なぜ雨雲の動きが分かる?「雨雲レーダー」の仕組み

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雨が降る都市の景色と「雨雲レーダーの仕組み」の文字。

毎年、梅雨の季節や夏のゲリラ豪雨など、突然の雨に降られてしまって困ったという方も多いのではないでしょうか。そんな時、雨の予報に便利なのが「雨雲レーダー」です。
雨雲レーダーの仕組みや今後の展望について、責任者の田中に聞きました。また、雨雲レーダーの便利な使い方もご紹介します。

メガネをかけた男性が地球の画像を背景に微笑んでいる。
田中 真司(たなか しんじ)
民間気象会社、一般財団法人気象業務支援センターを経て2008年にヤフー入社。気象予報士。Yahoo!天気情報、Yahoo!災害情報の企画担当として10年以上天気・災害の業務に従事。「雨雲レーダー」の開発や「Yahoo!防災速報」の立ち上げに携わる。「Yahoo!天気・災害」の責任者として大阪拠点の開発チームを立ち上げ、2014年より現職。

雨雲レーダーとは

Yahoo!天気アプリの雨雲レーダーは、「今降っている雨とこれからの予測」を確認できるシンプルな機能です。天気予報は必ずしも当たるわけではない、という課題を解決するために、雨雲レーダーを活用していただきたいと考えています。
普段の生活はもちろん、スマホを使うときは現在地情報をオンに設定すれば、出張や旅行先でも雨雲の動きがわかります。これにより、雨に濡れずに済んだり、雨が降っているときに「もう少し家にいた方が良さそうだ」と判断したりできます。

雨雲の情報自体は、気象庁から配信されている情報をいくつか組み合わせたものを地図上に表示しています。気象庁が提供するデータは他社も使用しているため、「どのようにユーザーに便利に使っていただくか」が、他のサービスとの差別化の重要なポイントだと考えています。
雨雲レーダーは、見やすさを特に重視しているため、弱い雨と強い雨が直感的に理解できるような色合いで表示するなど、細部にまでこだわって作り込んでいます。

雨雲レーダーのアプリ画面。帯広付近で降水量を示す色分けがある。

淡いブルーから濃い赤までのグラデーションで、降る雨の強さを表現しています。淡い青より濃い青、青より緑や黄色、赤の方が強い雨を予測しています。濃い赤で表示されている場所は、1時間に80ミリ以上の非常に強い雨(※1)が降る予想です。雨雲レーダーで赤い部分が近づいてきたときは、安全な建物の中などに避難しましょう。

※1 1時間に80ミリ以上の雨:
息苦しくなるような圧迫感があり、その下にいると恐怖を感じ、傘をさしても全く役に立たないほどの雨で。また、雨による災害が発生する可能性があるため、厳重な警戒が必要。
参考:雨の強さと降り方(気象庁)

雨雲レーダーの仕組み

雨雲レーダーの仕組みを簡単に説明します。
まず、気象レーダーから電波(マイクロ波)を発射して、

  • 雨粒に反射する強さ(エコー強度)で雨の強さを判定
  • 電波が戻ってくる時間で雨粒までの距離を測定
  • 戻ってきた電波の強さから雨の強さを観測

さらに、戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用することで、降水域の風を観測でき、雨雲の動きがわかります。

レーダーが電波を発射し、雨や雪の粒で反射される様子を示す図。

気象レーダーは現在、全国20カ所に設置されています。日本は山地が多く、レーダーの設置場所によっては地形の影響を受けることもあります。そのため、国土のほぼ全域をカバーするようにレーダーを配置しています。このように観測した雨の強さの分布は、「降水短時間予報(※2)」や「降水ナウキャスト(※3)」など、雨雲の予報の作成にも利用されています。

日本地図に気象庁のレーダー配置が示され、主要都市が記載されている。

※2 降水短時間予報:
解析雨量によって得られた降水量分布を利用して降水域を追跡し、それぞれの場所の降水域の移動速度を使って降水分布を移動させ6時間先までの降水量分布を予測したもの。
※3 降水ナウキャスト
気象レーダーの観測データを利用し、250m解像度で降水の短時間予報を提供したもの。

メガネをかけた男性がホワイトボードに図を描きながら説明している。

雨粒の形は「肉まん」型?

