ブランディングの「正解」を
導き出すために。VXデザイ
ナーは違和感を見逃さない
ブランディングの「正解」を導き出すために。
VXデザイナーは違和感を見逃さない
北川尚生(きたがわ なお)2019 年 入社
LINE(現LINEヤフー)にデザイナーとして新卒入社。現在はVXデザイナーとして、LINEヤフーのユーザー体験とブランド価値を高めるため、LINEヤフーおよび各種プロダクトにおけるビジュアルデザインを担当。
※本記事は2024年11月に取材したものです。サービス名称や所属は取材当時の内容です。
大学・大学院では、主に物理的なプロダクトデザインについて学んでいました。「どんなものが必要か」とコンセプトから考えたり、ほかの領域のデザインを学んでいる方々と一緒にグループワークを行うことも多く、幅広くデザインの全体像を理解する必要があったため、就職活動の際も「全体を見渡せるようなデザイン職がいいな」と考えていました。
当時は家電メーカーを中心に見ていたのですが、ちょうど、大学のある京都にLINE(現LINEヤフー)が拠点をオープンすることを知り、興味を持ちました。それまでは「LINE」ブランドのプロダクトをあまり詳しく知りませんでしたが、アプリから派生してオリジナルグッズをつくっているなど、ブランディングの幅広さや自由度の高さに触れ、「おもしろそうだな」と感じ、2019年に新卒入社しました。
ユーザー体験とブランド価値を高めるため、LINEヤフーおよび各種プロダクトにおけるビジュアルデザインなどを担当しています。
プロジェクトは、基本的に各部署からの依頼を起点にアサインが決まり、スタートします。プロジェクトごとに人数や体制は異なりますが、規模感の大きいプロジェクトでは複数人でチームを組み、リードデザイナーが主導することが多いです。まずは要件の確認やヒアリングを行い、ビジュアルへと落とし込んでいきます。その後、デザインチーム内でアイデアや意見を揉んだうえで依頼部署へと提案し、ブラッシュアップしていくような流れになります。イベントなどでつくるものが多岐にわたる場合は、キービジュアル決定後にノベルティや資料など用途に合わせてデザインを展開していきます。
ひとつは、「LINE INTERNSHIP 2021」「LINE INTERNSHIP 2022」用のグッズ制作です。若手を中心にチームが組まれたプロジェクトで、本当にたくさんのことを学びました。それまではチームのいちメンバーというポジションが多かったのですが、このプロジェクトではリードデザイナーを務めることになり、依頼部署や制作会社とのコミュニケーションでもフロントに立って向き合ったことで、僕自身も大きくレベルアップできたのではないかと思います。苦手だった電話でのやりとりから初めての進行スケジュールの組み立てまで、やらなければならないことも多かったのですが、なんとかやりきることができました。
担当部署からの最初の依頼内容は「インターンシップ向けにグッズをつくりたい」というものでしたが、「インターンシップのコンセプトビジュアルからつくりましょう」と提案し、チームメンバーと議論を重ね、最終的にグッズをつくりあげるところまで担当した印象深いプロジェクトとなりました。デザインも非常に好評で、2021年の取り組みではありがたいことにグッドデザイン賞をいただきました。
もうひとつ、オリジナル日本語フォントプロジェクト「LINE Seed JP」のグッズ制作もとても印象的でした。デザインチーム発のプロジェクトなので、チームでクオリティラインやスケジュールを決める必要があり、またグッズの種類も非常に多かったため、どこまで追求するかを見極め、全体を取りまとめるのに非常に苦労しました。
このプロジェクトのポイントは、何よりフォントを魅力的に見せることです。それを意識して、特にアイテム選び、色選び、素材選びにこだわりました。たとえばカレンダーは紙にこだわっており、3種の紙質を組み合わせた構成にしています。余計な要素は極力排除し、シンプルな色の組み合わせを最大限に生かすことを大切にしました。
参照:日本語版コーポレートフォント『LINE Seed JP』をリリースしました。
もっとも意識しているのは、「より正しいと思えるものを出すこと」です。依頼部署の方も、さまざまな要望をあげていくなかで「そもそも何をしたかったのか」がわからなくなってしまうことがあるはずです。伝えたいことはいろいろあれど、そのなかでもっとも伝えたいことは何なのか。そのコアとなる部分を見極めて、それに合ったものを出せるように心がけています。
あとは、やはりデザインをしていると徐々に近視眼的にのめり込んでいってしまうものなので、なるべく俯瞰して、何も説明がなくてもメッセージが伝わるかを確認するようにしています。
