tシャツ姿にして。帽子も脱ぎたい。」
と入力してみます!
画像を生成します。
あははは。すごいわね。近づいてきた!
男の子はもう少し大人っぽかったと思うけど、こんな感じよ。なつかしいわ。みんな元気かしら。
今はもう連絡をとったりしていないんですか?
そうなの。会いたいわねえ。彼もきっと、今はもう立派なおじさんになっているでしょうね。
そういえば、一緒にショッピングモールに行ったときにね、私がショールを買おうとしたら、この子に「Oh、NO! あなたには似合わないよ」と言われて、びっくりしたことがあったの。それも描いてもらえる?
ずいぶん正直な男の子だったんですね!(笑)
ちなみに、どんなショールだったか覚えてます?
たしか、民族衣装みたいなショールだった気がするわね。言われてみたら、確かに似合わないんだけど、それにしてもはっきり言うわねえって驚いたわ。これが文化の違いなのかしらって思ったわ。
「オーストラリアの民族衣装っぽいショールを買おうとしたら、オーストラリア人の男子小学生に、似合わないよ!!!と言われてびっくりした場面も描いて」と。
画像を生成します。
そうそう! こんな感じ。
なぜか芝生は引き継いでいるのね(笑)。
男の子もちょっと大人っぽくなりましたね。
ホント、少し成長しているわね。でも、いろいろ質問してもらって、絵まで描いてもらってなんだか思い出がよみがえってきたみたい。
ではせっかくなので、おばあちゃんの初恋について画像化してみませんか?
当時の写真は残っていないから、それは良いアイディアね!
私の初恋はね、小学校のときに、同じクラスにとっても優しい男の子がいたの。見た目がハンサムだとかそういうことじゃなくて、中身がホント素敵でね、性格が良くて、勉強もできる子だったの。
どんなきっかけで「好きかも」って思ったんですか?
あるとき宿題を忘れちゃったの。その子が机の下で、さっとノートを見せてくれたのよ。
私は「見せて」と言ったわけじゃないんだけど、自然にそうしてくれたの。周りの子が「絶対あなたのことが好きなんだよ」って冷やかしてね。それで意識するようになったの。
すごく印象的なシーンですね...!
本当にそう。今思い出しても、胸がドキドキする。けれど、その子と直接「好き」とか「付き合う」なんて話はしなかったのよ。
当時はそんな時代でもなかったしね。結局、思いは伝えないまま終わったんだけど、あの頃の気持ちは今でも鮮やかに覚えてる。とても大切な思い出ね。
さっそくAIに描いてもらいましょう!
このような感じでいかがでしょうか?
かわいいけど、ちょっと服装が立派すぎるわね。
この絵みたいに、お金持ちのおぼっちゃんという感じじゃなくて、坊主頭で洋服もボロボロ。あの頃の子どもたちはみんなそうだったの。
おばあちゃんの小学生はそんな時代だったんですね。
そうなの。私もおかっぱ頭で、つぎはぎだらけのおさがりばっかり着ていたもの。
もう少し詳しくAIにリクエストしてみましょうか。
「昭和初期の頃の小学生のイメージで描きなおして。女の子はおかっぱ、男の子は坊主頭。洋服はつぎの当てられたおさがりを着てる」。
承知しました! こちらでいかがでしょうか?
あら、いやだ! これ、私たちそっくりよ。
ほんと、そう、そうだったのよね。懐かしいわ。ホント、こんな感じだったのよ。
ありがとうございます。素敵な思い出ですね。
まさか、こんな形でもう一度、彼に会えるなんて思わなかったわ。
すごくうれしい。
LINE AIを使った思い出の実写化、体験してみていかがでしたか?
とっても楽しかった。
高齢の人でもデジタルが得意な人はどんどんチャレンジしたらいいと思うし、私みたいにデジタルが苦手でも、こうやって一緒にやってくれたら楽しめると思うわ。
これからAIやロボットにやってほしいことはありますか?
