LINEギフトの今と未来 サービス概要からEC業界における特徴、ショップ活用事例まで

リーダーズ
LINEギフトのイベントでスピーチを行う人物。背景には「LINE GIFT」のロゴが見える。

新機能の追加やUI改善など、"相手ありき"のECサービスとして進化を続けるLINEギフト。
8月20日に開催したLINEギフトの報道機関向け説明会ではサービス責任者の嘉戸(かど)が登壇し、LINEギフトの魅力や市場動向、成功事例などを紹介しました。本記事では、その内容の一部と編集部にて追加取材した嘉戸のインタビューをお届けします。

女性が笑顔でカメラを見つめている。白い背景に、ビジネススーツを着用。
嘉戸彩乃かどあやの
LINEギフト責任者、執行役員。2015年LINE株式会社入社。事業戦略室にて新規事業の立ち上げに携わり、2016年設立のLINEモバイル株式会社にて代表取締役社長を務める。2020年LINE全体のマーケティング・広報責任者を経て、2023年より現職。

ギフト市場、LINEギフトについて

ギフト市場全体について

国内ギフト市場の回復傾向を示すグラフ。2024年には11兆円を超える予測。

ギフト市場はコロナ禍で一時的に縮小しましたが、2022年から再び回復し、2024年は11兆円予測とされています。日本の小売市場全体が130兆円超の規模であることを考えると、ギフト需要は約8%に相当します。
特に、ソーシャルギフトは2020年頃から注目を集めています。これは、コロナ禍の影響で直接会うことが難しくなった中、オンラインで贈り物をする需要が高まったためと考えられます。

主要なギフト種別を説明。法人ギフトやカジュアルギフト、フォーマルギフトの分類。

ギフト市場には大きく分けて3つの領域がある

LINEギフトはどんなサービス?

LINEユーザーの約5人に1人がLINEギフトを利用している統計情報。

LINEギフトは、LINEを通じて友だちとギフトを贈り合うことができるコミュニケーションサービスです。そのため、一般的なECサイトに比べてコミュニケーションツールとしての側面も強いサービスです。
2015年にサービスを開始し、累計ユーザーは3,500万人を超えています(2024年7月時点)。

LINEギフトの年間利用者数※は、贈った人が約1,000万人、もらった人が約1,500万人です。LINEユーザーの5人に1人が年間でLINEギフトを利用していることになります。

※2023年4月~2024年3月のデータ

LINEのギフトサービスを利用する方法を説明。ホームやトーク画面からアクセス。

LINEギフトは、LINEアプリ内のホーム、トーク、ウォレットの各タブからアクセス可能です。住所を知らなくても友達に贈ることができるのがLINEギフトの大きな特徴です。

利用者の傾向を示すグラフ。購入者の約6割が女性で、20〜30代がボリュームゾーン。

利用者の約60%が女性です。年代は20~30代が中心ですが、母の日や父の日ギフトとして利用いただくケースが増えており、コアユーザーの親世代である40~50代の利用者も徐々に増加しています。

どんなギフトタイプがあるの?

eギフトと配送ギフトの2種類を紹介。eギフトはすぐ使え、配送ギフトは住所を知らなくても贈れる。

LINEギフトには、大きく分けて2つのギフトタイプがあります。
「eギフト」は、店頭でバーコードをかざして商品を受け取るタイプのギフト、「配送ギフト」は、住所を知らなくても相手に商品を直接届けられるタイプのギフトです。
最近は、品揃えの拡充などにより、配送ギフトの利用が非常に増えています。特にクリスマスなどのシーズナルイベントでは、配送ギフトの売り上げが全体の6~7割を占めることもあります。

利用シーンを紹介。日常的なお礼や誕生日のサプライズ、母の日などの季節の贈り物に活用。

LINEギフトは、LINE内でのコミュニケーションがきっかけで利用されることが多く、日常使いが主な利用シーンで、そのうち約7割が誕生日ギフトです。
LINEアプリには友だち登録されている人の誕生日が近づくと通知が表示される機能があるため、これをきっかけにギフトを贈るケースも多く見られます。