実は、以前「LINE WALK」アプリのシンボルをつくった際、なかなかうまくできずに大きくやり直したことがあります。「LINE WALK」は、歩いてポイントを貯めていくアプリで、リードデザイナーとして初めて参加したプロジェクトでもありました。うまくいかなかった原因は、「歩く」と「ポイント」の2つの要素にフォーカスすべきなのに、「シンプルすぎておもしろくない」と感じてメッセージを乗せすぎてしまったことでした。
結果的に、ぱっと見て何をしたいのかがわかりにくいデザインになってしまい、大きくつくり直すことになりました。自分がつくったデザインを捨てるのはもちろんつらいですが、そうすることで正しいものをつくることができ、プロダクトがより良いものになるのであれば、ときには捨てることも必要だと思います。
最近では、2024年9月に行った社内のエンジニア向けイベント「Tech Week 2024」のブランディングのプロジェクトがとてもおもしろかったです。リードデザイナーを担当しましたが、どのようなビジュアルがふさわしいか、メンバーと議論を重ねるなかで正解にバチっとはまった瞬間は、本当にわくわくしましたね。それまでの案には「何か違う…」と感じていたので、その違和感を伝えて調整を重ねてもらい、ついに「これだ!」と思えるものが出てきたときは心から感動しました。
この「正解」を出せるかどうかは、プロジェクトの目的のコアとなる部分をどれくらいかみ砕いて落とし込めるかにかかっています。企画書や会議などで依頼者から受け取った情報から、もっとも大切なキーワードを2、3個絞り込んで見つけ出すようなイメージでしょうか。削ぎ落として、削ぎ落として、芯となる部分だけを見せられるよう試行錯誤しています。
また、自分自身が感じる違和感を信じることも大切です。「なんか気持ち悪い」「なんか余計な気がする」などの感覚を大切にすることで、良い方向に進むケースはたくさんあります。以前はその違和感が合っているか不安もありましたし、いまでも確信を持っているわけではありません。それでも、ここ1年ほどのプロジェクトでは正解を出せるようになってきた感覚もあり、少しずつ自信を持てるようになってきました。その自信は、依頼部署の方々はもちろん、ユーザーやイベント来場者など、たくさんの方々から反応をいただけるからこそ、育むことができたのだと思います。
デザイナーとして、ここまで深くブランディングに関われる会社は、なかなか無いのではないでしょうか。LINEヤフーのVXデザイナーは「つくって終わり」になることはなく、ユーザーにブランドが愛され浸透していくためには何が大切かを考えながら、幅広くブランディングに携わることができるのが大きな魅力だと思います。
また、デザイナーの全体的なレベルも非常に高いと感じています。グラフィックをつくるだけでなく、いかにメッセージをこめて全体を構成するか、ここまで突き詰めて考えている会社やチームは非常に珍しいのではないでしょうか。
業務では、韓国のLINE PlusのVXチームと一緒に作業することも多いのですが、非常に高いスキルとグローバルな視点を持っている方ばかりで、たくさん刺激を受けています。彼らのデザインは純粋に格好良いだけでなく、シンプルでわかりやすく整っている点が魅力です。僕たちだけではリーチできない海外のデザイン事例などをリファレンスとして提案してくれるので、良い形でインプット・アウトプットにつながっています。
合併し、LINEヤフーとなってから約1年が経ちましたが、やはり旧ヤフー出身の方と旧LINE出身の方とで考え方などが異なる部分を感じたことはあります。一緒にプロジェクトを進めるなかで、これまで通りには行かないことも多々ありました。そこは、これからも丁寧にコミュニケーションを重ね、お互いが持っている価値観や目標を擦り合わせながら前に進めていければと思っています。
いままさに取り組んでいるのは、ブランディングの観点で双方が持っているアセットを整理し、LINEヤフーとしてどのようなビジュアルをつくっていくのかのルールを定めることです。プロジェクトのなかでも「こういうときはどのように表現すべきだっけ?」と考えなければならない局面が多々あるので、少しずつ土台を固めている段階です。
だからこそ、今LINEヤフーにVXデザイナーとして入社すると、本当におもしろい経験を積めると思います。既存の制作物をアップデートするケースにとどまらず、LINEヤフーにはいまつくらなければいけないもの、新しくしなければいけないものが山のようにあります。このタイミングでなければ経験できないことだからこそ、大変なぶんそれ以上におもしろいはずです。
インハウスでブランディングに関わるなら、LINEヤフーはおすすめです。ブランディングについてここまで考え続けている企業はなかなか無いと思いますし、会社合併からまもないタイミングだからこその醍醐味もあります。まだまだつくるべきものがたくさんありますし、ゼロから何かをつくる経験ができるので、ぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。