サービス成長の仕組みを解き
明かす。データサイエンティ
ストの飽くなき挑戦
サービス成長の仕組みを解き明かす。
データサイエンティストの飽くなき挑戦
橋本 秀太郎(はしもと しゅうたろう)2022年入社
SIerでの研究開発・コンサル経験を経てLINE(現LINEヤフー)へ入社。「LINEギフト」「LINEショッピング」などコマース領域のデータサイエンスチームをリードし、事業成長を支える分析を担う。自著に『改訂新版 前処理大全』。
※本記事は2025年8月に取材したものです。サービス名称や所属は取材当時の内容です。
2022年にLINE(現LINEヤフー)に中途入社した橋本秀太郎です。前職では、SIerのデータ分析系部門でのR&Dや、コンサルティング部門でのBtoBコンサルティングを担当していました。SIerやコンサルティングの仕事も非常におもしろかったのですが、データ分析の成果が直接的に自社の成果につながるような環境に次第に興味を持つようになりました。自分のスキルをもっと事業やユーザーに近いところで生かし、大きな貢献につなげたいと考え、事業会社への転職を決意しました。
当時LINEに魅力を感じたのは、まさに求めていた「データ分析が事業貢献に直結する環境」だったことです。サービスの規模が日本国内でも桁違いであり、たとえばコンバージョン率を1%改善するだけでも、事業や社会に大きなインパクトを与えられる会社だと思いました。
入社後は、データサイエンティストとして「LINEギフト」を中心としたプロダクトに携わってきました。この数年で大きく成長したサービスですが、その成長をデータで支える役割だと考えています。現在はデータサイエンティストのチームのマネジメントも務めるほか、生成AIを活用した分析高度化プロジェクトにも参加しています。
コマース領域の「LINEギフト」「LINEショッピング」を対象とするデータサイエンスチームをリードしています。事業の意思決定を支援するデータ分析や、ユーザー行動を解明するA/Bテストの設計・効果検証、将来予測モデルの開発・運用などを担当しています。
コマース領域のプロダクトにおいて、「この商品カテゴリが伸びている」「このユーザーセグメントが成長している」などの表面的な数字の伸びは、BIツールを活用すればすぐに分かります。ただ、それだけでは「なぜ伸びているのか」「どういうメカニズムで成長しているのか」までは見えてこないため、「成長の鍵となる要素は何か」を導き出す必要があります。そこで私たちがデータサイエンスの手法を用い、成長の裏側にあるユーザー行動や要因を仮説として立て、可視化やモデル作成を通して検証し、データで裏付けていきます。そうした知見を積み重ねていくことで、プロダクトが成長するメカニズムを解明していくのです。
また、現在はチームマネジメントも担っています。具体的には期初に事業戦略や前期の振り返りを踏まえて次の方針を検討し、どこに分析リソース集中させるかなどの方向性をすり合わせ、戦略やチーム体制を形にします。
チームの戦略実現のため、メンバーが迷うことなく、全力で目標に向かえる環境を整えるのもマネジメントの役割です。走り出した後も一人ひとりが迷ったり壁にぶつかったりしていないか確認し、時には課題解決に伴走しています。
1日の流れとしては、マネジメント業務の比重が大きくなっているため、最近はミーティングが多めです。メンバーや事業側と対話しながら物事を決定し、リードしていく動き方が中心になっています。
一方で、難易度の高い課題や新しい取り組みについては、自分自身も積極的に手を動かしてプロジェクトを牽引したいと考えています。そのため、たとえ短い時間であっても、意識的に作業時間を確保するようにしています。
事業の意思決定に直結する分析では、限られた時間の中で結果を出す必要があり、試行錯誤を繰り返す余裕がない場合もあります。だからこそ、常にアウトプットの精度を高めることを意識しています。成果物には必ず相手がいます。その相手が「何をなぜ求めているのか」「どうすれば期待を超えられるのか」を考えることで、作るべきもののイメージが具体的に見えてきます。そこから逆算して「何をどう作るか」を決めています。
また、品質とスピードの両立も常に意識しています。いくら仕事の品質が高くても、スピードが遅ければ途中での軌道修正は難しくなります。一方で、スピーディーにアウトプットを出せば、周囲から多くのフィードバックを得られ、品質もさらに向上していきます。
「LINEギフト」の成長要因を分析した案件が印象に残っています。このプロジェクトは、サービスが堅調に成長していたにもかかわらず、具体的な成長要因がまったくわからない状況だった中で、私たちが仮説を立て、「こういう観点で分析をしてはどうか」と提案して始まったものでした。データサイエンスのアプローチで仮説検証や分析を繰り返し、結果としてあるユーザー行動が成長の鍵となることを突き止めました。
