自然言語処理で実現する新し
いユーザー体験。圧倒的なス
ケールのデータが強み
自然言語処理で実現する新しいユーザー体験。
圧倒的なスケールのデータが強み
伊奈 拓郎(いな たくろう)2018年入社
画像処理の研究室を修士号で卒業し、ヤフー(現LINEヤフー)にエンジニアとして新卒入社。自然言語処理をメインに扱う部署に配属し、「Yahoo!ショッピング」などのEコマースのサービス改善に従事。
※本記事は2025年8月に取材したものです。サービス名称や所属は取材当時の内容です。
2018年に新卒でヤフーに入社した伊奈拓郎です。大学院時代は画像処理系の研究室に所属し、基礎研究としてはデータを自動的に分類するクラスタリング手法、応用研究としては調理中の画像内の食材を識別するというテーマに取り組んでいました。
就職先を検討する際に、「機械学習を実社会に応用して、社会に貢献できる仕事がしたい」という思いがありました。当時、研究室の先輩方はtoBのメーカーに進むケースが多かったのですが、私はユーザーに直接影響を与えられるtoCの企業を志望していました。そんななか、ヤフーに勤めている先輩がOB訪問で研究室に来てくださり、仕事の話を聞いたことをきっかけに選考を受けることにしました。
入社を決めた理由は、まずサービスのユーザー数が圧倒的に多いこと。自分の取り組みを多くの人に届けられる点に大きな魅力を感じました。また、機械学習においては大量かつ多様なデータが不可欠ですが、その点でもヤフーは国内トップクラスの環境であり、この会社なら自分のスキルを最大限に生かせると感じたことも大きかったです。
現在は、「Yahoo!ショッピング」を中心としたEコマース事業において、自然言語処理の技術を応用し、サービス改善を目指すチームのリーダーを務めています。
取り組み事例として、2つご紹介します。1つ目は、検索機能の改善です。たとえば「Yahoo!ショッピング」でユーザーが「メロンソーダ」と検索した場合、人間であれば炭酸飲料を探しているのだと直感的に理解できます。しかし、コンピューターは学習していない限り、その意図を把握できません。
そのため、「メロンソーダ味の歯磨き粉」や「メロンソーダ色の皿」といった商品が検索結果の上位に表示され、ユーザー体験が損なわれる可能性があります。そこで自然言語処理を用いて、検索クエリから「ユーザーの意図した商品カテゴリは何か」を推定し、検索精度の向上につなげる研究を行っています。
2つ目は、商品の属性補完です。「Yahoo!ショッピング」では出店ストアが商品情報をデータベースに入稿しますが、カテゴリの入力漏れが発生することがあります。カテゴリの情報が欠けていると、本来表示されるべき商品が検索に出づらくなってしまいます。これを解決するため、商品の情報からカテゴリなどの属性を自動的に推定・補完し、データベースに登録する仕組みを導入しました。
これらの技術の一部は他のサービスにも展開しています。特に検索クエリからカテゴリを推定する技術は、「Yahoo!オークション」「Yahoo!フリマ」「Yahoo!検索」でも活用されています。
開発チームとしてのコーディングやコードレビューのほか、サービスの企画・運営を担う事業側との連携のため、定期的にミーティングを行っています。事業側から「こういう課題を解決できませんか」と相談を受けることもあれば、こちらから「この技術を使えばこういうことができます」と提案することもあります。ビジネス課題と技術を結びつけ、実際のサービス改善へとつなげていくことが、私たちのチームの役割です。
目的を見失わないことです。技術者はつい「技術を使うこと」に目が向きがちですが、重要なのは、そのアプローチがサービス改善に有効か、費用対効果はどの程度か、そもそも本質的な課題は何かをしっかり考えることです。そのため、チームメンバーと議論を重ねながら、最適なアプローチや施策を選ぶことを大切にしています。
もし効果が薄いのにコストの高い最新技術を導入してしまうと、後々、技術的負債を抱えるリスクがあります。技術的負債が積み重なれば、維持や解消にリソースが割かれ、新たな改善に取り組む余力が失われてしまいます。だからこそ、施策の選択は慎重に行い、長期的にサービスを改善し続けられるよう意識しています。