シーズナルイベントでの売上成長を説明。イベント当日に流通額が伸びる特徴を持つ。

日常使いの他にも、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデー、母の日、父の日を中心にシーズナルイベントでの利用も伸びています。
LINEギフトは、イベント当日に利用が急増するのが大きな特徴です。従来のECサイトと異なり、LINEギフトではギフトを贈るという行為とLINE上でのメッセージを通じて「気持ち」を当日に届けることができます。

特に今年の母の日と父の日では、いずれも当日の流通額が前年比160%超えとなり、1日における流通額の歴代1位・2位の記録となりました。LINEアプリのホームやトーク内に限定エフェクトが登場することで、ユーザーに「今日は母の日」という気づきや贈るきっかけを与えることができ、うっかり忘れていても当日にギフトを贈ることができます。

他にも、「いい夫婦の日」「猫の日」「ひな祭り」など、世の中の記念日や年中行事に対応しています。LINEの特性を活かし、人と人が関わり合うコミュニケーションの中でギフトを贈るという、特徴的な集客方法を展開しています。

「相手がいる」ギフトサービスならではの機能や仕掛け

ギフトサービスの特別機能を紹介。受け取った人が色や香りを選べ、名前を刻印できる。

LINEギフトが大切にしているのは、「相手ありき」という考え方です。自分のために買うのではなく、相手がいるギフトサービスだからこそ、贈った相手に確実に喜んでもらえる「はずさないギフト」を贈れる機能開発に力を入れています。

1)もらった人が色や香りを選べる機能
もらった人がリップの色やパフュームの香りを選び直せる機能です。ビューティー商品は相手の好みがわからないという方も多いので、はずさないギフトを贈るための工夫です。

2)相手の名前を刻印できる機能
相手の名前やモチーフを刻印できる機能で、今年の母の日でも非常に好評でした。直近では贈られた側で好きな刻印を入れられるようになっており、たとえば、出産祝いで子どもの名前を刻印したいという場合、贈られた後に自分で名前を追加することができます。

ギフトサービスの特別機能。ほしいものリストとメッセージカードの利用が可能。

3)ほしいものリスト
自分が欲しいギフトを登録できる機能です。このリストを見ることで、贈る側が相手の希望を把握しやすくなり、ギフト選びに役立ちます。

4)メッセージカード
コミュニケーションの一環として、メッセージカードを添えることができます。思い出の写真や動画と共に贈ることで、より感動的なギフト体験を提供します。

季節に合わせた商品提案。サマーギフトや敬老の日、猫の日などの特集を企画。

商品をどうやって見せるのか? 売り場づくりの重要性

また、LINEギフトでは、実際の店頭で陳列を工夫するように、LINEギフト上での商品の見せ方や売り場の作り方に非常にこだわっています。
多くのユーザーは、具体的なギフトを決めずにLINEギフトを訪れます。利用シーンや贈る相手は思い浮かんでいるものの具体的な商品が決まっていないことも多いため、提案型のサービスを提供しています。

たとえば、LINEギフトのトップページには、誕生日ギフトや季節のギフト(夏ギフトなど)への入り口があります。特に誕生日ギフトは、利用シーンの7割を占めるため、特別感を意識した売り場づくりを行っています。また、ショップと協力してメッセージカードや専用のギフトボックスを用意するなど、特別な仕様の商品を提供しています。

参考)「贈りたい気持ち」を高める LINEギフトの商品を「魅せる」工夫とは?(LINEヤフーストーリー)

