ビッグデータで振り返る第51回衆院選

政治・選挙

こんにちは、LINEヤフービッグデータレポートチームです。

2026年2月8日、第51回衆議院議員総選挙が行われました。私たちチームはこれまでも選挙政局についてビッグデータにもとづいた考察を行ってきました。今回は衆院選の結果を振り返ってみましょう。なお、以下レポートの選挙結果や候補の所属政党は総務省発表の速報に準拠しています。

最初に選挙結果を確認しておきましょう。今回の選挙では、主に小選挙区での圧勝により、自民が大幅に議席数を増やす結果となりました。野党では中道改革連合(以下、中道)が議席数を大きく減らしました。

【図1】第51回 衆院選の結果

第51回衆議院選挙における改選前後の各党議席数を示す棒グラフです。自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政などの政党別に、小選挙区と比例代表の獲得議席数および改選前からの増減が可視化されています。与党と野党の全体的な議席バランスの変化も把握できる構成となっており、選挙結果の全体像をひと目で確認できます。

一体何が起こっていたのでしょうか? データで深掘りしていきます。

停滞する野党、与党との差が開いた

まず、政党別のインターネット上の注目度と得票率の関係を見てみましょう。インターネット上の注目度は、政党に関する公示期間中の検索数から算出しています。

小選挙区と比例代表のいずれも、注目度の割に得票につながりやすい、つまりコンバージョンの良い政党(青い編みかけ部分)と、注目度は高いものの得票にはつながりにくい政党(黄色の編みかけ部分)に分かれています。総じて自民など歴史ある政党はコンバージョンが良く、比較的新しい政党は注目度が高いがコンバージョンは低い傾向があります。中道は両者の中間くらいに位置していたようです。

また、今回の選挙では、例えば2025年参院選における参政のように突出して注目度が高い政党が見られなかったのも特徴的です(ビッグデータで振り返る第27回参院選 図5参照)。

【図2】インターネット上の注目度と得票率

各政党のインターネット上の注目度(指数)と実際の得票率の関係を示す散布図です。小選挙区と比例代表のそれぞれについてグラフ化されており、自民、中道、国民などの位置がプロットされています。比例代表では決定係数(R2)が0.99、小選挙区では0.96と非常に高く、ネット上の注目度と得票率の間に強い正の相関関係があることが示されています。

主要政党のインターネット上の注目度の変化を見てみましょう。図3は、公示前の注目度を基準とした公示中の各党の盛り上がりを表しています。維新、国民、共産、参政は最終日の追い上げが大きかったことがわかります。公示中の盛り上がり度を比較すると、与党の自民と維新が上位でした。中道は公示後にむしろ注目度が落ちるという珍しい結果となりました。

【図3】主要政党のインターネット上の注目度

主要政党(自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政)のインターネット上の注目度の日別推移を示す折れ線グラフです。公示前の平均を1とした指数で表され、公示前から公示期間中にかけての各党の注目度の変化が時系列で追えます。公示期間に入ると特定の政党の指数が大きく変動する様子など、選挙戦を通じた有権者の関心の動きが読み取れます。。

次に、選挙期間中の総熱量というべき「盛り上がり度」、すなわち公示前から公示後の注目度の変化を過去の国政選挙と比較してみましょう(図4)。中道は立憲と連続してグラフ化しています。また、参考として公明と中道をつなげたグラフも掲載しました。

自民のみ前回の盛り上がり度を維持しており、他の主要政党ではいずれも下降しています。特に中道は立憲時代と比べ大幅に下がっていました。また公明は固い支持基盤の影響か、盛り上がり度は低めの傾向にありましたが、今回の中道はその水準よりさらに下回っていました。

自民が特に盛り上がり度を伸ばしたわけではないものの、他政党が軒並みダウンした結果、相対的に自民の立ち位置が強まった状況が見てとれます。

【図4】主要政党の盛り上がり度の推移

主要政党の選挙期間中の「盛り上がり度(公示中の注目度÷公示前の注目度)」について、2012年衆院選から2026年衆院選までの長期的な推移を示す折れ線グラフです。自民、維新、国民、共産、参政、れいわ、中道の各党について、過去の国政選挙ごとにネット上の関心がどのように喚起されたかの変遷を比較・確認できます。

得票コンバージョンの変化はどうでしょうか。図5は、各党のコンバージョンを自民を10とした場合の相対的な指数で表したグラフです。急激な変化は見られないものの、小選挙区では主要な野党のコンバージョンが下降傾向であり、もともとコンバージョンの低い参政のみ微増、今回与党となった維新は横ばいでした。ここでも、与党が伸長したというよりも野党の下降により与野党の差が開いたと言えそうです。

【図5】政党の得票コンバージョン

2012年衆院選から2026年衆院選までの、各政党の「得票コンバージョン」の推移を示すデータ表です。自民党のコンバージョンを10とした指数で算出されており、比例代表と小選挙区のそれぞれにおいて、公明、中道、維新、国民、共産、れいわ、参政の各党が、ネット上の注目度に対してどの程度効率的に得票に結びつけられたかを時系列で比較できます。

