エンジニアスキルを生かし、
デザイナーとして歩む道も
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エンジニアスキルを生かし、
デザイナーとして歩む道もある
笹尾 建斗(ささお けんと)2017年入社
エンジニアとして新卒入社後、デザイナーとエンジニアを兼務し「Yahoo!ショッピング」のUI/UXデザイン構築に携わる
※この記事は、2022年に取材・掲載したものを一部修正して再掲載しています。サービス名称や所属は取材当時の内容です。
大学では情報デザインを専攻し、心理学や色彩心理学、プログラミングなどを学びました。グラフィックスメインというよりも、工学寄りの内容で、プログラミングの技術を用いてデザインをどう構築するかの学びが多かったです。そのため、現在手がけているUI/UXデザイン、ビジュアルデザインに関しては独学で学びました。
大学4年生のときには「感性情報学」がテーマの研究室に所属していました。感性情報学とは「人の感性」を数値化し、分析するものです。
「抽象的でとらえにくい『感性』を数値化できるのか!」と感銘を受け、この手法をもっと掘り下げて学びたいと思い、研究室に残るかたちで大学院に進みました。
大学院では「歩きスマホ」の解消をテーマに研究を行い、歩きスマホを制限するアプリを開発しました。当時からスマートフォンなどで、ユーザーの行動を感知し「移動中の端末使用を中断させるアプリ」はありましたが、多くはユーザーの行動を正確に把握できないものでした。そこで、スマートフォンに搭載されている加速センサーやGPS、カメラによる顔認識などを組み合わせたシステムを開発したところ、高い精度で歩きスマホを検出することに成功しました。そして、その成果をiOSアプリとして形にし、リリースした経験があります。
理由はさまざまですが、決め手となったことが二つあります。一つ目は、当時ヤフーがミッションとしていた「情報技術で人々や社会の課題を解決する」という内容に大きく共感したことです。もともと、学生時代の専攻テーマも「情報分野で社会問題を解決する」ことでした。その学生時代の経験を、社会人になって生かしたいと考えました。二つ目は、「ジョブチェン(現、社内公募制度)」制度を知ったことです。これは、社内のほかの職種にチャレンジしたい場合に、自己申告でキャリア変更に挑戦できる制度です。
就職活動をしていた当時、エンジニア職かデザイナー職のどちらを選ぶか迷いがありました。デザイナーになりたい気持ちがあったものの、デザインの勉強は独学だったため、「現状、自分の力が通用するのか」と不安がありました。また、エンジニアとしての経験をもっと積みたい思いもありました。
大学院でもプログラミングを学び、アプリを開発したり論文を発表したりしたので、まずはそのスキルを生かし、エンジニアとして活躍し、その後デザイナーにキャリアチェンジしようと決めました。そんな私にとって、この制度は大変魅力的でした。
面接では、エンジニアとして入社し、ゆくゆくはデザイナーに転向したい旨を正直にお伝えしました。すると、面接担当者の方に「前例がないので実現できるかどうかはわからない。でも、新しい分野に挑戦できる環境があるから、思い切ってやってみたらいい」と背中を押してもらったことが、いまでも印象に残っています。
当時、学会の発表などがあり、ほかの方よりも就職活動を始めるのが遅く、エンジニアとしてもデザイナーとしても未熟な私を採用してもらえるかがとても不安でした。
実は、大学4年生のときにもヤフーに応募した経験があります。いま思うと、そのときはまだやりたいことが固まっていませんでした。
それから2年後に再チャレンジしましたが、自分が何をしたいか明確になり、面接で自分の考えをしっかり伝えられました。学会で自分の論文を発表した経験も生かせたと思います。たとえば、論文発表後の質疑応答で、批判的なコメントや質問をいただくこともあります。そのとき、自分の考えを理論的に述べるだけでなく、相手の方に理解してもらえるように伝え方を工夫できたことで、とても自信がつきました。
そういった経験から、面接では飾らず本音を伝えられ、実際にその点を評価したと、後日のフィードバックで伺いました。
希望通り、エンジニア職として入社し、現在はデザイナーが主務でエンジニアのチームも兼務しています。具体的な業務としては、「Yahoo!ショッピング」のUI/UXデザインの構築を担当し、Webページのデザインなどをしています。また、UIデザインや情報設計のルールなどをまとめた「UIガイドライン」管理のプロジェクトを立ち上げ、ガイドラインの策定や構築、プロジェクトマネジメントも行っています。
このプロジェクトの立ち上げが、デザイナーを主務にするきっかけでした。
以前は、「Yahoo!ショッピング」に明確なガイドラインがない状態で、担当者によってデザインに少しずつズレが生じていました。エンジニアとして、基準を定める必要性に気づき、整備を提案しました。その経験を通して「デザイナーを主務にしたい」と感じ、上長に相談したところ「UI/UXデザインをやってみないか」とのお話をいただきました。大変ありがたいことに、当時「エンジニアでありながら、UI/UXデザイナー目線でガイドラインを考えられる社員がいる」と、デザイン部署内で私のことが話題になったそうです。
ユーザーがサービス利用時に必ず目にする重要なデザイン部分を担当できることです。また、デザインだけでなく使い勝手の良さなど、さまざまな視点から提案できることも魅力ですね。「Yahoo!ショッピング」は日常的に利用されるサービスなので、肯定的な意見をいただき、ユーザーの助けになれたと感じたときは、とてもうれしいです。UI/UXデザインは仕様に沿いつつ、ユーザーの使いやすさも反映する必要があります。難しい業務だと感じる方もいるかと思いますが、さまざまな要件をかなえたり、いかにデザインをきれいに見せるかを考えたりするのはとてもおもしろいです。
これまで通り、デザイナーを続けつつ、開発分野にも携わりたいと思っています。プログラミングの知識を持ちながら、デザインをメインに仕事をする、デザイナーとエンジニアという二つの顔を持つ自分だからこそ、見えるものがあると思います。
具体的には「UI/UXと言えばこの人に聞けば間違いない」というような存在を目指しています。そのために、一つひとつの技術や知識をさらに深め、安定した力を身につけるべく、日々業務に取り組んでいます。
私の場合は、大学の授業で学んだアプリのルールと、実際のアプリのルールが異なることが気になり、AppleのHuman Interface Guidelineを見て、自分なりに答えを導き出すということをしました。大学でUI/UXデザインを学ばなかったにもかかわらず、この経験によってUI/UXデザインの知識を深められ、いまの自分があると感じています。
このように、さまざまなことに挑戦すると視野が広がり、新たな発見があります。未知の領域や経験が浅い分野でも「やってみたい!」という気持ちがあれば、怖がらず、ぜひチャレンジしてみてください。