ギフト需要に応じた売り場づくり。様々な切り口でギフト選びが可能で、限定商品も提供。

ユーザーが商品を探しやすいように、多様な切り口を設けています

EC業界におけるLINEギフトの特徴とショップの活用事例

EC業界におけるLINEギフトの特徴。即決購入や他ECとのカニバリゼーションが起きにくい。

次に、EC業界におけるLINEギフトの3つの特徴と、具体的な成功事例をいくつかご紹介します。

1)即決購入 ユーザーが比較検討せず、その場で購入を決定
LINEギフトは従来のECとは違い、他サイトとの比較検討が起こりづらい傾向にあります。
何を買うか決めないでサービスに来訪するユーザーが多く、"特定のブランド"を探すというよりも"ギフト商品"というモチベーションで探されるため、商品画像や専用のセットなどギフト向けのものをLINEギフト上で見つけ、そのまま購入されるのが特徴です。

商品の見せ方改善で売上向上。カレーの商品写真を工夫して人気商品に成長。

事例1:にしき食品(NISHIKIYA KITCHEN)
2021年6月に出店。コロナ禍をきっかけにソーシャルギフトに注目。パッケージや商品名を工夫(例:大辛カレー食べ比べセット)し、月間2位の人気商品に。
詳細)NISHIKIYA KITCHENが改善を重ねることでたどり着いた、ギフト商品の魅せ方(LINEギフト法人サイト)

LINEギフトの商品戦略。ユーザーニーズに合わせた商品改善で、売上が大幅に増加。

事例2:シュゼット(アンリ・シャルパンティエ、C3(シーキューブ))
2021年4月に出店。再配達が不要なポストイン商品や父の日での焼きティラミスのヒットなどで、両ブランド合わせてのLINEギフトでの売上は2年で2倍に。
詳細)プラットフォームの特徴を知り、商品開発に活かす。洋菓子ブランドのシュゼットがLINEギフトでヒットを生むまで(LINEギフト法人サイト)

2)カニバリゼーションが起きない 自社サイトと競合せず、新たな販路を提供
通常のECと異なる導線・動機付けで商品を訴求できるため、新たな販路開拓に繋がります。自社ECの場合は検索からの流入が主な経路かと思いますが、LINEギフトは99%がLINEからの流入です。訪れる理由もギフトきっかけという、通常とは異なる入口になります。

ギフト選びの悩みを解決するため、色や香りを選べる機能を導入。売上は3倍以上に成長。

キールズの誕生日限定商品がLINEギフトで販売。通常版と比べて月平均7.7倍の売上規模。

事例3:日本ロレアル(イヴ・サンローラン・ボーテ、シュウ ウエムラ、キールズなど)
コロナ禍での気持ちの伝え方に注目し2022年に出店。誕生日向けの限定商品の開発や、色や香りを選べる機能の導入により、売上を大きく伸ばす。
詳細)日本ロレアルがLINEギフトで仕掛ける これからのソーシャルギフト戦略(LINEギフト法人サイト)

3)ギフトシーンを起点にしたポジティブな顧客接点、ブランド体験を提供
「ギフト」というポジティブな体験と必ずセットで顧客接点を持つことができるので、商品自体への認知の質が向上しやすいのも特徴です。

ビールのギフトセットと感謝のメッセージカード。特別な贈り物としての演出が施されている。

事例4:ヤッホーブルーイング(よなよなエールなど)
ファンコミュニティーを大切にするという文化の中で、LINEギフトの活用により「ファンが新たなファンをつくる」状態を目指した。父の日では専用のセットを開発し、特別な体験づくりを行うことでポジティブなブランド認知を獲得。
詳細)特別なギフト体験がファン獲得に繋がる。ヤッホーブルーイング流コミュニケーション術(LINEギフト法人サイト)

今後の注力テーマ

今後の注力テーマは商品、機能、シーンの3つ。多様なギフトシーンに対応するラインアップを拡充。

今後は、利用者層をさらに広げ、利用回数や単価幅もより広げていきたいと考えています。
「相手ありきのコミュニケーションサービス」をさらに強めることを目指し、具体的には、商品、機能、シーンの3つの分野で取り組みを進めていきます。