「LINEギフト」では母の日、父の日やクリスマスなど、年間を通じて大規模なイベント施策を行っているのですが、その施策に分析の結果を盛り込み、効果検証も行いました。その結果、非常に大きなLTVの上昇を確認できました。要因分析を行い、成長のドライバーを突き止め、施策に反映し、その効果を検証して学びを積み重ねて成果を出すという、グロースハックのサイクルを一貫して回せた経験でした。
データサイエンティストが施策立案から効果検証まで一気通貫で担えるのは、この会社ならではだと思います。事業成長のサイクルをリードしながら動けたことは、自分にとって重要な経験でした。
事業やプロダクトを成長させる際の「データサイエンティストとしての動き方の型」が、少しずつ自分の中にできてきたと感じます。プロジェクトの上流の段階から関わり、自発的に提案しながら要因分析を行い、具体的な施策へとつなげていく。この一連の流れを実践できるようになったのは、大きな変化です。
もしそれがなければ、データサイエンティストの役割は「依頼を受け、その依頼に対して分析結果を返す」という限定的なものにとどまってしまいます。極端に言えば、社内発注のような関わり方になってしまうでしょう。そうではなく、課題そのものを自ら見つけ、発掘するところから関与できるようになりました。
なんといっても、データの規模が大きいことです。その分、データサイエンティストが生み出せる価値も大きくなります。ユーザー規模が数千、数万規模のサービスを分析するのもおもしろいですが、デイリーで数千万人規模に利用いただくサービスで自身の分析を生かした施策を実行できるのは、事業へ与えられるインパクトも大きく、非常にやりがいを感じる部分です。
さらに、ログ取得の粒度も非常に細かいため、どこからサービスに訪れ、どのように商品ページを探索し、購買に至ったのかなど、ユーザーの長期間の行動を詳細に把握できます。必要なデータにはすぐアクセスでき、使いやすい環境が整っています。大規模データを扱える分析基盤や実験計算基盤も充実しており、データサイエンティストにとって理想的な環境です。
また、組織のDNAとしてデータを活用する姿勢が根付いていることも魅力です。LINEヤフーはバリューに「ユーザーファースト」を掲げており、実現するための構成要素として「Always Data-driven(データを基に俯瞰で判断)」というキーワードがあります。だからこそビジネスにおいてもデータを重んじる姿勢があり、データサイエンティストと事業側の距離も近く、こちらの相談や提案も前向きに受けとめてもらえます。これまでのキャリアで多くの会社にかかわってきましたが、LINEヤフーほど全社的にデータ活用に前向きな組織はなかなかありませんでした。
データ分析によって事業を成長させる取り組みを、私一人だけでなくチーム全体で再現性高く実現できるようにしたいです。そのために重要となるのが、分析の標準化やナレッジの整備であると考え、精力的に取り組んでいます。
もう一つは生成AIの活用です。現在は、データ分析やデータサイエンスのプロセスに生成AIを組み込み、高度化・効率化を図れるかを探るプロジェクトに関わっています。責任あるAI活用のためガバナンスも徹底しながら、実際に分析を行えるAIエージェントを開発し、実用化に向けて動き出しているところです。すでに簡単なレベルの分析であれば、生成AIによる自動化が可能になっています。人間はより高度な業務に集中できるため、分析力全体の底上げにつながります。
また、AIに分析を任せるには、これまで暗黙知として存在していたプロセスを形式知化する必要があります。その結果、自然と標準化が進み、知見を組織全体で蓄積できるようになるはずです。
全社的な生成AIの活用推進です。LINEヤフーは人材もサービスの領域も多様で、数多くのプロダクトを展開しています。この強みを生かし、サービス同士を連携させ、ユーザー一人ひとりにとって便利に動くAIエージェントを生み出すため、各事業が今まさに取り組みを進めています。そうした取り組みに自分自身も関与し、これまでにないサービスの形を実現できることを、とても楽しみにしています。
これまでいろいろな企業のデータ活用を支援をしてきましたが、その経験を踏まえても、LINEヤフーはデータサイエンティストにとって理想的な環境だと思います。
もちろん、自由度が高く規模も大きい分、「自分はこれをやり切るんだ」という強い意思を持っていなければ、プロジェクトをうまく進めることはできません。ただ、その意思さえあれば、社歴に関係なく、大きく活躍できる場所です。
挑戦を前向きに後押ししてくれる土壌があるので、自発的に意思を持って取り組めば、データサイエンティストとしての価値を最大化できると感じています。目標に向かって全力で走ってくれる仲間と、一緒に挑戦していきたいです。