(自民のコンバージョンを10とした指数)

野党のコンバージョン低下は全国的なものだったのでしょうか。図6は、比較的広範囲な候補擁立のあった4野党について、小選挙区の都道府県別コンバージョンを前回選挙と比較したものです。データがない地域は、前回または今回の擁立がなかった地域です。

参政は全国的に微増傾向で、地域的な特徴は認められませんでした。共産と国民は関東、中部、関西など大都市圏を含む地域でコンバージョン低下が見られます。中道は東日本を中心に伸びている地域もあるものの、岩手など東北の一部と西日本で低下が見られました。

【図6】主要野党の都道府県別の小選挙区得票コンバージョン変化

主要野党(国民、参政、中道、共産)における、都道府県別の小選挙区得票コンバージョンの変化量を示す一覧表です。自民党を10とした指数の前回選挙からの増減が、北海道から沖縄までの全47都道府県ごとに数値化されています。地域ごとの各野党の集票効率の改善または悪化の傾向を、全国的な視点から詳細に把握できる資料です。

(自民のコンバージョンを10とした指数の前回選挙比較)

では仮に盛り上がり度とコンバージョンが前回選挙と同水準であったとしたら、どのような結果だったのでしょうか(図7)。前回選挙の指数を元にシミュレーションしてみると、中道が議席数を増やし与党が議席を減らすという、実際の選挙結果とは逆の試算となりました。

【図7】前回選挙の指数による試算値と実績の乖離

前回選挙の指数に基づく試算値と、第51回衆院選の実際の獲得議席数との乖離(実績マイナス試算)を示す表です。自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政、その他の各党について、改選前議席、小選挙区および比例代表の試算値と実績値が比較されており、予測に対してどの政党が上振れ・下振れしたかを具体的な議席数の差で確認できます。

この試算と実績の乖離は、野党の盛り上がり度とコンバージョンの低下、とりわけ中道が盛り上がりを著しく欠いたことと整合的です。その結果として、与党の相対的な立ち位置が強まったと考えられます。

加えて、野党側で新たな連盟が結成された直後というタイミングも、立ち位置や選挙体制の浸透という観点で一定の影響を及ぼした可能性があります。組織再編とブランド再定義の移行期に選挙が重なったことは、今回観測された「盛り上がり度の伸び悩み」を説明しうる一要因かもしれません。

地域別に見る与野党の激戦

野党の著名候補でさえ小選挙区で敗れる結果が散見された衆院選。エリア別に見るとどうだったのでしょうか。小選挙区の得票結果を都道府県別にまとめ、与党の得票率降順に並べてみました(図8)。

与党の得票率が70%を超えた3県は関西圏に集中していました。高市首相のお膝元である奈良がトップ、続く滋賀と大阪では、維新の存在感が際立っています。

黄色の編みかけは与党以外の当選人を含む都道府県です。当然ながら与党の得票率が低めのエリアに偏っており、与党の得票率が60%を超える都道府県では与党全勝でした。

黒い丸印は、岩手の小沢一郎氏、埼玉の枝野幸男氏など、旧立憲の著名な候補が落選した主なエリアを表しています。こちらも奈良以外は与党の得票率が低めのエリアに偏っており、激戦ぶりが伺えます。結果的に与党圧勝だったものの必ずしも全国一律の傾向ではなく、地域差があったようです。なお奈良1区では中道の共同選挙対策委員長だった馬淵澄夫氏が自民の小林茂樹氏に敗れました。首相のお膝元かつ対抗馬が現職の副大臣という、野党候補にとっては非常に厳しい状況だったことが推測されます。

【図8】第51回 衆院選 小選挙区 都道府県別 得票率(与党降順)

第51回衆院選の小選挙区における都道府県別の得票率を示す100%積み上げ棒グラフです。与党の得票率が高い順(降順)に並べられ、与党、中道、参政、維新、国民などの割合が色分けされています。与党得票率70%以上、50%未満などの分布や与党平均(56%)のほか、与党以外が当選した地域や著名候補の落選状況も注記されています。

政党関心層の移ろい

与党への追い風の中、各政党の関心層はどのように変化したのでしょうか。2025年7月参院選時の主要政党の関心層が、本年はどの政党に関心を寄せていたのか調査してみました(図9)。

自民と国民は前年の関心層が本年も同政党に関心を寄せており、固い関心層が一定数いることが伺えます。旧公明と旧立憲の関心層は中道に関心を示していました。また自民の関心層も第一野党の中道に少なからず関心があったようです。

維新、共産、れいわ、参政では継続的な関心層があまり多いとは言えず、浮動的な関心層が多い可能性が考えられます。

【図9】政党関心層の変化

前年の関心政党と本年の関心政党の移行状況を示すマトリックス表です。自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政の各党支持層がどのように変化したか、あるいは定着しているかが数値化されています。一定数以上(20以上、40以上)のボリュームゾーンがハイライト表示されており、有権者の関心の流出入の傾向を分析できます。