一番は買い物ね。重い水やお米なんかを運んでくれると本当に助かるのよ。階段の上り下りも年を取ると大変だから、荷物を一緒に運んでくれるロボットがいたら嬉しい。
蛍光灯を取り替えたり、高い棚のものを取ったりするのも難しくなるから、そこも手伝ってくれたらありがたい。
なるほど。日々の暮らしのサポート担当ですね!
あとは、やっぱり話し相手になってほしいわね。
ひとりでいると、1日中誰とも口をきかないこともあるから。誰かと電話するとつい止まらなくなっちゃうの(笑)。私みたいな人はきっと多いと思うわ。
孤独に日々を過ごしているという方も多いですもんね。
そうよねえ。もしAIが自然に話を聞いてくれたら、孤独死も防げるんじゃないかと思うの。
団塊の世代がこれからますます高齢になっていくでしょう。だから、ロボットやAIが生活を支えてくれる存在になったら、本当に心強いわ。
今日はおばちゃんの思い出がたくさん聞けました。ありがとうございました!
おばあちゃんの思い出をAIで"見える化"する体験は、忘れていた記憶を呼び起こし、会話を広げてくれました。
では、こうした体験をより安全に、そして思い出に近い形で楽しむためにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、LINEヤフーのAI倫理・ガバナンスユニットメンバーのみなさんに「生成AIを家族で安心して楽しむためのポイント」について伺っていきます。
おばあちゃんの思い出をAIで再現することで、会話がぐっと広がりました。ただ、実際に使うときに注意することもありそうですよね。
はい。まず大切なのは「権利関係」です。特定の人名や作品名を入力してしまうと、著作権や肖像権を侵害してしまう恐れがあります。生成した画像が他人の権利を侵害しているかもしれないと感じた場合は、公開せずに個人の範囲で楽しむのが安心です。
また、使うツールの利用規約や注意事項に目を通しておくことも大切です。
なるほど。では、思い出をよりリアルに再現したいときは、どうすればいいでしょう?
ポイントは「できるだけ具体的に言葉にすること」です。
服装や場所、雰囲気、時代などを細かく伝えていただくと、精度が上がります。たとえば、最近知り合った友人に当時のことを説明するつもりで書くとイメージが伝わりやすいですよ。
おばあちゃんとのやり取りでも、まさに「髪型は短く」「Tシャツ姿で」と修正して近づけていきましたね。
一度で理想の画像になることは少ないので、「ここをこう直して」と追加で伝えるのがコツです。そのやり取り自体が会話になり、楽しみにもつながります。
思い出と完全に同じにならなくても、それをきっかけに話が弾むのが面白いですよね。
まさにそこが大事なところです。「少し違うけど懐かしいね」というやり取りも、コミュニケーションを深めるきっかけになります。
最後に、今後AIはどんなふうにシニアや家族の役に立っていくと思われますか?
画像を作ること以上に「話し相手」としての役割が広がっていくでしょう。
最近は音声で自然に会話できる技術も進化していて、操作が苦手な方でも声だけで使えるようになります。思い出を語る相手として、あるいは日常の学びを支えるパートナーとして、ますます身近な存在になっていくはずです。
ありがとうございました!
おばあちゃんの記憶をAIで見える化する体験を通じて、世代を超えたコミュニケーションの可能性が見えてきました。
大切なのは、完璧な再現を目指すことではなく、AIをきっかけに「そうだったね」「懐かしいね」と会話が広がること。
安心して楽しむための注意点を押さえつつ、服装や場所、雰囲気などを言葉にして伝えれば、AIは思い出を引き出す会話のパートナーになるはず。
年末年始や帰省のタイミング、家族や友人と過ごすひとときに。
「思い出を語り、AIで形にする」体験を、ぜひ身近に取り入れてみてください。
取材日:2025年9月9日
文・取材/島影真奈美 企画・編集/ヒャクマンボルト
※本記事の内容は取材日時点のものです
LINE AIは、「LINE」のホーム画面から専用ページにアクセスし、友だちと話すように質問や情報収集、画像生成などを無料で楽しめるサービスです。
今回、おばあちゃんと島影さんが体験したのは「LINE AI」の画像生成機能。
たとえば「黒い猫をキャラクターのように可愛く描いて」と入力すると、条件に合わせた画像を生成し、ダウンロードやシェアも可能です。