類似画像検索の研究開発に30年近く従事し、技術の実用化やオープンソース化をリード
LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)は本日、当社が運営する「LINEヤフー研究所」の上席研究員である岩崎 雅二郎が、厚生労働省主催の「令和6年度 卓越した技能者(現代の名工)」表彰を受賞したことを発表しました。LINEヤフーとしては初となる本表彰受賞で、岩崎は「情報処理技術・通信技術の職業」部門として選出されました。
左:「LINEヤフー研究所」上席研究員 岩崎 雅二郎
右:「NGT」の構造図(※)
※:旧ヤフー株式会社において岩崎が中心となり公開した、大規模高次元ベクトルデータに対して世界トップレベルの高速・高精度な近似近傍検索を提供するオープンソースソフトウェア「NGT」の構造図(ツリー型とグラフ型の2種類のインデックスにより、高速・高精度な画像検索を実現)
「卓越した技能者の表彰制度」(※)は、卓越した技能を持ち、その道で第一人者とされる技能者を表彰するもので、優れた技能を次世代に承継していくことを目的としています。
※厚生労働省「卓越した技能者の表彰」制度のコーナー(外部サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/meikou/index.html
岩崎は、ECサイトで普及している類似商品画像検索(指定した商品に類似する商品を検索する機能)の研究開発に30年近く従事しており、その技術は「Yahoo!ショッピング」をはじめとした自社サービスに活用されています。類似画像検索における2つの主要技術である、画像からその特徴を表すベクトルデータ(画像特徴量)を抽出する技術と、そのベクトルデータを検索する技術の研究開発成果に加え、その技術を論文や特許、オープンソースソフトウェアとして公開するなど実用化・公用化に努め、ベクトル検索の性能向上に尽力しています。
LINEヤフー研究所は、LINEヤフーのサービス、大学、研究機関と連携して研究開発を行っており、AI、データサイエンス、インタラクション、セキュリティ・プライバシーなどの領域をテーマに、国際学会で多数の論文が採択されるなど、着実な成果を収めております。LINEヤフーはミッションである『「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。』のもと、これらの研究成果を活用し、サービスの品質向上および利便性向上を図ります。
岩崎 雅二郎(LINEヤフー株式会社「LINEヤフー研究所」 上席研究員)
<略歴>
1987年、早稲田大学理工学部工業経営学科卒業。1989年、同大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。2007年、旧ヤフー株式会社入社後は、画像認識・高次元データ検索の研究開発に従事。博士(工学)
<成果概要>
① ベクトルデータ(画像特徴量)の研究開発技能
現在主流のAIによる画像特徴量に先んじて、画像処理によって色、形状(構図)、模様といった特徴を表す画像特徴量を開発し、ベクトル検索技術と組み合わせることによって類似画像検索を実用化しました。さらに、画像から局所的な画像特徴量を抽出し、これとベクトル検索を組み合わせることにより画像中の物体を認識する技術を実用化しました。
② ベクトル検索の研究開発技能
グラフ構造や量子化技術を用いたインデックスの活用によって、数百万から数億件のベクトルに対して1ms(1秒の1000分の1秒)以下の時間でベクトル近傍検索を実現する技術を研究開発し、旧ヤフー株式会社のオープンソースソフトウェア「NGT」(Neighborhood Graph and Tree for Indexing)として公開しました。
③ ソフトウェアの実用化技能および公用化
研究成果のソフトウェアを実用的な品質にまで高め、かつ、保守も行う技能も有しています。そのため、研究開発したソフトウェアはさまざまな製品やサービスに実装されています。特に、オープンソース化したNGTは世界トップレベルの高速・高精度な検索技術であることがANN Benmchmarksで示されており、世界でも広く活用されています。また、情報技術に関するベクトル検索の新しい方式の開発等において顕著な業績をあげ、産業分野への貢献が明確であるとして、岩崎を中心とした旧ヤフー株式会社の5名は、情報処理学会の2019年度業績賞に選ばれました。
「NGT」(Neighborhood Graph and Tree for Indexing)
https://developer.yahoo.co.jp/oss/ngt/
<研究成果を実用化したサービス(一部)>
・Yahoo!ショッピング
・Yahoo! JAPAN(アプリ) ※カメラ検索
・Yahoo!ブラウザー(アプリ) ※カメラ検索
LINEヤフー株式会社の発足にともない、LINE株式会社でAI、機械学習などの基礎研究を担っていた組織と、ヤフー株式会社で先進的なビッグデータ・AI技術の研究開発を担っていた「Yahoo! JAPAN研究所」が合併し、「LINEヤフー研究所」として2023年10月に設立されました。2023年、192本(うち、海外101本、国内91本)の論文を発表しました。
※2023年1月から9月まではLINE株式会社とヤフー株式会社の合算、2023年10月から12月まではLINEヤフー株式会社の発表論文数
・主な研究領域:AI、データサイエンス、インタラクション、セキュリティ・プライバシー
・LINEヤフーの研究開発:https://research.lycorp.co.jp/jp
・直積量子化とグラフを融合し、ベクトル近傍検索のボトルネックを改善する(NGTのインデックスQGの紹介)
https://techblog.yahoo.co.jp/entry/2023031330416837/
・NGT -グラフ型インデックスによる近似近傍検索の基本-
https://web.archive.org/web/20220716231522/https://techblog.yahoo.co.jp/lab/searchlab/ngt-docs-01/