「大阪都構想」の本音をビッグデータで読む

ビッグデータ
「大阪都構想」の本音をビッグデータで読むというタイトルが中央に大きく表示されている画像。左下に『Yahoo! JAPAN ビッグデータレポート』と書かれており、右下には手が線を引いているイラストが描かれている。

こんにちは、「Yahoo! JAPANビッグデータレポート」チームです。

2015年5月17日、注目の住民投票が実施される「大阪都構想」。大阪府と大阪市の二重行政を解消するため、大阪市を廃止して特別区を設け、さらに大阪都への変更を目的とした、大阪維新の会が提唱する「大阪都構想」の是非が問われます。

大阪都構想の盛り上がりを調査する

大阪都構想は実際にどれぐらいの盛り上がりを見せているのでしょうか? まずは大阪都構想の検索数推移グラフから世の中の関心の変化を見てみました。(図1)

(図1)「大阪都構想」の注目度推移

2010年から2015年5月11日までの間の検索数の推移を示したグラフです。2011年11月27日の大阪市と府のダブル選挙での検索数のピークが強調され、大阪維新の会が当選したことが示されています。2015年のデータを拡大した下部のグラフでは、大阪都構想に関する検索数の急増が示され、TPPが参考として比較されています。全体として、大阪都構想に対する関心の高まりがわかります。

資料:
「Yahoo!検索」データ

検索数推移グラフから、2011年11月27日に大きな注目を浴びる出来事があったことがわかります。これは大阪市と大阪府のダブル選挙の際に大阪維新の会がダブル当選し、大阪都構想が注目されたことによるものです。その後、何度か検索数が急上昇を繰り返し、2015年に入ってからは検索数のベースが一段上がり、日増しに注目度が高まっている様子がうかがえます。

都道府県別で大阪都構想への注目度を見てみると次のようになります。(図2)

(図2)「大阪都構想」の都道府県別注目度

日本の都道府県ごとの地域内検索率を示した地図と棒グラフです。地図では、地域内検索率が高いほど赤く表示され、大阪府が最も高いことが示されています。棒グラフは47都道府県の地域内検索率を平均値100として指数化しており、大阪府が他の都道府県に比べて非常に高い指数を持つことを示しています。この情報は、地域ごとの情報検索の集中度を視覚的に示しています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

やはり大阪府での注目度が圧倒的に高いことがわかります。また、奈良県、兵庫県、和歌山県といった周りの県も高い値を示しており、近畿地方全体で大阪都構想へ関心を持っています。

さらに、大阪府のみに絞り込んで詳細に見たところ、興味深い発見がありました。

(図3)大阪府市区郡別「大阪都構想」の注目度

大阪府および大阪市内の各市区町村での「大阪都構想」に関する注目度を示しています。地図は色分けされており、赤が非常に高い注目度(250以上)、オレンジが高い注目度(100〜250未満)、淡い色が低い注目度(100未満)を示しています。表には各区の注目度に応じた市区郡の数が示され、大阪市内の一部地域が非常に高い注目度を持っていることがわかります。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

大阪府の地域区分の画像

大阪都構想の投票対象は大阪市民のみですが、盛り上がりは大阪市だけではなく、大阪府全体にも広がっています。特に大阪市から離れた岸和田市での注目度が高い点は興味深い結果です。

「大阪維新の会」への大阪府における相対的注目度も同様に分析してみました。相対的注目度とは、主要政党(大阪維新の会含む)の注目度の総計における大阪維新の会の注目度割合を表したものです。計算式は図4を参照ください。

(図4)大阪府市区郡別「大阪維新の会」の相対的注目度

大阪府と大阪市内の各市区町村での「大阪維新の会」に対する相対的注目度を示しています。地図は緑色で色分けされており、濃い緑が非常に高い注目度(50以上)、中程度の緑が高い注目度(40〜50未満)、淡い緑が低い注目度(30〜40未満)、最も淡い緑が非常に低い注目度(30未満)を示しています。表には区ごとの注目度に応じた市区郡の数が示されており、一部地域で非常に高い注目度が示されています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