有権者の関心は「金融経済」「憲法・政治制度」

最後に、有権者がどのような政治的論点に関心を持っていたのかを見てみましょう。主な政治的論点のカテゴリーごとに関連キーワードを分類し、検索数の推移を調査しました。

カテゴリー 関連キーワード
金融経済 物価高、賃上げ、デフレ、円安、税制、金融緩和、中小企業支援 など
年金・社会保障 年金改革、介護保険、ベーシックインカム、介護離職、社会保険料、社会保障費 など
子育て・教育 児童手当、待機児童、子育て支援、奨学金、不妊治療、大学改革、不登校 など
外交安全保障 防衛費、日米同盟、国家安全保障、基地問題、サイバー攻撃、台湾有事、ウクライナ支援 など
憲法・政治制度 憲法改正、内閣改造、国民投票、議員定数、政治資金、夫婦別姓、女性天皇 など
人権 ハラスメント、ダイバーシティ、外国人問題、ヘイトスピーチ、LGBTQ、SNS規制 など
エネルギー 原発、廃炉、再エネ、グリーンエネルギー、バイオマス発電、カーボンニュートラル など
働き方 36協定、リモートワーク、メンタルヘルス、非正規雇用、ジョブ型雇用、外国人労働者 など

2025年以降のカテゴリー推移を見ると、2026年以降の直近では特に「金融経済」「年金・社会保障」への関心が高く、生活に直結するお金の課題に関心が高まっているようです。続いて「憲法・政治制度」「子育て・教育」が上位でした。

【図10】主要な政治的論点への関心

金融経済、年金・社会保障、憲法・政治制度など、主要な8つの政治的論点に対する有権者の関心度の推移を示す折れ線グラフです。2025年1月から2026年1月頃までの期間について、最小値を100とした指数で時系列表示されています。各論点への関心が時期によってどのように高まり、あるいは低下していったかのトレンドを視覚的に把握できます。

(期間中の最小値を100とした指数)

各カテゴリーの上位検索ワードを、前年と比較してみましょう(図11)。編みかけは前年と比べて順位が上がったキーワードです。「金融経済」では消費税、円安、為替介入と、国民生活の不安感が浮かび上がる一方、対策への期待も感じられるワードです。また「憲法・政治制度」では憲法改正に関心が強まっているようです。

【図11】主要な政治的論点のキーワードTop5

8つの主要な政治的論点に関連する検索キーワードの上位5つを、2025年と2026年(1〜2月平均)で比較した表です。金融経済(NISA、消費税など)や外交安全保障など各分野で、順位が上昇したキーワードには印がつけられており、有権者が具体的にどのような事象や政策に対して関心を強めているかの年次変化が分かります。

(1~2月平均の比較)

では政党関心層による政治的論点への関心に違いはあるのでしょうか。図12は、主要政党の関心層がどのカテゴリーをよく検索していたのかを示すグラフです。いずれの政党関心層も「金融経済」への関心が最も高く際立った違いはないものの、いくつかの傾向が見えてきます。自民の関心層は「金融経済」「憲法・政治制度」「外交安全保障」に強めの関心を示しています。維新と国民は「年金・社会保障」、共産は「子育て・教育」「働き方」にやや傾向が見られるようです。なお、政党関心層では総じて「憲法・政治制度」への関心が高めなのも特徴です。争点のひとつである憲法改正に関心が高かったことが推測されます。

私たちの社会は現在だけでなく将来に向けた多くの課題を抱えています。選挙後の今、これからの政治の動きにますます注目していきたいところです。

【図12】政党関心層の政治的論点への関心

政党関心層別(自民、維新、中道、国民、共産、れいわ、参政)に、8つの主要な政治的論点に対する関心の割合をまとめた表です。各党の支持層が金融経済や年金、外交などにどれだけの割合で関心を持っているかが数値で示され、カテゴリー内で最大値となる箇所には印がつけられています。各党支持層の関心領域の違いを比較できます。

まとめ

  • 今回の結果は、与党が急伸したというよりも、対抗軸となる盛り上がりが形成されなかった状況が背景にあった可能性
  • 支持構造には地域差が見られ、熱量の変化が議席結果に与える影響は一様ではない
  • 自民と国民には比較的安定した関心層が存在する一方、他政党では関心層の変動が大きい傾向が見られる
  • 有権者の関心はイデオロギー対立よりも生活課題へと集中しており、政治的関心の軸が生活安定へと向かっている様子がうかがえる

今回は衆院選の振り返りを通じて、データから見える有権者の関心の変化や政党の動向を確認してきました。LINEヤフーでは、データの力強さと面白さをお伝えするべく、今後もさまざまな社会課題や政治動向に関して考察していきます。今後ともよろしくお願いいたします。

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