ギフト市場やユーザーの行動は時代とともに変わってきました。たとえば、年賀状は減ってきていますが、LINE上での「あけおめスタンプ」のやりとりは増えています。ギフトも同様で、オフラインの儀礼的なものは減っているかもしれませんが、身近な人への「お疲れさま」や「おめでとう」など、気持ちをデジタルで表すことが増えているのではないでしょうか。

LINEギフトは「相手ありき」のECサービスの磨き込みにより、ユーザーに「はずさないギフト」を提案できていると自負しています。
10年後には、さらに進化したギフト体験をご提供したいと思っていますので、ご期待ください!

プレゼンテーションを行う女性がステージに立ち、聴衆が座っている。スクリーンにはスライドが表示。

※8月20日に実施された説明会の内容を一部抜粋、再編集しています

ブランドの価値を守りながら「ユーザーに喜ばれる体験」を届ける

ここからは、報道機関向け説明会を終えた嘉戸に実施したインタビューの内容をお届けします。

――LINEギフトに出店しているショップの方からのフィードバックで印象に残っているものはありますか?

「LINEギフトを通じてユーザーに喜ばれる体験を提供できた」と言っていただけたときは、本当にうれしかったですね。ちなみに、LINEギフトのレビューは平均点が4.6~4.7とかなり高いんです。「良いギフト体験を共有したい」という気持ちで書いてくださっている方が多いのではないかと思っています。
そのブランドの価値や世界観を大切にしながらユーザーに届けられて、それが良い思い出になるというのは、LINEギフトに出店いただいているショップにとっても、私たちにとっても、そしてユーザーにとってもハッピーなことだと思います。

女性がテーブルに肘をつき、笑顔で話している。明るい室内でリラックスした雰囲気。

――これからLINEギフトに出店を検討するショップへのアドバイスはありますか?

まず「自分たちの商品をどう見せるか」を考えていただけたらと思います。たとえば、大阪王将さんのタイムセールでは、大容量の商品が冷凍庫に入るかどうかをギフト担当者が冷凍庫を使って確認し、その写真をコンテンツとして準備しました。そうすることでユーザーが安心して購入でき、大きな売り上げにもつながりました。

大阪王将の餃子とチャーハンの特売情報。冷凍庫に入るか試している様子が写真で紹介。

――最後に、ユーザーに向けて伝えたいことがあれば教えてください。

LINEギフトには、この1年半で多くの機能が追加されました。そのため、2~3年前までに使っていただき、その後利用されていないという方には、ぜひLINEギフトが大きく進化していることを知っていただきたいですね。
説明会でもお話しましたが、贈られた方が色や香りを選べる機能、名入れ機能などが追加されていますし、誕生日や季節のイベントのギフトパッケージも増えていますので、ぜひ「売り場」をのぞいてみていただけたらと思います。

私も、出産祝いへのお返しでLINEギフトを使ったことがあります。お祝いをくださった方々の(LINEギフトの)欲しいものリストから簡単に贈ることができて、本当に助かりました。出産後でバタバタしていて余裕がなかったときに、ギフトを選んで贈るのがちょっと大変だったのですが、この機能のおかげでスムーズに贈ることができました。

さらに、LINEギフトでは誰に何回ギフトを贈ったかがわかるんです! 私は先日、同じ人に12回もギフトを贈っていたことに気づいてびっくりしました(笑)。たしかに、長い友人であり部下なので、気づけばそれくらいになっていたんですよね。

こうやって贈った記録を振り返ることができるのもオンラインギフトならではだと思います。このような機能を提供することで、ユーザーがギフトの思い出を振り返りやすくなったらうれしいですね。

女性が横を向いて笑顔で話している。白い背景に、ビジネスカジュアルな服装。

取材日:2024年8月20日
※本記事の内容は取材日時点のものです

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