すると、大阪市やその周辺では注目度が高く、大阪市から離れると低くなるエリアが増える傾向にあることが見えてきました。ネット上の注目度は、過去のビッグデータレポートから党の支持率と相関していることがわかっているため、注目度の高いエリアは大阪維新の会の支持率も高い傾向にあると推測することができます。

この「大阪都構想」への注目度と「大阪維新の会」への注目度において、両者の間にどのような関係があるのかを調べるため、両方のデータを掛け合わせて分析を行いました。

(図5)大阪府市区郡別「大阪都構想」の注目度と「大阪維新の会」の相対的注目度

大阪府と大阪市内の各市区町村における「大阪都構想」への支持と「維新の会」に対する相対的注目度を示しています。 各地域は、支持と反対の度合いに基づいて色分けされています。黒は非常に高い支持、青はかなり高い支持、赤は高い反対、白は中立を示しています。表では、各カテゴリに属する市区郡の数が示されています。これにより、地域ごとの政治的関心と立場の分布が視覚化されています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

大阪都構想への注目度が高く大阪維新の会への注目度も高いエリアを青色系、大阪都構想への注目度は高いが大阪維新への注目度は低いエリアを赤色系、大阪都構想への注目度が低い場合は大阪維新の会の注目度に関わらず白色に塗りわけました。その結果、大阪市の北側は赤色系や白色といったエリアが占める一方、南側は青色系エリアが固まるという明らかな違いが現れました。また大阪市を取り囲むエリアでは北側に赤色系のエリアが多く見られる一方、南側では岸和田が濃い赤色であるものの全般的には青色系や白色のエリアが多く、同じ大阪府内であっても地域によって関心が異なる様子が見えてきました。

また、別の観点から分析を行うため、総務省より公開されている市町村別の平均所得金額と大阪都構想への注目度の相関を調査しました。

(図6)大阪府市郡別の平均所得と「大阪都構想」の注目度

「大阪都構想」の注目度指数と一人当たり年間所得(千円/人)との関係を示す散布図です。縦軸は注目度指数、横軸は所得を表しています。データポイントがプロットされ、中央の破線は平均を視覚的に示しています。相関係数(R)は-0.26であり、弱い負の相関があることが示されています。これは、所得が増えるにつれて注目度がやや減少する傾向を示唆しています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日、総務省『市町村税課税状況等の調』より、
税義務者数一人当たり課税対象所得

こちらはゆるい負の相関が現れる結果となりましたが、図にみる通り、かなりばらつきの大きい結果となりました。

性・年代別による注目度の差

次に、「大阪都構想」の性・年代別の注目度を分析しました。その結果、性別や年代によって明らかな差があることが見えてきました。

(図7)大阪府・性年代別「大阪都構想」の注目度

「大阪都構想」に関する注目度を年代と性別で示した棒グラフです。男性は上部に、女性は下部に表示されています。各年代は色で注目度を示し、赤が非常に高い(250以上)、オレンジが高い(100〜250未満)、ベージュが低い(100未満)を表します。特に男性の50代から70代以上で注目度が高いことがわかります。全体平均が破線で示され、興味の違いを視覚的に比較しています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

男性は20代の注目度が低い一方、50~70代以上は高い傾向にあります。一方、女性は年代が高くなるにつれ注目度が高まる傾向がありますが、10~30代での注目度は特に低い傾向にあるようです。

続いて、「大阪維新の会」の性・年代別の注目度を調べました。

(図8)大阪府・性年代別「大阪維新の会」の相対的注目度

「維新の会」の相対的注目度を年代と性別で示した棒グラフです。男性は上部、女性は下部に表示されています。各年代は色で注目度を示し、濃い緑が非常に高い(50以上)、緑が高い(40〜50未満)、薄い緑が低い(30〜40未満)、非常に低い(30未満)を表します。全体平均が破線で示され、年代別の興味の度合いを視覚的に把握できます。男性60代と女性70代以上が特に高い注目度を示しています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日