国土交通省の「XバンドMPレーダー」という、雨粒の形をとらえることができるレーダーでは、縦横の波を同時に発射することで、雨粒の形がわかります。「霧雨」「大雨」「豪雨」など、日本の雨は強さや降り方でさまざまな表現がありますが、それと同じように雨粒の形も変化します。
一般的に、雨粒は縦長のしずくのような形や丸い形をしていると思われがちですが、実は「豪雨」の際に降る大きな雨粒は、落下中に空気抵抗によって上下につぶれ、扁平(へんぺい)化して、おまんじゅうや肉まんのような形になります。

青空を背景に、大中小の水滴が並んでいる

小さな雨粒は表面張力で球に近い形。それらがまとまって大きな雨粒になると、落下速度が速くなり空気抵抗も大きくなるため、底が平らな「おまんじゅう型」になる

今後の展望

雨雲レーダーを多くの方に使っていただけるようになったのは最近のことですが、実はこの機能は2008年ごろからあります。当時は「雨雲ズームレーダー」という名前で、気象庁の1kmメッシュレーダーを使って10分単位で更新していました。現在は、気象庁の気象レーダーと国土交通省の「XバンドMPレーダー」を合成した高解像度ナウキャストを気象庁が配信しており、これを利用することで1分毎におよそ250m四方という非常に細かい雨の分布がわかるようになっています。

日本人は雨に敏感だと感じます。それは、雨が降ることで外出やイベントの開催、通勤・通学ルートなど、さまざまなことが左右されやすいからではないでしょうか。また、梅雨やゲリラ豪雨、台風など大雨による被害を受けることもあります。

そんな方々に、雨の情報をよりわかりやすく、自分でも予測できるような形で提供したいと考えています。ユーザーの関心事である雨の情報を、正確に、適切なタイミングで提供することが、私たちのミッションです。
現在は多くの方がスマートフォンのアプリを使って雨の情報を確認していますが、新たなデバイスが登場し、多くの方がそれを使うようになったときも、雨雲レーダーの機能を提供することで、みなさまの生活がより便利になるようにサポートしていきます。

雨雲レーダーの便利な使い方

雨雲レーダーは、こんなときに使っていただくのがオススメです。

雨雲レーダーを使ってほしいのは...

  • 朝出かける前に傘を持っていくか、洗濯物を干したままにするか迷う時
  • 夜中や翌朝の雨雲の動きを知りたい時
  • 屋外で長時間の仕事をする時
  • 野外のスポーツ観戦、音楽フェスに出かける時
  • ゲリラ豪雨や台風が近づいている時

雨雲の予測時間は15時間先まで

雨雲の情報は、15時間先まで確認できます。通勤・通学で家を出る前に確認しておけば、帰りが遅くなったときの急な雨に備えることができます。また、前日の夜に翌日の雨が降る時間帯がわかっていれば、「明日は朝の通勤時間帯が雨だから、少し余裕をもって家を出るために早起きをしよう」と考えることも可能です。

雨雲レーダーのアプリ画面が4つ並び、降雨予測が示されている。

雨雲レーダーの画面下部のシートに、いつ雨が降り始めるのか、いつ雨が止むのか、いつまで雨が続くか表示

シートを引き上げると、時間ごとの降雨量予測グラフや雨の強さなど、より詳細な情報を確認できます。雨の強さは、「ポツポツ」「ザーザー」「激しい雨」「猛烈な雨」など、8段階で表示され、視覚的にわかりやすく把握できます。

線状降水帯も表示

線状降水帯(※)が発生すると、降水域が雨雲レーダー上に楕円で表示されます。1時間前から最大30分先までの10分間隔で、発生の有無と推移を確認できます。線状降水帯の発生中は、画面上に注意喚起のメッセージが表示され、発生地域を把握できます。

※線状降水帯: 次々と発生した積乱雲が線状に列をなして並び、数時間同じ場所を通過または停滞することで、広い範囲に集中豪雨をもたらす現象

雨雲レーダーのアプリ画面に降水量の情報が表示されている。

天気の急変を見逃さない「プッシュ通知」

急な大雨やゲリラ豪雨などの天気の急変に気づくためには「プッシュ通知」の設定がオススメです。現在地と連動させておけば、どこにいる時でも雨が降りそうなタイミングでプッシュ通知が届きます。

メガネをかけた男性が地球の画像を背景に微笑んでいる。

マンガ「雨雲レーダー」の使い方

1コマ目。女性が「今日は雨だし家でのんびりしよう」と言っています。友人が雨雲レーダーを確認し、14時頃に雨がやむと知らせます。2コマ目。女性は「降ったら行きたくないよね」と言い、友人と一緒にお昼寝をすることにします。3コマ目。2時間後、寝過ごしてしまったことに気づきます。しかし、外は晴れているので出かけることにします。4コマ目。カフェでお茶を楽しんでいますが、帰りの時間を確認し忘れたことに気づきます。雨が1時間後にやむ予報を見て、もう一度お茶を楽しむことにします。友人は「まあ傘持ってこなかったし、今日はいいか」と言っています。

関連リンク

※ヤフー株式会社のコーポレートブログに掲載した記事を一部修正し再掲載しています。

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