印象深かったのは、2022年に「Yahoo!オークション」関連のプロジェクトを任されたときのことです。これは、先ほど述べた検索クエリからカテゴリを推定する技術を、横展開した際のエピソードになります。
当時から、「Yahoo!オークション」では検索クエリからカテゴリを推定する機能が求められていました。最初は、すでに「Yahoo!ショッピング」向けに開発していた技術をそのまま流用できるのではないかと考えました。しかし実際には、同じ検索クエリでも、サービスごとにユーザーのニーズが異なるという課題があったんです。
たとえば「スターバックス」という検索クエリの場合、「Yahoo!ショッピング」ではコーヒー豆やインスタントコーヒーといった商品が想定されます。一方「Yahoo!オークション」では、タンブラーやトートバッグといったグッズが求められることが多いのです。こうした違いから、「Yahoo!オークション」向けに一から仕組みを作り直す必要があると判断しました。
このプロジェクトでは、オークション事業の企画担当者と何度も打ち合わせを重ね、納得感のある機能設計をともに進めました。技術面では、自然言語処理を担う新たなAPIを構築し、仕様策定から設計、実装、検証までを一貫して担当しました。
結果として「Yahoo!オークション」のサービス改善につながり、関係者にも喜んでもらうことができました。
大きな達成感がありましたし、事業の背景や利用シーンを丁寧に把握したうえでプロダクトを設計する重要性を強く実感したプロジェクトです。この経験は、プロジェクトを進める際の自分の軸になっています。
技術調査を行う際に「応用先を意識する」ようになったことです。学生時代は、「どれほど精度が上がったか」といった技術的な指標にフォーカスしてましたが、いまは「この技術がサービスにどう生かせるか」「実装にあたって、どんな課題がありそうか」といったビジネス視点を重視するようになりました。
また、これは道半ばですが、リーダーとしてマネジメントスキルを磨いていきたいとも思っています。周りの先輩方から学んだり、本を参考にしたりしながら、より良いチームづくりを目指したいです。
まず周りに優秀な先輩・後輩が多いことです。スキルが高いだけでなく、困ったことがあれば親切に教えてくれる方ばかりで、とても恵まれた環境だと実感しています。マネジメントや技術の面でも、見習いたい人がたくさんいます。
もう1つは、サービスのスケールの大きさです。私たち自然言語処理の部署で扱うAPIは、今年の初めに日次で12億リクエストを処理した実績があります。リクエスト数は現在も増えており、こうした膨大なトラフィックやデータを扱う経験は、なかなか得られません。
複数の大規模サービスを持つ強みを生かし、サービス改善に取り組みたいです。ショッピングやリユース、検索など多種多様なサービスを展開している企業は、日本国内でも多くはありません。だからこそ、これらを横断的に連携させることで生まれる価値を、さらに高めていきたいと思っています。
いまも「Yahoo!ショッピング」で得た知見を他のサービスへ展開する取り組みは進めていますが、その施策をもう一歩先に進めたいですね。サービスごとのデータ特性を生かした相互補完ができれば、さらにユーザー体験を高められるはずです。
幸い、私のチームは複数のサービスに関わりやすい立場にあります。今後も横断的なデータ活用を通じて、ユーザー体験の向上に貢献していきたいです。
現在、社内では、生成AIの活用を推進する動きが一層強まっています。こうした取り組みのなかで、「生成AIの強みとは何か」「どのように活用するのが適切か」といった知見を積み重ねていくことが重要だと考えています。そうした知識が蓄積されれば、生成AIによってこれまでにないユーザー体験を創出できるはずです。これから、その挑戦ができるのを楽しみにしています。
LINEヤフーは、国内トップクラスのユーザー数と、多様で膨大なデータ基盤を持つ会社です。データ活用しやすい環境が整っており、エンジニアやデータサイエンティストにとって、自分のやりたいことを実現しやすいフィールドが広がっています。
また、自ら手を挙げれば、新しいことにチャレンジできる風土もあります。自分のアイデアで多くのユーザーに価値を届けたいという思いのある方にとって、非常に魅力的な場所だと思います。ぜひ応募していただけると嬉しいです。