その結果、男性は10代、20代の大阪維新の会に対する注目度は低い一方、40代以上の注目度は総じて高く、なかでも50代、60代が特に高い傾向にあるようです。 女性は10~30代の注目度が低く、50代以上は高い傾向となっており、特に70代以上に注目されていることがわかります。ネット上の注目度は過去のレポートから党の支持率と直結していることが判明しており、このことから大阪維新の会の支持層に女性シニア層が大きく寄与していることがうかがえます。

この性・年代別の結果をさらに深掘りしてみます。 グラフの縦軸を「大阪都構想の注目度」、横軸を「大阪維新の会の相対的注目度」とし、さらに各層の大阪府における人口を円の面積として表した散布図を作成しました。

(図9)大阪府・性年代別「大阪都構想」の注目度×「大阪維新の会」の相対的注目度

「大阪都構想」と「維新の会」に対する相対的注目度を年代と性別で示した散布図です。縦軸が大阪都構想、横軸が維新の会の注目度を示しています。円の大きさは人口に比例し、破線の円は未成年を表します。黒い円は男性、赤い円は女性を示しています。特に70代の男女は両方の注目度が高く、女性の40代と60代も高い注目度を示しています。これにより、各世代の注目の違いが視覚化されています。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日
総務省統計局人口推計、平成25年10月1日現在の都道府県別の性年代人口から大阪府データを抽出

このグラフより、大阪都構想への注目は女性よりも男性のほうが高い傾向にあること、また年齢が高くなるにつれ、両方の注目度が高くなる傾向にあることがわかりました。加えて、過去の国政選挙では60代までは年齢が高くなるにつれ投票率が上昇することがデータからわかっているため、このままでいくと大阪都構想の住民投票の鍵を握るのは上記グラフの右上にいる層だと言えそうです。また同時に、この投票結果の影響を長期にわたって受ける若者(次世代層)の低関心がくっきりとうかびあがるデータとなりました。

最後に、(図5)で検証した「大阪府市区郡別『大阪都構想』の注目度と『大阪維新の会』の注目度」を、今回の住民投票の対象区域である大阪市に限定し、さらに人口を考慮した割合として表してみたものが(図10)です。

(図10)大阪市内の「大阪都構想」の注目度と「大阪維新の会」の相対的注目度による地区人数構成

(%、( )内は地区数、20歳以上対象)

この円グラフは、「大阪都構想」と「維新の会」に対する注目度を組み合わせたカテゴリ別に分けています。色分けされたセグメントは、都構想と維新双方への注目度が高い(青)、都構想のみ高い(ピンク)、維新のみ低い(赤)、両方低い(灰色)などを示しています。各セグメントには、そのカテゴリに属する人数と大阪市区数(括弧内)が表示されています。左右の矢印はそれぞれ「賛同的」「反対的」な立場を示します。

資料:
「Yahoo!検索」データ、2015年1月1日~4月28日、大阪市HPの年齢別推計人口

青色系の「大阪都構想の注目度が高く、大阪維新の会の注目度も高い」地区層、赤色系の「大阪都構想の注目度は高いが、大阪維新の会の注目度は低い」地区層、白色の「大阪都構想の注目度が低い」地区層に分類をしてみたところ、 青色系と赤色系の地区層でエリア数ははほぼ同じでしたが、それぞれのエリアの人口を考慮した割合でも大きく差がつくことはなく拮抗する結果となりました。

まとめ

以上により、今回の分析から次のことがわかりました。

  • 「大阪都構想」への関心は2015年1月以降盛り上がってきており、かなり高い水準にある
  • 大阪市だけでなく大阪府全体が高い関心を持っているものの、地域によりばらつきがある
  • 大阪市内でも賛同的な地域と反対的な地域があり、両者の地区人数構成はかなり拮抗している
  • 若者の関心が低い現状の延長の場合、「大阪維新の会」の支持率が高いシニア女性の動向が住民投票結果の鍵をにぎる可能性が高い

以上が、5月17日大阪都構想の住民投票に関する分析結果となります。
今後もデータの持つ力と面白さをさらにお伝えすべく、ビッグデータレポートチームではさまざまなレポートを発信していきますので、よろしくお願いいたします。

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